ダニエル・ゴールマンのリーダーは集中力を操るの書評

関心の方向付けは、リーダーの大きな役割である。そのためには自身の関心を何かに集中する術を身につけなくてはならない。(ダニエル・ゴールマン)


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リーダーに共感力が必要な理由

ダニエル・ゴールマンリーダーは集中力を操る 自分へ、他者へ、外界へ、どのように注意を向けるか DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文を再読しました。著者はリーダーには集中力が欠かせないと指摘します。

自身の関心を何かに集中する術を身につけることで、リーダーは結果を残せるようになります。「集中した状態」とは一般に、頭のなかから雑念を追い出し、ただ一つのことだけを考える状態を言います。最近の研究で、集中にはいくつもの方法があり、目的も関係する神経回路もまちまちであることがわかっています。

集中の形態は以下の3つに分類されます。
①自分への集中
②他者への集中
③外界への集中
集中力を養うことで、リーダーシップ・スキルを発揮できるようになります。リーダーは、じっくり内省して建設的な姿勢で他者に関心を集中することで、EQ(心の知能指数)を高められます。視野を広げてそこに関心を集中する方法を理解すると、戦略立案、イノベーション、組織マネジメントの手腕が高まります。

自分を見つめる

自分の内なる声に耳を傾けるのが、EQを高めるうえでの出発点である。これを実践すると、リーダーは多くの手がかりを基によりよい判断を下し、本当の自分を探り当てることができる。すると何が起きるだろうか。この抽象的な概念を具体的にとらえるには、自分を見つめるとはどういうことかを考えるとよい。

自分の内なる声に耳を傾けるということは、体内で発せられる生理学的なシグナルに細心の注意を払うということです。監視する任務は、前頭葉の裏側に位置する島皮質が担います。私たちが自分の心臓の鼓動に耳を澄ますと、それに関連する回路の神経単位(ニューロン)が、島皮質の働きによってより活性化します。心臓の鼓動をどれだけ感じ取れるかは、自分にどれだけ意識を集中しているかを測る標準的モノサシとされています。

直感とは島皮質と扁桃体からのメッセージであり(神経科学者で南カリフォルニア大学教授のアントニオ・ダマシオは、これをソマティック・マーカー・身体標識と呼ぶ)、何かが正しいか誤っているかを「感覚」として伝えています。ソマティック・マーカーは私たちの注意をよりよい選択肢に向かわせ、意思決定を簡略化してくれるのでです。

イギリスの研究者グループが、ロンドンの金融街の投資銀行4行のプロフェッショナル・トレーダ118人と上級マネジャー10人をインタビューし、その内容を分析しました。成績最上位のトレーダーたち(平均年俸50万ポンド)は、分析と直感のどちらか一方だけに頼るのではなく、ありとあらゆる感情とじっくり向き合い、それを基に直感の有用性を見極めていました。彼らは損失を被った場合は内なる不安を受け入れ、慎重な姿勢を強め、リスクを軽減したのです。一方、成績最下位のトレーダー群(平均年俸わずか10万ポンド)は不安を無視して、直感だけを頼りに突き進む傾向があありました。内面から発せられる多様なシグナルに注意を払わなかったせいで、方向を誤ったのです。

その時々の感覚的な心象に意識を集中することが、自己認識の大きな柱である。ただし、リーダーシップを発揮するうえではもう一つ欠かせない要素がある。過去から現在までの経験を総合して、本当の自分について首尾一貫したとらえ方をすることだ。本当の自分であるとは、他人から見た自分が自己像と重なり合う状態を意味する。これを実現するには、一つには、他人、とりわけ貴重な意見や正直なフィードバックをくれる人が自分をどう思っているかに、注意を払う必要がある。

私たちは開かれた意識(open awareness)を持つこと、つまり、何かにすっかり気を取られたり、翻弄されたりせずに、周囲の状況に幅広く注意を払う状態になると他者との関係を変えられます。他人の意見を通して本当の自分を知る方法は効果があるのです。外からの目を通して本当の自分を確かめることで、自分の価値を理解できるようになり、他者への貢献をスタートできます。

気が散りそうな誘惑に打ち勝って、「これ」と決めた対象に注意を向け続ける「認知制御」もリーダーには必要です。障壁や挫折を乗り越えて目標を追求するうえでは、この認知制御が役に立つのです。断固として目標を達成しようとする姿勢を生み出す神経回路は、御しにくい感情の手綱を締める働きも持ちます。危機のさなかに冷静さを保ったり、興奮を抑えたり、大失敗や大混乱から立ち直ったりするのも、優れた認知制御があるからです。

1970年代にニュージーランドのダニーデン市で出生した、全1037人の人生を長期に追跡した調査は有名です。被験者には、幼年期の数年間に、意志力を測るさまざまな検査を実施しました。心理学者ウォルター・ミシェルは子供達に、マシュマロ1個をもらってすぐに食べるのと、15分間我慢した後に2個食べるのと、どちらかを選ばせました。ミシェルの実験では、①マシュマロ1個を即座に頬張る、②少しの間我慢する、③15分間ずっと我慢するという3つの行動パターンには、おおよそ均等に人数が分散するという結果が出ました。

30代になった被験者のほぼ全員(九六%)を再び調査すると、子どもの頃に15分間ずっとマシュマロを食べずに我慢して高い認知制御力を示したグループのほうが、少しも我慢せずにすぐに食べてしまったグループよりもはるかに健康状態がよく、収入が高く、法律を守る傾向が強かったのです。

統計分析からも、子どもが後に経済的に成功するかどうかを予測する指標としては、IQ(知能指数)、社会階層、家庭環境よりも自制心の強さのほうが有用だとわかっています。ミシェルは、集中力が自制心を発揮するうえでのカギだと述べています。

欲求を満たそうとする衝動と自制心とがせめぎ合う局面では、以下の3種類の認知制御力が働きます。
①欲求の対象から自発的に注意を逸らす能力
②欲求の対象に関心を引き戻そうとする誘惑に抗う能力
③将来の目標に意識を集中して、それを達成したらどれだけ気分がよいかを想像する能力
ダニーデンの被験者たちは、成人した後に幼い頃の自分の性向から逃れられなかったかもしれないが、私たちはあきらめてはいけません。集中力は大人になってからも、伸ばすことができるのです。

他者に関心を向ける

EQの第2の柱である共感や第3の柱である社会的な関係を築く力の土台を成すものだ。他者に関心を集中するのが上手な経営者は、はたから見てすぐにそうとわかる。彼らは、相手と共通の土台を見つけ出す、非常に重みのある意見を述べる、他の人々に一緒に仕事をしたいと思わせる、といった特質を持つ。こうした人々は、組織あるいは社会での地位にかかわらず、生来のリーダーとして頭角を現す。

リーダーが他者に共感を示す様子を注意深く観察すると、以下の3種類の共感があることがわかりました。優秀なあリーダーは、この3つの共感力を持っています。
●認知的共感…他者の視点を理解する力
●情動的共感…他者の感情を汲み取る力
●共感的関心…相手が自分に何を求めているかを察知する力

認知的共感を抱いたリーダーは、自分の言わんとすることをはっきり説明できます。これは直属の部下から最大限の成果を引き出すうえで欠かせないスキルです。認知的共感力を持つ優れた経営者は、すべてを学びたい、周囲の全員を理解したいという意欲を、常に持ち続けています。彼らは部下の思考や行動に共感し、その理由を探りながら、彼らに共感を示しています。

情動的共感は、メンタリング、顧客対応、集団力学の把握をうまく行ううえで、重要な働きをします。その源泉は、大脳新皮質の内側にある進化的に古い部分、すなわち扁桃体、視床下部、海馬、眼窩前頭皮質にあります。これらの部位の働きにより、私たちは深く考えなくても速やかに何かを感じることができるのです。興味深い話を聞いていると、私たちの脳は相手と同じ活動パターンを示します。マックス・プランク認知神経科学研究所の社会神経科学部門のディレクターのタニア・ジンガーは、「他人の感情を理解するには、まずは自分の感情を理解する必要がある」と指摘します。情動的共感を呼び起こすには、相手の感情に対する自分の反応に意識的に注意を向けることと、表情や声の調子などから相手の感情を幅広く読み取る必要があります。

共感的関心は、情動的共感と密接な関係にあります。人々の感情だけでなく、相手が自分に何を求めているかを察知する力を、私たちに与えてくれます。共感的関心を引き起こすのは、親の注意を子どもに向けさせる役割を持つ神経回路です。だれかが愛らしい赤ん坊を連れて部屋に入ってきた時に、その場にいる人々の視線がどう動くかを見れば、哺乳類の脳中枢にあるこの回路が突如として活性化したことがわかります。ある神経理論によると、この反応は扁桃体と前頭前皮質で起きる。扁桃体は危険を察知する脳内レーダーに刺激されて、前頭前皮質は「思いやりの物質」とされるオキシトシンの分泌をきっかけに、それぞれ反応します。

私たちは、他者の苦悩をわがことのように受け止める時には直感を頼りますが、相手のニーズに応えるかどうかを判断する時は、その人の幸福が自分にとってどれだけ重要かを熟考します。リーダーはこの直感と熟考のバランスをうまく取るようにすべきです。

他者に同情しすぎると、自分自身が苦しくなります。人助けが多い仕事をしていると共感疲労が起こります。経営幹部は、人や状況にまつわるどうしようもない問題への不安に苛まれるおそれがあるのです。しかし、自分を防御するために感情を抑制すると、共感を持てなくなってしまいます。

共感的関心を持つには、他者の痛みを感じる力を保ったまま、自分の苦悩とうまく付き合うことが求められます。また、共感的関心をうまく活かすことが、道徳的な判断を下す上で求められます。志願者を募って、体に痛みを抱えた人の話を聞いてもらうと、その時の脳画像からは、脳中枢の痛みを感じる部分がすぐさま反応する様子が見て取れます。ところが、体の痛みではなく心理的な苦痛にまつわる話を聞いた場合は、共感的関心や思いやりといった高等な機能を司る脳中枢が、緩やかに活性化しました。状況の心理的、道徳的側面を把握するのにいくらか時間がかかったのです。気が散ったり取り乱したりしていればいるほど、繊細な共感や同情は起きにくいことがわかっています。

人間関係の構築社会的な感受性に欠ける人物は、少なくとも他人の目からは容易にそうと見分けがつきます。自分の欠点に少しも気づいていない上司は多く、彼らには社会的な感受性と関連する認知的共感力が不足しているのです。社会的文脈に注意を払えば、状況がどうあれそつなく振る舞え、一般的なエチケットに直感的に従い、ほかの人々を安心させるような振る舞いができます。

海馬前部に集中する神経回路は社会的な文脈を読み取る働きをします。この神経回路は熟考を司る前頭前皮質と連携して、不適切な行動を取ろうとする衝動を抑えつけます。ウィスコンシン大学教授で神経科学者のリチャード・デイビッドソンの仮説によると、対人関係にきわめて敏感な人々と、その場の状況をうまく読めないと思われる人々とを比べた場合、前者のほうが海馬や前頭前皮質の活性が高く、両者のつながりも緊密であることが明らかになっています。

集団内の人間関係を理解する働きもこの神経回路が担っています。組織にうまく影響力を及ぼす人は、メンバー間の力学を察知するだけでなく、発言力の最も大きな人物を特定できるため、周りを説き伏せる力を持った人々の説得に専念します。

人間関係を理解、維持する能力は、昇進の階段を上って大きな権限を得るにつれて、心の持ち方のせいで衰えていきます。心理学者でカリフォルニア大学バークレー校教授のダッチャー・ケルトナーが、地位に開きがある人同士の対面事例を調べた結果、地位の高いほうの人はきまって相手の目をあまり見ず、話を遮ったり、一方的にまくしたてたりする傾向が強いことがわかりました。

組織内でいかに有力者への配慮が行き届いているかを分析すると、階層構造が浮き彫りになります。AさんがBさんからの連絡や質問に返答するまでの時間が長ければ長いほど、AさんのBさんに対する相対的な地位は高くなります。全員の応答時間を相関図にまとめると、組織内の上下関係が驚くほど正確に見えてきます。

上司は部下からのeメールを何時間も放ったままにするが、部下の側では数分以内に返信します。この傾向はめったに崩れないため、コロンビア大学は自動社会階層予測というアルゴリズムを開発しました。このアルゴリズムは諜報機関によって、テロ集団と思しきグループ内での影響力の働き方を総合的に把握して、中心人物を特定する目的で使われます。

肝心なのは、私たちが他人にどれだけ気を遣うかは、自分の相対的な立場をどう見ているかによって決まるという点である。これは経営トップ層にとっては警鐘としての意味を持つ。彼らは、移り変わりの早い競争状況に対応するために、組織内のアイデアや人材を幅広く活用しなくてはならない。意識して注意を向けない限り、いつもの癖で組織の下層の人材が持つ優れたアイデアを見過ごしてしまうだろう。

リーダーは部下に関心を向けるために、共感する力を養うことで、組織を活性化できます。高いポジションの人は様々な部下に関心を向け、彼らの力を引き出す必要があります。

外界に関心を向ける

外界への関心が強いリーダーは、聞き上手であるばかりか質問上手でもある。彼らは先見の明にあふれ、ある場所での判断が遠く離れた場所や分野にどういった結果を及ぼすかを察知したり、現在の選択が先々どういった結果をもたらすかを想像したりする力を持つ。一見したところ関係のなさそうなデータが、意外にも自分の主な関心分野に役立つなら、それを積極的に受け入れようとする。

集中力のあるリーダーとは、自分の注意力すべてを思いのままに操れる人です。自分の内なる感情に耳を傾け、衝動を抑え、他人からどう見られているかに気づき、他人が自分に何を求めているかを理解し、注意散漫を避けながら、先入観を排して自由に幅広く関心を持ちます。

集中力は、種類を問わずほぼすべてを伸ばすことができます。求められるのは才能よりもむしろ勤勉さです。分析力や身体機能を鍛えるのと同じように、注意を司る脳内の神経回路を鍛えようとすればよいのです。リーダーシップ・スキルの本質を成す要素の大半、たとえばEQや、組織・戦略分野の知性などは、注意力を土台としています。

しかし、情報が爆発する中で、多くのリーダーは注意力を失っています。注意力の低下によって、仕事の質を落としたり、部下との関係を犠牲にしています。リーダーは注意力に焦点を当てて、必要な時に必要なところに注意を向けるべきです。自分の脳の仕組みを理解し、マインドフルネスを実践し、他者に注意を払うことで、本当に自分に重要なこと、やるべきことが見つけられます。

まとめ

リーダーは、①自分への集中②他者への集中③外界への集中という3つの集中力を養うことで、結果を残せるようになります。情報が爆発する中で、リーダーは本来やるべきことがわからなくなっています。周りの人や様々な情報に注意を払うことをリーダーは実践すべきです。

 

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