自分の頭で考える読書 変化の時代に、道が拓かれる「本の読み方」
荒木博行
日本実業出版社
本書の要約
インターネットに頼るのではなく、読書を通じて、著者との対話を楽しみ、彼らのメッセージに反論するうちに、脳の中で化学反応が起こります。著者の考えを鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えることで、自分らしく生きられるようになります。読書によって、私たちは生きる力を育めるようになるのです。
アウトプットから読書を考えよう!
つまり、まずはアウトプットの場を定義する。そして逃げ場がないようなかたちに仕立てる。そうすれば、多くの人は生存本能から、読書のスイッチは入っていくはずです。(荒木博行)
この書評ブログを書き始めて、12年が経過しました。毎朝、取引先の経営者のためにこの書評ブログを書くことが、私の日課になることで、さまざまな本と出会えるようになりました。アウトプットする場があることで、私は多様な本を選ぶようになり、読書時間を増やせるようになったのです。
経営者の課題を解決するために、本を選ぶことが私の習慣になりました。社外取締役やアドバイザーとして、日々、経営者と対話する中で読書が課題解決に役立つことに気づきました。本を読む前に「問い」を設定し、抽象度を高める読書を実践するうちに解決策が見つかるようになったのです。読書から得た解決策をブログに書くことで、私は頭を整理できるだけでなく、情報をストックできるようになりました。
経営者とのミーティングで悩んだ時には、自分のブログを見直し、解決策を考えるようになりました。様々な著者のアドバイスと自分の知識と体験を掛け合わせることで、よい答えが見つかるようになったのです。
もしどのような事象の間にも抽象度を高めることで「航路」を通すことができるならば、自分の限られた知見でもさまざまな場所にメッセージが届けられるのではないか……ということに気づいたのです。
抽象化する力によって、脳の中で情報と情報がつながり、正しい答えが見つかるようになります。抽象度を上げれば自分と「航路」がつながり、いつかは自分のためになるのです。未来の自分のために本を読み、それを記録することで、自分の可能性を広げられます。
自分の頭で考える時間を取り戻そう!
多読であればよいというものではありません。よい本を読み、その思想に熱狂しつつも、「懐疑」を忘れない。そして、そこから生まれた「問い」を抱え続け、そのモヤモヤとした状況に耐えうる力を鍛えること。それこそが、私たちが「読書」をするときに忘れてはならない姿勢なのでしょう。
インターネット以前、私たちは検索エンジンを頼ることはできず、すぐに答えを見つけられずにいました。答えを得るために、私はよく図書館に行き、書棚を歩き回り、そのヒントを探しました。時には全く関係ない本が目に入り、ソファでその本を読むこともありました。何時間も図書館で過ごし、新聞の縮刷版や雑誌のバックナンバーを読むうちに、突然ひらめきを得られることもありました。図書館という空間で過ごす贅沢な時間が、私によい影響を与えてくれたのです。
検索エンジンやニュースのキュレーションサイトやSNSから私たちはすぐに答えを見つけられるようになりましたが、本を読み、考える時間を減らしたことは間違いありません。インターネットに頼るのではなく、著者との対話を楽しみ、彼らのメッセージに反論するうちに、脳の中で化学反応が起こります。著者の考えを鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えることで、自分らしく生きられるようになります。
他者からの強いメッセージを受け取りながらも、それに呑み込まれずに、自分の弱い懐疑を挟んでいく。そして、その中にやがてくる「答え」を待つ。他者の考えを受けながらもささやかな自己主張を続けていく、という読書こそが、「生きる力」を鍛えることにつながっていくのではないか。私はそう考えているのです。
ビジネス書だけでなく、歴史書、哲学書、小説などから、私たちは生きる力を得られます。先人たちのメッセージを抽象化したり、自分ごと化することを楽しむことで、人生の可能性が広がります。読書というスローな時間があることで、人生に彩を与えられます。読書によって、自分の頭で考える時間を取り戻しましょう。
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