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スピリチュアルズ 「わたし」の謎
著者:橘玲
出版社:幻冬舎
本書の要約
①外向的/内向的②楽観的/悲観的③同調性④共感力⑤堅実性⑥経験への開放性⑦知能⑧外見の8つの要素の組み合わせによって、私たちのキャラクターは決められています。自分の特性をしっかりと把握し、自分に合った環境を見つけ、そこで頑張ることで、成功のチャンスは最大化できると著者は言います。
ビッグエイト理論とは?
わたしたちはみな、微妙に異なるパラメーター(因子)のレベルをもって生まれてくる。その「傾向のちがい」を利用しながら、社会のなかで自分に適した「役柄」を探すのが成長で、それによって一人ひとりちがうパーソナリティになっていくのだ。(橘玲)
橘玲氏の書籍を定期的に読んでいますが、新作のスピリチュアルズ 「わたし」の謎も面白く、一気に読了しました。今回のテーマは私たちのキャラクター(性格)で、これを知ることでより成功できる確率が高まることを明らかにしています。脳科学や心理学などの最新の知見を活用し、橘氏は新たな「スピリチュアル理論」を生み出しました。
本書の思考のベースになっているのが、心理学の「ビッグファイブ」理論です。これは心理学者のルイスゴールドバーグ氏が提唱したもので、「人間が持つさまざまな性格は、以下の5つの要素の組み合わせで構成される」とする考え方です。
①外向的/内向的
②神経症傾向(楽観的/悲観的)
③協調性(同調性+共感力)〉
④堅実性(自制力)
⑤経験への開放性(新奇性)
橘氏は「協調性」を「同調性」と「共感力」に分けると同時に、「外見」と「知能」を加えて、8つの因子でパーソナリティを説明しています。「外見」と同様に、ビッグファイブ理論には入っていないものの、きわめて重要なパーソナリティが「知能」になります。
わたしたちが生きている「知識社会」は、定義上、高い知能に特権的な優位性が与えられている社会です。知能が高い者が社会的・経済的に成功する(可能性が高くなる)にもかかわらず、ビッグファイブだけで「どのようなパーソナリティが成功できるか」を論じても意味がないと言うのが、その理由です。
私たちは他者と出会ったとき(無意識に)以下の8つの要素(ビッグエイト)に注目します。そもそも人間はこれ以外のことを気にするようにはできていないのです。
①明るいか、暗いか(外向的/内向的)
②精神的に安定しているか、神経質か(楽観的/悲観的)
③みんなといっしょにやっていけるか、自分勝手か(同調性)
④相手に共感できるか、冷淡か(共感力)
⑤信頼できるか、あてにならないか(堅実性)
⑥面白いか、つまらないか(経験への開放性)
⑦賢いか、そうでないか(知能)
⑧魅力的か、そうでないか(外見)
わたしたちは、ものごころついてから、「自分のキャラを発信し、相手のキャラを読み取る」という社会ゲームをえんえんとやっている。リアルの世界でも、ファッションや音楽の趣味、読んだ本や好きな映画、仕事の態度や政治的な発言などからなんとなく「好き/嫌い」を決めている。だとすれば、これがそのままSNSに移植されるのは当然のことだ。
ケンブリッジ・アナリティカは、ビッグファイブを活用し、SNSで収集したデータをAIに機械学習させ、SNSのデータだけでほぼ完壁にパーソナリティを判定できるアルゴリズムを開発しました。ここから、職業や大学の専攻ばかりか、子どもの頃にカトリック系の学校に通っていたことまでコンピュータで読み取れてしまうのです。 この魔術的テクノロジーがEU離脱の国民投票やアメリカの大統領選の結果に大きな影響を与え、世界を揺り動かしていたのです。ビッグファイブ理論やSNSを使うことで、世の中を動かせてしまう時代を私たちは生きているのです。
自分のパーソナリティを理解し、アドバンテージのある場所を探そう!
徹底的に社会的な動物であるヒトは、自分を集団と一体化すると同時に、集団のなかで自分を目立たせるというきわめて複雑なゲームをしている。それぞれの集団には固有の”しるし”があり、それを身につけていないと排除されてしまう。これが”アイデンティティ(帰属意識)”で、人類が進化の大半を過ごした旧石器時代には、集団に属していない個体は生き延びることができなかった。
私たちは初対面の時に、リスクを下げるために、「仲間」か「よそ者」かに他者を分類します。子供は、成長する際に、特定の集団に属することで固有のパーソナリティを身につけていきます。その際、たんに自分を集団と一体化させるだけでは、子孫(遺伝子)を最大化するという進化の適応(「利己的な遺伝子」の目標)を達成できません。異性を獲得するためには、その集団のなかで目立つ「個性」をつくらなければならないのです。
生存(生き延びるために特定の集団に一体化すること)と生殖(異性を獲得するために集団のなかで目立つこと)のためには、社会的アイデンティティと個人的アイデンティティを巧みに操らなければならない。この「同じだけどちがう」キャラ(役割)を、わたしたちはパーソナリティとして知覚するのだ。
私たちは社会のなかでおそろしく複雑なゲームをしています。他人のパーソナリティを素早く見分け、自分のキャラを効果的に見せる高度なテクニックを身につけるようになったのです。
著者は成功する3つのパーソナリティの組み合わせを「高い知能」+「高い堅実性」+「低い神経症傾向(精神的安定性)」 だと指摘します。これに「高い外向性」と「魅力的な外見」が加わると、政治家や企業のリーダーになれる可能性が高まります。
現代社会で成功するには、「情動的知能」「社会的知能」「創造的知能」が必要だとされます。「情動的知能」は感情を適切に抑えることができる「自己コントロールカ」のことで、「高い知能+高い堅実性」の組み合わせです。これがよい学業成績(高い学歴)や経済的成功に結びつくことが、多くの研究から明らかになっています。
「社会的知能」は「社会のなかでさまざまなひとと上手にやっていける能力」で、これは「高い知能+高い共感力」の組み合わせです。社会的知能が高いほど、友人、恋人、家族と良好な関係を保ち、組織のなかでも上司や部下、同僚とうまくやっていくことができ、幸福度も高いことがわかっています。
「創造的知能」はイノベイティブなことで、「高い知能+局い経験への開放性」の組み合わせです。これはいまや、高度化する知識社会に必須のパーソナリティとされるようになっています。スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクなどお「現代の英雄」の多くはこのタイプです。
人類がこれまで体験したことのないほど安定した現代社会では、「今日は昨日と同じで、明日は今日と同じ」という前提で生きていった方がずっと有利になります。そう考えれば、一部のスーパースターを除けば、「高い知能+低い経験への開放性」の保守的なパーソナリティの方がうまくいく可能性が高まります。起業を目指すのではなく、そこそこを目指す多くの日本人は、ある意味賢い選択をしているのかもしれません。
成功したければ、「自分のパーソナリティを前提にして、それがアドバンテージをもつ場所(ニッチ)を探す」ことが重要だ著者は言います。パーソナリティには向き不向きがあり、不得意なことをどれほど頑張っても、(それに向いている)ライバルに勝てるはずはありません。
グローバル化する現代社会では、インターネットのヴァーチャル空間が拡大し、さまざまなニッチが次々に生まれています。意志力をふりしぼってパーソナリティを矯正し、自分を変えようと努力するよりも多様なニッチのなかから自分のパーソナリティに合った場所を見つける方がはるかによい著者は言います。
もっとも大事なことは、自分のパーソナリティに合った人生を設計することだ。現実の自分とまったく異なるパーソナリティで成功を求めていても、あなたのスピリチュアルはまったくの別人なのだから、いずれ破綻は免れないだろう。それよりもいまの自分のパーソナリティを理解し受け入れたうえで、現実的なステップの向こうに成功を見据えた方がずっとうまくいくはずだ。
「成功した人生」とは、あなたのスピリチュアルに合ったポジティブな物語をつくることなのです。そのために、まずは自分のパーソナリティを知らなければなりません。本書の巻末のビッグファイブの検査などを活用し、自分のパーソナリティを明らかにしましょう。あとは正しい場所を選択し、頑張ることで、成功する確率を高められます。
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