セレンディピティ 点をつなぐ力(クリスチャン・ブッシュ)の書評

close-up photography of person holding green leaf plant
セレンディピティ 点をつなぐ力
クリスチャン・ブッシュ
東洋経済新報社

本書の要約

運の良い人はセレンディピティの力を活用しています。セレンディピティで重要なのは、予想外の出会いや情報の価値を認識し、活用する能力です。セレンディピティ・マインドセットを身につけ、セレンディピティを起こすプロセスを理解し、活用することで未来を明るくできます。

セレンディピティの力を活用しよう!

セレンディピティを定義すると「予想外の事態での積極的な判断がもたらした、思いがけない幸運な結果」となる。セレンディピティは世界を動かす隠れた力であり、日々のささやかな出来事から人生を変えるような事件、さらには世界を変えるような画期的発明の背後に常に潜んでいる。(クリスチャン・ブッシュ)

世界経済フォーラムのエクスパートフォーラムのメンバー、リーダーズ・オン・パーパスの共同創設者であるクリスチャン・ブッシュは、セレンディピティの力を活用することで、未来を明るくできると言います。運のよい人は、予期せぬ出会いや他者には見えていない情報をつなぐことで、結果を出しているのです。

受動的に運を受け入れる姿勢から、自ら積極的にスマートラックを生み出す主体に変わりましょう。セレンディピティ・マインドセットを身につけることで、強運をつかめるようになります。セレンディピティを育み、活用する状況を家庭内やコミュニティ、組織のなかにつくるようにするのです。

いずれどうにかしてつながるかもしれない点と点が、無数に存在するセレンディピティ・フィールドを生み出し、それらを活かすことで、明るい未来を築けるようになるのです。

セレンディピティには、何か予想外、普通ではないことが起こるという「セレンディピティ・トリガー」が存在します。トリガーをそれまでかかわりのなかったことと結びつけること(点と点を結びつける)で、一見偶然のような出来事や出会いに価値があるかもしれないと気づきます。このそれまで無関係と思われていた事実や出来事を結びつけることを「バイソシエーション」と言います。 

重要なポイントとして、実現した価値(洞察、イノベーション、新しい手法、問題への新たな解決策)はもともと期待されていたものでも、誰かが探していたものでもなく(少なくとも探していた形ではない)、完全に予期せぬものなのです。

今この時代に成功し、幸福になるために重要なのは、すべてを緻密に計画しようとすることではない。明日何が起きるかすら予測できない世界において私たちにできるのは、予想外の状況を受け入れ、人生の巡り合わせを最大限活かすことぐらいだ。

チャンスがはっきりと姿を現してくれるのをただ待つのをやめ、自分の心をオープンにし、制約条件から解放されることで、身のまわりにあるたくさんの機会に気づけます。チャンスは身近にたくさんあるというマインドセットを持ち、さまざまな視点を身につけることで、世界の景色がポジティブなものに変わります。

セレンディピティ・マインドセットを身につけよう!

セレンディピティをたぐりよせるカギは、他の人には見えないものを見ること、思ってもいなかった事実を発見し、それを機会に変えることだ。それには一見無関係のアイデアや出来事がぶつかり、新たなパターンが生まれる瞬間をとらえ、活用しようとする意識的努力が必要だ。簡単に言えば、点と点を結びつける努力である。

セレンディピティはそもそもコントロールできるものではないし、もちろん予測などできません。ただ、セレンディピティが起こりやすい状況を生み出すことはできると著者は指摘します。

私たちは未来を見通し、点と点を結びつけることで、偶然の力を十分に活用できるようになります。日常のなかで偶然何かが起き、それに気づき、注意を払い、もともと知っていた一見無関係な事実と結びつけます。2つを結びつけ、主体的に対応することで今まで考えてもみなかった最適な解決策が見つかります。

■セレンディピティの3つの類型
①解決したい課題を偶然にみつける「アルキメデス型」
アイデアは予想外のところ、別のアプローチから見つかります。

②別の問題の解決に対応出来る「ポスト・イット型」
問題を解こうとしていて、まったく違う、あるいは存在すら認識していなかった問題への解決策を偶然見つけることができます。3Mのポストイットは粘着力の高くない物質からポストイットを開発します。

③予想外の問題をたなぼた的に解決する「サンダー・ボルト型」
問題の解決策を探してもいない、意識的努力がまるで行われていない状況で起こります。あたかもサンダーボルトのようにまったく予想もしていなかったタイミングで起こり、そこから新しい機会が生まれたり、それまで誰も認識していなかった、あるいは解決しようとしていなかった問題への解決策が生まれたりします。恋愛は往々にしてこのパターンで起こり、またこの種のセレンディピティから新たなアイデアや方法が生まれることも多いのです。

セレンディピティで重要なのは、予想外の出会いや情報の価値を認識し、活用する能力だ。1つひとつのステップは学習できるし、後押しすることもできる。セレンディピティ・マインドセット、すなわちこの強力な影響要因に気づき、つかみ、活用する能力は伸ばすことができる。  

偶然の出会いというのは単発的な出来事であるのに対し、セレンディピティはプロセスです。サプライズや偶然は重要な要素ですが、あくまでも最初のステップに過ぎません。これらの出会いや情報がいつ役立つかは分かりませんが、セレンディピティ・マインドセットを身につけ、点と点を結びつけるうちに、自分の運を高められるようになります。

セレンディピティ・トリガーに気づき、洞察力と粘り強さを活用し、点と点をつなぐことで、素晴らしい未来を手に入れられるようになるのです。人生は計画通りに直線的に進むわけはなく、曲がりくねったストーリーであると考えましょう。思考と行動を変えることで、目の前にあるたくさんのチャンスの芽を発見できるようになります。


 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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