ダニエル・コイルの天才はディープ・プラクティスと1万時間の法則でつくられる ミエリン増強で脅威の成長率の書評


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天才はディープ・プラクティスと1万時間の法則でつくられる ミエリン増強で脅威の成長率
著者:ダニエル・コイル
出版社:パンローリング

本書の要約

脳神経のミエリンという細胞が発達することによって、個々の能力が飛躍的に高まることが研究によって明らかになりました。天才を作るためには、ディープ・プラクティスが必要で、これがミエリンを増やします。天才たちは苦労すること、ミスを重ねることによって自分の能力を高めていたのです。

天才を作る鍵はミエリンにある?

ミエリンの最も大きな利点は、スキルを理解するうえで、まったく新たな視点をもたらすことだ。すなわち、スキルとは神経回路を覆い、特定の信号に反応して成長する細胞の絶縁体である。(ダニエル・コイル)

ジャーナリストのダニエル・コインが、天才になる方法を世界中の世界中の天才を取材することで発見しました。ブラジルのサッカーチームや有名な音楽家には共通点があったのです。テニス選手と歌手とには画家は、一見共通点がなさそうですが、いずれもタイミング、スピード、正確さを徐々に改良し、神経回路を強化して、才能のソースコードのルールに従うことによって腕を上げています。天才たちは、ミエリンを増やすことによって、自分たちのスキルを伸ばしていたのです。

脳神経のミエリンという細胞が発達することによって、個々の能力が飛躍的に高まることが研究によって明らかになっています。スキルと才能を理解するにはこのミエリンを理解する必要があるのです。

天才を作るためには、ミエリンを増やすためのディープ・プラクティスが必要です。天才たちはあらかじめ想定した範囲内で、苦労することによって自分の能力よりもやや上のレベルで練習し、ミスを重ねることで上達しています。あえてスピードを落とし、ミスを犯し、それを修正せざるをえない経験をすれば(氷の張った山道を滑ったり転んだりしながら登るなど)、自分でも気づかないうちに、すばやく優雅に動けるようになるのです。

ディープ・プラクティスには世間一般のルールは当てはまらない。より効率的に時間を使える。小さな努力が大きく持続的な成果を生み出す。それは、失敗をスキルに変えることのできるこの力点を見つけるからだ。その秘訣は、現在の能力よりも少し上の目標を設定すること、すなわち苦しいと感じる練習を重ねることである。やみくもにのたうちまわっても意味はない。目標に向かって努力することが大切だ。

通常は避けようと思うミスが結果を生みだすためには必要なのです。学習プロセスにミスがなければ、スキルの向上はないのです。 ブラジルのサッカー選手は子供のころにフットサルに親しみ、そこで徹底的にボールに触り、テクニックを磨きます。彼らは小さな敷地でディープ・プラクティスを行い、ミスを犯しては修正し、目の前の問題を常に解決する方法を見出します。ロナウジーニュもロナウドもフットサルをやるときに頻繁かつ正確に神経回路を発火させ、最適化し、その結果ミエリンを増やしていたのです。

実はこのブログのテーマの習慣にもミエリンが関係していました。習慣を変えるためには、新たな行を繰り返す必要がありますが、それは新たな回路をミエリン化するためなのです。

ディープ・プラクティスがフィレの天才集団を生み出した?

ブロンテ姉妹は無数の回路を発火させて機能を向上させ、数えきれないほどの創作の壁に突き当たっては乗り越え、文学的には失敗と言わざるをえない作品を何百も生み出した。ただし、その失敗を補う利点が二つある。姉妹はつねに楽しみながら書き、一冊書くたびに少しずつスキルを身につけた。スキルは神経回路を覆い、特定の信号に反応して成長する絶縁体である。

「嵐が丘」で有名なブロンテ姉妹も子供のころにたくさんの駄作を書くことで、失敗を乗り越えました。実は「嵐が丘」には、子供の頃に書いたストーリーがいくつも取り込まれていたのです。長い間、書くというディープ・プラクティスによって、この作品が生まれてきたのです。

多くの天才たちは、以下のステップを踏み、ディープ・プラクティスを行っています。
脳の回路が発火し、向上する→ミスを修正する→ミエリンが増加し、才能が花開く
ブロンテ姉妹もブラジルのサッカー選手も有名な音楽家も同じことを繰り返しているのです。

天才は同じ時代に集団として生まれることが多いとカーネギーメロン大学のデイヴィッド・バンクスは指摘します。
紀元前440〜380年のアテネ
1440〜90年のフィレンツェ
1570年〜1640年のロンドン
バンクスはルネサンスに対する世間一般の解釈を挙げ、なぜこの時代に天才たちが生まれたかを考察します。
■繁栄芸術を支援する資金と市場をもたらした。
■平和芸術および哲学の発展を促す安定をもたらした。
■自由芸術家を国家や宗教の支配から解放した。
■社会移動才能のある貧しい者が芸術の世界に入ることができた。
■パラダイムの変化独創性や表現を生み出す新たな視点や手段をもたらした。
実はこうした要因のほとんどは歴史的文献と矛盾するとバンクスは言います。1400年代のフィレンツェは取り立てて繁栄していたわけでも、平和でも自由でもありませんでした。それどころか恐ろしい伝染病が大流行し、権力を持つ一族どうしの激しい戦いによって分裂し、教会に厳しく支配されていました。しかし、他のエリアも同じような状況で、ここに天才が集結した理由にはなりえません。

この問題を通説に従うのをやめ、ディープ・プラクティスの観点から見ると、答えが見えてきます。当時のフィレンツェは同業組合と呼ばれる強力な社会的集団の結成の中心地でした。当時のギルドは才能の育成に注力しました。ギルドは徒弟制度に基づき、7歳前後の少年が親方のもとで5~10年間修行をさせました。

徒弟は親方の直接の監督・指導のもとで働き、多くの場合、親方は後見人の役割を担ったのです。徒弟は講義や理論からではなく、絵の具を混ぜたり、キャンバスを用意したり、彫刻刀を研いだりするなどの実技を通して技術を一から学びました。そして身分階層内で協力したり競い合ったりしながら、数年後には熟練した職人となり、最終的に充分な技術を身につければ親方となったのです。

このシステムは、熟練者が新人に助言をしながら人材を育成するメンタリングの連鎖を生み出しました。ダ・ヴィンチはヴェロッキオのもとで勉強し、ヴェロッキオはドナテッロのもとで勉強し、ドナテッロはギベルティのもとで勉強しました。ミケランジェロはギルランダイオのもとで、ギルランダイオはバルドヴィネッティのもとで勉強したのです。

彼らは互いの工房を頻繁に行き来し、競合しながらも協力し合いました。このシステムは1500年代まで続きましたが、新たに強力な国民国家が台頭したことによって、ギルドおよびルネサンスのディープ・プラクティス・エンジンは終焉を迎えました。

要するに、優秀さを生み出すシステムに基づいた世界において、徒弟は何千時間もかけて問題を解決し、挑戦しては失敗し、ふたたび挑戦した。

ミケランジェロは6歳から10歳まで石工の一家とともに暮らし、読み書きよりも先に金づちやのみの扱い方を覚えました。その後、学問を学ぼうとしたがうまくいかず、大画家ギルランダイオに弟子入りし、そこでスケッチ、模写、そしてフィレンツェで最も大きな教会のフレスコ画の準備などをすることで大作の制作に関わりました。その後、ミケランジェロは名彫刻家ベルトルドに弟子入りし、17歳になるまで住みこんだロレンツォ・デ・メディチの家で家庭教師から学問を学びました。

ミケランジェロは前途有望でしたが、24歳でピエタ像を制作するまではほとんど無名でした。ピエタは稀に見る傑作だと称賛されましたが、彼は「私が技術を身につけるのにどれだけ苦労したかを知っていれば、そんなにすばらしいものではないだろう」と否定しました。

徒弟制度は長期間の訓練、早い時期からさまざまな素材に触れること、模倣、共同作業などにより、おそらくあらゆる点で平凡な少年を高度な芸術的技術を持った人間に育てる。(ブルース・コール)

私たちは偉大なルネサンス時代の芸術家をひとつの同質集団だと考えがちですが、実際には他の無作為に選ばれた人々のグループと変わりませんでした。裕福な家の出身者もいれば、貧困家庭で育った者もいたことを忘れてはいけません。

性格も師匠も動機も異なる集団でしたが、だが、ひとつだけ彼らには共通点がありました。それは、全員がディープ・プラクティスを実践する環境で何千時間も過ごし、脳回路を発火させて最適化し、ミスを修正し、競い合い、技術を向上させていたのです。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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