グッド・アンセスター  わたしたちは「よき祖先」になれるか(ローマン・クルツナリック) の書評

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グッド・アンセスター  わたしたちは「よき祖先」になれるか
ローマン・クルツナリック
あすなろ書房

本書の書評

「ディープタイムの慎み」「レガシー・マインドセット」「世代間の公正」「大聖堂思考」「全体論的な予測」「超目標」という長期思考の6つの方法を身につけることで、未来の世代への共感を育め、自分たちの行動をよりよく変えられます。

グッド・アンセスターになるために私たちがすべきこと

私たちは皆、過去からのギフトを受け取って生きている。私たちの祖先が残した、膨大な遺産について、じっくり考えてみてほしい。(ローマン・クルツナリック)

イギリスの文化思想家であるローマン・クルツナリックは長期的な思考に基づいて、未来の子孫になるための行動をすべきだと言います。私たちが祖先から受け取ったギフトを未来の人類のために渡すことができなければ、人類は近未来に破滅してしまいます。

ウクライナ戦争、地球温暖化、南北問題、コロナ禍など、私たち現代人は危機の時代を生きていますが、長期的視点をもった賢い選択をすることではじめて、私たちは未来の世代に相応しいグッド・アンセスター(よき祖先)となれるのです。

スマホに慣れた現代人の時間感覚はどんどん短くなっています。アプリやSNSが私たちの集中力だけでなく、思考する時間を奪っています。

グッド・アンセスターになるためには、時間軸を数秒、数日、数カ月といったスケールから、数十年、数世紀、数千年というスケールへと拡張する必要があります。

長期思考を重視することで、未来の人類の役に立てるのです。戦国時代の日本は森林を伐採することで、生態系も社会も崩壊寸前でした。森林を大量に伐採し、何千もの城や神社、邸宅を建てたことで洪水に襲われ、結果1600年以降は大飢饉が相次いだと言います。

徳川家は長期的視点に立ち、1760年から100年間、世界初の大規模な林業計画に着手し、年間10万本の苗木を植えることで緑を復活させました。文明衰退の道をたどった日本が未来の子孫のために行動したことで、環境危機に対処できたのです。

自然を破壊し、地球温暖化が進む中、長期計画を立てることが求められています。

より長生きになったにもかかわらず、より短期思考になったことは、私たちの時代の大きな皮肉だ。(メアリー・キャサリン・ベイトソン)

医療が進化し、現代人は長生きになりましたが、SNSやスマホを気にすることで、私たちの時間軸はどんどん短くなっています。経営者も長期計画よりも四半期決算を意識し、短期的な行動ばかりを意識し、長期的な視点が欠けています。政治家も同じで次の自分の当選のことばかりを考え、未来の子供たちのための政策は採用されずにいます。

超的思考のための6つの方法

人は誰しも「マシュマロ脳」を持っていて、目先の欲望や報酬に執着してしまう。だが、同時に「どんぐり脳」も持っていて、遠い未来を思い描き、長期的な目標に向かって努力するよう促す。この二つのタイムゾーンが心の中で交差することから、私たちの中に人間らしい良い部分が生まれる。

人間は「マシュマロ脳(短期の利益を求める脳)」と「どんぐり脳(長期的な利益を求める脳)」を持ち合わせています。現代人はマシュマロ脳が大きくなり、自分の世代にメリットのあることばかりを追求し、どんぐり脳を使えずにいます。

健康になりたいにも関わらず、タバコを吸ってしまう人は、将来の自分を二の次にして、現在の自分の目の前にある喜びを優先しています。私たちは一般的に後で大きな報酬を得るよりも、小さくてもすぐに得られる報酬を好んでしまうのです。

シカゴ大での研究によると、未来に関する思考の80%は、当日または翌日に向いており、1年以上先のことを考えているのは14%、10年以上先のことを考えているのはわずか6%でした。短期思考ばかりに気を取られるのではなく、50年、100年先の未来の子孫のためにギフトを残すために、今こそどんぐり脳を活用すべきです。>未来の世代とつながりを意識し、彼らのことをイメージし、どんぐりを植えなければなりません。

共感の力は時の広がりを超えて作用し、私たちが利己と近視眼から抜け出せるようにしてくれます。祖先からのギフトに感謝し、未来世代への共感を育むことで、自分たちの行動を変えられます。

「ディープタイムの慎み」「レガシー・マインドセット」「世代間の公正」「大聖堂思考」「全体論的な予測」「超目標」という長期思考の6つの方法を身につけることで、未来の世代への共感を育め、自分たちの行動をよりよく変えられます。

■ディープタイムの慎み
宇宙時間を意識し、長期的な視点に立ち、未来の世代との共生を考える。

■レガシー・マインドセット
未来のためによい選択をし、彼らから感謝されるようにすべき。

■世代間の公正
ネイティブ・アメリカンは常に7世代後の幸福まで考え、行動する。未来の子孫のために正しい選択をすべき。

■大聖堂思考
未来の世代にギフトを残せるように行動をすべき。

■全体論的な未来予測
S字カーブを意識し、さまざまな視点から未来を予測すべき。起こり得る未来の輪郭については、地球や生命のシステムに関する何千もの科学的研究から明確な知識を得ることができる。

■超目標
かけがえのない地球のために、正しい努力を重ねる。遠い未来の向かっての北極星を設定する。

未来の世代から、自分がどのように記憶されたいか?誰のために遺産を残すのか?を長期的な視点で意識し、常日頃の選択に注意を払いたいと思います。



 

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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