勉強脳―知らずしらずのうちに結果が出せる「脳の使い方」
ダニエル・T・ウィリンガム
東洋経済新報社
勉強脳(ダニエル・T・ウィリンガム)の要約
新しい学びは興味、楽しみ、満足感をもたらしてくれます。”今はよく知らない”ということは、将来において無限の可能性が広がっていることを示しています。好奇心を持って学び続けることで、人生をより豊かにすることができます。勉強脳を鍛え、学びを継続することは、自分の可能性を広げることなのです。
効果的な勉強法とは?
「脳を活かす勉強法」とは、効果の高いエクササイズのようなものだと思ってください。一見きつそうでも、長い目でみてすごい効果を得られるのです。(ダニエル・T・ウィリンガム)
心理学者のダニエル・T・ウィリンガムは、学習と記憶の脳内基盤に焦点を当てた研究を行い、効果的な勉強法を読者に提供しています。彼の研究結果を参考にすることで、誤った勉強法を回避し、効果的な学習戦略を採用することで、学習成果を向上させることができます。以下に、彼の研究から得られたいくつかのトピックを紹介します。
▪️能動的に聴く
情報をただ受け入れて覚えるだけでは、情報の定着や理解が難しいことがあります。代わりに、積極的に関与し、情報を要約したり、自分なりの言葉で説明したりすることが重要です。
授業を単に受け身で聞くのではなく、能動的に聴くようにしましょう。課題を事前に読んだり、復習を習慣化することで、学習の理解を深めることができます。また、分からないことがあれば、遠慮せずに質問することも大切です。
▪️ノートの取り方
単にノートを取るだけでなく、ノートに情報を整理し、要約することが効果的です。重要なポイントやキーワードを強調し、関連する情報をまとめることで、学習効果が向上します。
先生が話していることを理解したら、それをそのまま書くのではなく、自分の考えたことを書くことです。そうすれば、内容に注意を向けることができますし、時間の節約にもなります。
書くことと理解することのバランスをとり、脳をフル活用しましょう。授業中にノートをとりながらその内容を理解しようと努力しても、完全に理解するのは難しいことがあります。しかし、授業後にノートを整理し、樹形図を描くことで、講義の要点がどのように互いに関連しているかを整理することができます。
これにより、学習した情報をより体系的に捉え、深化させることが可能になります。情報を関連づけることで抜け漏れを防げますし、記憶の定着にもつながります。情報を記憶に定着させる最も効果的な方法は、それが何を意味するのかを考え、自分が学習する情報と関連付けることです。
▪️集中力の維持
勉強中に気が散りやすい場合、短い休憩を取ることや、静かな環境を整えることが役立ちます。朝など集中力の高まる時間に勉強する習慣を取り入れることでも重要です。注意散漫につながるスマホと距離を置くことも効果があります。
▪️読書法
内容について考え、文章を読む前に何を学びたいかという具体的な目的を設定し、情報を関連づけながら読めるようになるのが、効果のある読書術。
効果的な読書法は、情報の定着と理解を深めるのに役立ちます。読んだ内容を要約し、重要なポイントをメモすることで、後で情報を復習しやすくなります。また、自分なりの質問を考えて、テキストとの対話的なアプローチを取ることも効果的です。
有名な「SQ3R法」は、効果的な読書術の一つです。この方法は、読書を効果的に行い、情報を理解し、記憶に残すのに役立ちます。SQ3Rは次のステップから成り立っています。
①Survey (調査)
最初に読む文書や教科書をざっと調べます。タイトル、見出し、サブ見出し、写真、図表などを見て、全体の構造や主要なトピックを把握します。 このステップで、読むべき内容の大まかなイメージをつかみます。
②Question (質問)
調査段階で得た情報をもとに、読む前に何を学ぶのかを自分に質問します。例えば、特定のトピックやキーポイントについての質問を考えます。 質問は、読書中に重要な情報に集中するのに役立ちます。
③Read (読む)
テキストをじっくりと読み進めます。質問に対する答えを探し、重要なポイントをメモします。 適切なスピードで読み進め、理解しやすいように自分のペースで進めます。
④Recite (再現)
テキストを一部読み進めたら、その部分を自分の言葉で要約し、理解度を確認します。質問に対する答えを口に出して説明することも助けになります。 これにより、情報の定着と理解が深まります。
⑤Review (復習)
読了後、全体を振り返ります。メモを見直し、テキスト全体の要点を再確認します。 また、時間が経過した後にも定期的に復習することで、情報を長期的に記憶に残しやすくなります。
私は書評ブログに書くことで、本を何度も読み、自分の考えをメモにまとめ、さらに記事で発信します。これにより書籍への理解が進み、著者との対話を通じて、知識を強化するだけでなく、思考を深掘りできます。必要な時に記事を再読することで、知識が確実に定着します。
▪️間違いを認識し、知識に変える
頭の優れた人々でさえ、時には誤った答えを出すことがありますが、彼らは自分の間違いに率直に向き合い、そこから学ぶ姿勢を持っています。
学習のポジティブサイクル
聖アウグスティヌスは、西暦400年ごろに書いた『告白』に「誰にも尋ねられなければ、私は知っている。だが、尋ねてくる人に説明しようとすると、私は知らない」と記しています。この知見は現代においても同じです。
私たちは日常生活で、「わかっている」と言うことがあります。しかし、本当にわかっていると言えるのは、自分自身だけが理解しているだけではありません。他の人にも説明できなければ、それは知識になっていないのです。アウグスティヌスの言葉は、この点を強調しています。
何かを理解するためには、その対象について十分な知識を持つ必要があります。しかし、それだけでは十分ではありません。他の人にも理解してもらうためには、自分の言葉で説明する力が必要です。私たちは自分の頭の中で理解していることを、言葉や文章でわかりやすく表現することが求められるのです。
この点で、アウグスティヌスの言葉は現代においても意味を持ちます。私たちは、自分が何かを理解していると思っても、他の人にそれを説明できなければ、本当に理解しているとは言えません。説明することで、自分の理解が深まるだけでなく、他の人と共有することも可能になります。
例えば、学校の授業で新しい概念や理論を学んだとします。ただ単に教科書を読んで理解しただけでは、それを他の人に説明することはできません。自分の言葉で説明し、他の人が正しく理解できるようにするためには、その概念や理論を深く理解する必要があります。
また、仕事やプロジェクトでも同じです。自分が担当している領域について詳しく知っているだけでは、他の人とのコミュニケーションがうまくいかないかもしれません。自分の知識を他の人にわかりやすく伝えることで、人の協力が得られ、プロジェクトがうまくいくのです。
著者は学習のポジティブサイクルを明らかにしています。
1、情報に興味を持つ・・・学習プロセスは、情報に対する興味や動機から始まります。興味を持つことは学習のモチベーションを高めます。
2、注意が向く・・・興味がある情報に注意を向けることは、情報の理解と記憶に不可欠です。注意が散漫でなければ、情報を集中して処理できます。
3、多くを覚える・・・集中力を保ちながら情報を処理し、記憶に留めることが学習の鍵です。効果的な学習戦略やノートの取り方を使用することで、情報の定着を助けます。
4、試験の成績が向上する・・・良い学習プロセスが成果を生む場合、試験や評価の成績が向上する可能性が高まります。
5、自信をつける・・・成績の向上により自信がつき、自信が学習をさらに促進します。
6、先延ばしを減らす・・・自信と達成感が高まると、タスクの先延ばしを減らす傾向があります。計画的に取り組むことができます。
7、勉強のペースを保つ・・・先延ばしを減らし、学習のペースを一貫して保つことは、学習効果を維持するために重要です。
8、幅広い知識を獲得・・・学習が進むと、幅広いテーマに関する知識が増え、情報のつながりを理解しやすくなります。
9、理解が深まり、新しい情報に興味を持つ・・・幅広い知識を持ち、理解が深まることで、新しい情報に対する興味が生まれ、学習サイクルが再び始まります。
このポジティブなサイクルは、学習と成長における一般的なプロセスを示し、学習の成功には持続的な努力が必要であることを明確に示しています。興味、注意、自信、計画、そして継続的な学習が重要な要素となります。これらのステップを進むうちにポジティブなループが始まり、学びの継続がやがて力の源泉となるのです。
新しい学びは興味、楽しみ、満足感をもたらしてくれます。”今はよく知らない”ということは、将来において無限の可能性が広がっていることを示しています。好奇心を持って学び続けることで、人生をより豊かにすることができます。勉強脳を鍛え、学びを継続することは、自分の可能性を広げることなのです。
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