科学的に証明された 頭のいい人が習慣にしている 学び方の戦略 (堀田秀吾)の書評

書籍:科学的に証明された 頭のいい人が習慣にしている 学び方の戦略 
著者:堀田秀吾
出版社:アスコム

科学的に証明された 頭のいい人が習慣にしている 学び方の戦略の書影

現代のビジネスパーソンにとって、「学ぶこと」の重要性はかつてないほど高まっています。テクノロジーの進化、とりわけ生成AIの台頭により、昨日までの常識が今日には陳腐化する時代において、継続的なアップデート、すなわち「学び直し(リスキリング)」は、キャリアを生き抜くための必須条件となりました。

しかし、日々の業務に追われる中で、「本を読んでもすぐに忘れてしまう」「勉強する時間も気力もない」「年齢的に記憶力の衰えを感じる」と悩む方も多いのではないでしょうか。 私自身、63歳となり、日々記憶力の衰えを実感しながら、働いています。

コンサルタントや大学の特任教授として日々新しい知識に触れる中で、いかに以前のように知識を定着させるかという課題に直面し続けてきました。

そんな中、手にしたのが堀田秀吾氏の著書『科学的に証明された 頭のいい人が習慣にしている学び方の戦略』(アスコム)です。 

本書は、私たちが長年信じてきた「長時間机に向かう」「何度も読み返す」「ひたすら書き写す」といった、いわゆる「根性論」に基づく古い勉強法を真っ向から否定します。そして、世界中の研究機関が導き出したエビデンスに基づき、「脳のメカニズム」「時間と環境」「身体のコンディション」をハックする、極めて合理的で新しい学びの戦略を提示してくれます。

特に目を引くのは、「持っている知識」ではなく、未知の状況に対応できる「使える力」こそが真の知能であるという再定義です。さらに、年齢による能力低下という「思い込みに騙されない」ための科学的根拠も示されており、シニア層のリスキリングにも大きな勇気を与えてくれます。 

本記事では、本書のエッセンスを紹介するだけでなく、私、徳本昌大のコンサルタントとしての視点や実践例を交えながら、「この本がいまの時代になぜ重要か」「読者の皆さまの仕事や人生にどう役立つか」を深掘りしていきます。

この記事でわかること

・『頭のいい人が習慣にしている学び方の戦略』の全体像と科学的エビデンスの活用法
・知識を「わかったつもり」から「使える力」に変えるための「3つの戦略」の具体的手法
・年齢を言い訳にせず、大人の学び直しを成功させる「結晶性知能」のメカニズム
・学びの質を劇的に高める、意志力に頼らない時間管理と環境構築のシステム

30秒でわかる本書のポイント

【結論】
・学びの成果は「根性」や「投下時間」ではなく、科学に基づいた「戦略」で決まります。 
・本当の知能とは、知識の量ではなく、新しい状況を理解し対応できる「使える力」です。
【原因】
・読んだり眺めたりするだけの「受け身の学習」では、脳に知識が定着しません。 
・集中力の限界や環境(スマホの存在など)を無視して、意志の力だけで学ぼうとしているからです。
【対策】
・思い出し、比べ、説明し直すことで、脳に「適度な負荷」をかけます(検索練習、プロテジェ効果など)。  いつ・どこで学ぶかを設計し、集中と休息を細かく区切ります(分散学習、環境設計)。

本書の要約

『科学的に証明された 頭のいい人が習慣にしている学び方の戦略』は、世界中の科学的研究から導き出された「最も効率的で確実な学習法」を体系化した一冊です。

著者はまず、「知能」を単なる知識の蓄積ではなく、「初めての状況でも、うまく考えて、学んで、対応できる力」と定義します。その上で、知識を「使える力」に変えるためには、旧来の根性論を捨て、「戦略」を持つべきだと主張しています。 

本書の核となるのは「3つの戦略」です。第1の戦略「脳に適切な負荷をかける」では、テキストを眺めるだけでなく、あえてテスト形式で思い出す「検索練習」や、他人に教える前提で学ぶ「プロテジェ効果」により、知識を深く定着させます。

第2の戦略「時間と環境を設計する」では、間隔をあけて復習する「分散学習」や、スマホを視界から消す環境づくりにより、努力を無駄なく成果に結びつけます。

第3の戦略「身体のコンディションを整える」では、気合いに頼らず、睡眠や休息を適切に取る重要性を説きます。 

さらに、高齢になるほど経験に基づく「結晶性知能」が活きるため、年齢を理由に学びを諦める必要はないと断言しています。本書は、仕事から目標達成まで、あらゆる学習をラクにし、成果を最大化するための科学的メソッド100を網羅した実践書です。 

こんな人におすすめ

・本を読んでも内容をすぐに忘れてしまい、実務や会議での発言に活かせていないビジネスパーソン
・AI時代を生き抜くために、効果的な「学び直し(リスキリング)」を始めたい経営者・マネージャー
・「もう年齢的に新しいことを覚えるのは無理だ」と思い込んでいるミドル〜シニア層の方
・限られた時間で最大の学習効果(資格取得・スキルアップ)を出したいプレイングマネージャー
・根性論や気合いに頼る学習法に限界を感じ、判断の質を上げる科学的なアプローチを求めている方

本書から得られるメリット

・知識を「わかったつもり」から、仕事で「使える力」へと昇華させる方法がわかります。
・脳科学に基づく学習アプローチにより、無駄な努力を省き、学習の費用対効果(ROI)が最大化します。
・加齢による脳の特性を理解し、自分の年齢に最適な学習戦略を構築できます。
・スマホやマルチタスクによる注意力の散漫を防ぎ、深い集中を生み出す「環境設計」のスキルが身につきます。 ・構造で考える思考習慣が身につき、経営やビジネスにおける意思決定の質が飛躍的に向上します。

科学的に証明された 頭のいい人が習慣にしている 学び方の戦略の書影

「頭のよさ」に悩む前に、学び方の戦略を問い直す

結局、「頭が良い」とはなんなのかを科学的にいえば、新しい情報や課題を、うまく理解して、考えて、学んで、使えるようにする総合力です。そのなかには、汎用エンジン的な部分もあれば、知識の蓄積も含まれます。(堀田秀吾)

本を読んでも、しばらくすると内容を思い出せない。セミナーでは深く納得したはずなのに、実際の仕事の場面では全く使えない。ビジネスパーソンであれば、誰もが一度はそんな経験をし、自分の記憶力や理解力を疑いたくなることがあるでしょう。「自分は頭が悪いから」「生まれつきだから仕方ない」と、学習そのものを諦めてしまう人も少なくありません。

しかし、自分への評価を下す前に、まずは問い直すべきことがあります。それは、「自分は本当に『学ぶための行動』をしていたのか」、それとも「単に情報に触れて、わかったつもりになっていただけなのか」という点です。

本書『科学的に証明された 頭のいい人が習慣にしている 学び方の戦略 』では、知能を「知識がたくさんあること」ではなく、「初めての状況でも、うまく考えて、学んで、対応できる力」と定義しています。

つまり、知識という「体力」と、頭の使い方という「走り方(戦略)」の両方が揃って初めて、私たちはゴール(成功)にたどり着くことができるのです。

私たちは長年、勉強とは「長時間机に向かうこと」「何度も読み返すこと」「ひたすら書き写すこと」だと信じてきました。

しかし、近年の研究は、この常識に大きな修正を迫っています。受け身で読むだけでは記憶に残らず、努力の量よりも、脳にどう働きかけるか、時間と環境をどう設計するかが成果を大きく左右するのです。

学びに出発点は、自分の能力を嘆くことではなく、科学的な「戦略」を取り入れ、学習プロセスを改善することにあります。

本書の中で、私がビジネスパーソンに最も強くお勧めしたいのが「脳に適切な負荷をかける」という第1の戦略です。 

古い学び方は、「読む」「眺める」「線を引く」といった受け身の反復に偏りがちでした。しかし科学的な学び方では、知識が本当に定着するのは「思い出そうとし、比べ、説明し直すとき」だと考えます。これを本書では「検索練習」と呼んでいます。 

ここでの「検索」とは、インターネットでGoogle検索をすることではありません。自分の脳の記憶から、必死に情報を取り出そうとする行為のことです。 この考え方を日々の読書や実務に応用するならば、本を1章読み終えたところでパタンと本を閉じ、「結局、今の章で一番重要だったポイントを3つ挙げるとしたら何か?」と自分の言葉で説明してみる習慣をつけることです。

「自分のため」より「誰かに教えるため」のほうが学ぶ力が入る現象を「プロテジェ効果」と呼びます。プロテジェとは「教え子」のことです。教え子のために調べようとするから、結果として自分の理解も深まるわけです。教えるためには、重要な情報を選び、順序を整え、相手に伝わる言葉へ置き換えなければなりません。その過程で、知識どうしのつながりが整理され、あいまいな部分も見つけやすくなります。

あるいは、他者に教える前提で知識を組み立て直す「プロテジェ効果」を狙うのも有効です。私たちは教えることによって、学びを深められます。

 経営者やコンサルタントにとって、知識は頭の中に蓄積しているだけでは何の役にも立ちません。重要な会議で論点を整理するとき、顧客の隠れた課題をヒアリングから見抜くとき、意思決定の前提となる事実を検証するときに、必要なフレームワークや事例をパッと取り出せてこそ、初めて仕事の「使える力」となります。

読書の成果を「今月は何冊読んだか」というインプットの量で測るのではなく、「どの考え方を部下に説明できるようになったか」「どの判断に使える武器が増えたか」というアウトプットの質へと転換することが重要です。

科学的に証明された 頭のいい人が習慣にしている 学び方の戦略の書影

やる気を高めるより、行動の始まりを決めておく(環境設計)

科学的な学び方では、「成果は努力の量だけでなく、いつ学び、どこで学び、どう繰り返すかによって大きく変わる」と考えます。 第2の戦略として提示されている「時間と環境を設計する」も見逃せません。 

私たちはつい、「今日はやる気があるから、3時間まとめて勉強しよう」と考えがちです。しかし、学習の成果を左右するのは、必ずしも勉強時間の長さだけではありません。「いつ学ぶか」「どこで学ぶか」「どのように繰り返すか」という学習の設計によって、知識の定着率は大きく変わります。

例えば、一度に長時間勉強するよりも、適切な間隔をあけて復習する「分散学習」のほうが、長期的な記憶の定着に効果的であることが、多くの研究で示されています。学んだことを翌日、数日後、さらに1週間後に思い出す機会を設けることで、知識を忘れにくくすることができます。

学習環境を整えることも重要です。スマートフォンが手元にあるだけで、注意力や認知能力に影響を及ぼす可能性があるという「ブレイン・ドレイン」の研究は、私たちに重要な示唆を与えてくれます。

勉強するときにはスマートフォンを視界の外に置き、通知をオフにする。こうした小さな工夫が、集中しやすい環境をつくることにつながります。

忙しいビジネスパーソンにとって、毎日高いモチベーションを維持することは簡単ではありません。仕事や家庭の事情によって、学習に使える時間も日々変わります。

だからこそ、意志の強さや気合いだけに頼るのではなく、時間と環境を味方につけ、無理なく学び続けられる仕組みをつくる必要があります。

例えば、「最新のAIの知識を学ぶ」という目標を立てるだけでは、日々の忙しさに追われ、学習が後回しになりがちです。しかし、「毎朝、パソコンを立ち上げる前の15分間に、昨日読んだ本の要点をノートに書き出す」と決めれば、具体的な行動に移しやすくなります。 重要なのは、学習する時間と場所を決め、すでに身についている習慣と結びつけることです。

朝のコーヒーを飲みながら本を開く、通勤時間に前日の学びを振り返る、仕事を終える前に新しく得た知識を整理する。こうした行動を繰り返すことで、学習を日常生活の一部に組み込めます。

私自身、この書評ブログを長年にわたって毎日更新してきましたが、その継続を支えているのも、時間と環境を固定するというシンプルな仕組みです。朝に書くと決め、コーヒーを淹れたらパソコンを開き、投稿ページに文章を書き始めます。

毎朝「今日は書こうか、やめようか」と判断する必要がないため、自然に執筆へと移れるのです。 さらに、読んだ本の内容を自分の言葉でまとめ、仕事での経験や新しい知識と結びつけることで、読書が単なる情報収集で終わらなくなります。

インプットした知識をアウトプットする習慣が、理解を深め、実務で活用するための土台になっています。 これは書評に限った話ではありません。語学や経営の学び直しなど、さまざまな分野に応用できます。

大切なのは、最初から完璧を目指さず、小さな行動を毎日の生活に組み込むことです。 学び続ける人と途中で挫折する人の違いは、意志の強さだけでは説明できません。

学習を継続できる時間、環境、行動の仕組みをつくれているかどうかも重要です。学びを気分やモチベーションに左右される活動から、自然に続けられる習慣へと変えていく。それが、変化の激しい時代に知識を更新し続けるための現実的な戦略なのです。

実生活においては、知識の結晶化を習慣にして「衰えにくい力」を意識的に育てることが肝要になります。 新しく学んだことを、過去の経験や既存の知識と結びつけるほど、結晶性知能は厚みを増します。若いころのような速さだけを追うのではなく、「すでに知っていることをどう活かすか」という視点を持つことが、年齢を強みに変える学び方です。

私が日頃、多くのビジネスパーソンと接する中で頻繁に耳にするのが、「もう年だから、新しいことを覚えるのは厳しい」という諦めの言葉です。しかし、本書はこの「もう遅いのでは」という思い込みに対して、明確な科学的エビデンスをもって反論しています。 

確かに、高齢になると分析的推論といった新規の問題解決能力(流動性知能)は低下する傾向にあります。しかし、問題解決の焦点は年齢とともに「新しい情報処理」から「蓄積された知識」へとシフトします。長年の経験を通じて獲得された知識やスキル、すなわち「結晶性知能」は、なんと60歳ごろまで伸び続け、その後の下がり方もごく緩やかであることがわかっています。 

その場で新しく考える力に比べると、経験に裏打ちされた知識は失われにくいのです。例えば、頻繁にクロスワードパズルを解いている人々の解答能力は、知識が重要になるため、高齢になるほど向上するというデータすらあります。

年齢を理由に学ぶことを諦める必要は全くありません。むしろ、ミドル〜シニア層だからこそ、過去の膨大な経験(結晶性知能)と新しい知識を「構造で考える」ことで結びつけ、より深い洞察や質の高い意思決定を生み出すことができるのです。大人の学び直し(リスキリング)において、これほど勇気を与えてくれる事実はないでしょう。

科学的に証明された 頭のいい人が習慣にしている 学び方の戦略の書影

AI時代にこそ求められる「人間本来の学び」とは

AIを活用する際に重要なのは、「何を任せ、何を自分で判断するか」を事前に決めておくことです。

生成AIが進化する時代だからこそ、私たちには知識を増やすだけでなく、それを使って考え、新しい価値を生み出す力が求められています。

本書は、AI時代に必要な学習のあり方を考えるうえでも、多くの示唆を与えてくれます。 生成AIは、情報収集や要約、比較、アイデアの整理など、これまで人間が時間をかけていた作業を短時間で処理できます。その結果、知識を大量に蓄えていることだけでは、以前ほど差別化できなくなりました。

これから重要になるのは、得られた情報を正しく理解し、異なる知識を結びつけ、現実の課題解決に活用する能力です。 そのためには、AIを単なる効率化の道具ではなく、自分の思考を深めるパートナーとして活用することが有効です。

例えば、本を読んだ後、すぐにAIに要約を求めるのではなく、まず自分の言葉で内容を整理します。そのうえで、「この説明に不足している論点は何か」「著者の主張が成立しない条件は何か」「この考え方を経営の現場に応用する際の課題は何か」とAIに問いかけます。 こうした対話によって、自分の理解の曖昧さや思考の偏りに気づくことができます。

これは、本書が重視する「検索練習」や、学習に適切な認知的負荷をかけるという考え方ともつながります。AIから答えを受け取るだけでなく、自分で考え、思い出し、説明し直す過程が、知識を使える力へと変えていくのです。

ただし、AIの回答が常に正しいわけではありません。事実関係の確認や、個別の事情を踏まえた判断、倫理的な意思決定については、人間による検証が欠かせません。AIの出力を批判的に吟味できるだけの知識と判断力を身につけることが、これまで以上に重要になります。

さらに注目したいのが、AI時代における創造性の役割です。 認知科学者のマーガレット・ボーデンは、創造性を「組み合わせ的創造性」「探索的創造性」「変形的創造性」の3つに分類しています。既存のアイデアを新しく組み合わせること、一定のルールの中で可能性を探索すること、そして既存のルールや前提そのものを変えることです。

生成AIは、膨大な情報をもとにアイデアを組み合わせたり、さまざまな可能性を探索したりする作業で大きな力を発揮します。さらに、従来の発想を超える提案を生み出す場合もあります。そのため、変形的創造性を人間だけの能力と断定することは適切ではありません。

しかし、何を解決すべき課題として設定するのか、どのアイデアに価値を認めるのか、どのような未来を実現したいのかという判断には、人間の経験や価値観が深く関わります。

例えば、スタートアップの新規事業を考える際、AIは市場分析や競合比較、事業アイデアの創出を支援してくれます。しかし、顧客との対話から感じた違和感や、現場で目にした非合理な慣習を出発点に、そもそもの課題設定を見直すことは、経営者や事業開発担当者にとって重要な仕事です。

優れたアイデアは、必ずしも論理的な分析だけから生まれるわけではありません。読書で得た知識が、何気ない会話や散歩中の気づきと結びつき、新しい発想につながることもあります。異なる経験や情報を蓄積し、それらを自由に結びつける余地を持つことが、創造性を育てるうえで重要なのです。

だからこそ、AIが普及するほど、人間は学ぶことをやめてはいけません。むしろ、読書や対話、実体験を通じて知識を増やし、自分なりの問いを持ち続ける必要があります。知識がなければ、AIの回答の問題点を見抜くことも、新しい組み合わせの可能性に気づくことも難しくなるからです。

これからの学習では、知識の獲得、理解の深化、実践、振り返りを繰り返すことが重要になります。AIを活用すれば、このプロセスを効率化しながら、自分一人では気づかなかった視点を取り入れることもできます。 AI時代に求められるのは、AIに思考を任せることではなく、AIを活用して自分の思考の質を高めることです。

本書が教えてくれる科学的な学習法は、そのための基盤になります。知識を記憶するだけでなく、問いを立て、他者と対話し、実践を通じて理解を更新していく。こうした学習習慣を持つ人ほど、技術の変化に柔軟に対応し、新たな価値を生み出す可能性を広げられるのです。

 コンサルタント 徳本昌大のView

独立してコンサルタントや社外取締役として活動する中で、私が常に意識してきたのは、限られた時間で質の高い知識を吸収し、それをクライアントへの価値に変えることです。どれほど多くの本を読み、情報を集めても、実際の経営判断や課題解決に活用できなければ、学習の成果は限定的です。

特に、生成AIの普及によって情報収集や分析の効率が飛躍的に高まった現在、重要なのはインプットの量ではなく、得られた知識をどのように理解し、組み合わせ、実践するかという点にあります。

本書が提示する「時間と環境を設計する」「身体のコンディションを整える」という考え方は、私自身が長年実践してきた習慣とも重なります。

私は月の半分ほどを出張に充てています。新幹線での移動やホテルで過ごす時間も多く、決まったオフィスだけで仕事をするわけではありません。しかし、場所が変わることを学習の障害とは考えていません。むしろ、移動時間や滞在先の環境を活用することで、読書や執筆、思考を深める機会をつくっています。

例えば、新幹線では読書と情報整理に集中し、ホテルでは翌日の仕事に必要な資料を確認するなど、場所と作業をある程度結びつけています。あらかじめ何をするか決めておけば、その場で仕事を選ぶ必要がなくなり、限られた時間を有効に使えます。

大切なのは、まとまった時間ができるのを待つのではなく、日常生活の中に学習の機会を組み込むことです。15分の読書でも、学んだ内容を振り返り、自分の言葉で整理すれば、次の仕事に役立つ知識へと変えることができます。

また、知的生産の質を維持するためには、身体のコンディションも無視できません。私は毎朝の瞑想やストレッチ、ウォーキングなどを習慣にしています。これらは健康維持だけを目的としたものではありません。心身の状態を整え、落ち着いて思考し、仕事に集中するための時間でもあります。

学習の効率を高めようとすると、どうしても勉強方法や時間管理に目が向きがちです。しかし、睡眠不足や疲労が蓄積した状態では、集中力や判断力を十分に発揮することが難しくなります。

学び続けるためには、勉強時間を増やすだけでなく、休息や生活習慣も含めて考える必要があります。 さらに、私が重視しているのが、学んだ知識を他者に伝えることです。

毎月開催している「イノベーション読書会」は、そのための貴重な機会になっています。課題図書を読み、参加者に内容を紹介し、議論を交わす過程では、単に本を読むときとは異なる思考が求められます。 著者の主張を正確に理解することに加え、重要な論点を整理し、具体的な事例を交えながら説明しなければなりません。

参加者から予想していなかった質問を受けることもあります。そうした対話を通じて、自分の理解が不十分だった部分に気づき、新しい視点を得ることができます。 これは、他者に教えることを意識すると学習が深まりやすくなる「プロテジェ効果」とも関連する実践です。

私にとって読書会は、知識を共有するだけの場ではありません。異なる経験や専門性を持つ人々との対話を通じて、本から得た知識を再解釈し、実務で使える形に整理する機会でもあります。

そこで生まれた気づきが、スタートアップの事業戦略や組織づくりについて考える際に役立つことも少なくありません。 こうした経験から実感しているのは、学習とは知識を蓄積して終わるものではないということです。

インプットした情報を自分の言葉で説明し、他者の意見によって修正し、実際の仕事で試す。この循環を繰り返すことで、知識は少しずつ実践的な判断力へと変わっていきます。

本書の価値は、学習能力を生まれ持った才能だけで決まるものと捉えず、日々の行動や環境の工夫によって改善できる可能性を示している点にあります。 「年齢を重ねたから覚えられない」「自分には勉強の才能がない」と決めつける必要はありません。年齢による認知機能の変化には個人差がありますが、学習方法を見直し、新しい知識を身につけることは、何歳からでも意味のある取り組みです。

最初から多くの方法を実践する必要もありません。まずは本書で紹介されている100のメソッドから、自分の課題に合ったものを一つ選んでみることです。朝の15分を読書に使う、翌日に学習内容を思い出す、学んだことを誰かに説明する。小さな行動でも、継続することで学習の質を変えるきっかけになります。

これからの時代に必要なのは、知識を持っていることだけではなく、新しい知識を学び続け、それを実際の価値に変える能力です。

時間、環境、身体、そして他者との対話を意識的に設計することで、学習は特別な努力を必要とする活動から、日々の仕事と生活を支える習慣へと変わります。

学び方を変えることは、働き方や意思決定の質を見直すことにもつながります。変化の激しいAI時代だからこそ、自分に合った学習の仕組みを持ち、知識を更新し続けることが、長期的な競争力を高める重要な戦略になるのです。 冒頭に読者の悩みを加える学び方の三要素を整理する出張エピソードを短くする

FAQ

Q1. もう60代で記憶力に自信がありません。今からでもこの本の手法は役立ちますか?

A1. はい、大いに役立ちます。本書のデータが示す通り、長年の経験で培われた「結晶性知能」は60代まで伸び続け、その後も急激には衰えません。年齢を言い訳にせず、過去の経験と新しい知識を結びつける大人の戦略的学習法を身につけることで、確かな成果を得られます。 

Q2. 毎日忙しくて、まとまった勉強時間が取れません。どうすればよいでしょうか?

A2. 本書が推奨する「分散学習」を取り入れてみてください。休日に気合いを入れて3時間まとめて勉強するよりも、平日の通勤時間や昼休みなどに時間を細かく区切って復習する方が、記憶の定着率は高まります。時間と環境を戦略的に設計することが鍵です。 

Q3. 本を読んでも、仕事でどう活かせばいいか分からず、すぐに忘れてしまいます。

A3. それは「読むだけの受け身の学習」になっていることが原因です。読了後に、その本の内容を部下に説明するつもりで要点を3つ書き出す「プロテジェ効果」や、本を閉じて思い出す「検索練習」を行ってみてください。脳にアウトプットの負荷をかけることで、実務で「使える力」へと変わります。 

関連記事

【書評】心理学×脳科学×行動経済学で 科学的に証明された 悩まない人の習慣 (堀田秀吾)
スマートフォンや生成AIの普及によって情報や選択肢が増える一方、私たちは日々の小さな判断に追われ、疲弊しやすくなっています。堀田秀吾氏の『科学的に証明された 悩まない人の習慣』は、悩みを減らすために、意思決定を仕組み化する重要性を説いています。大切なのは、すべてを完璧に判断することではなく、不要な選択を減らし、重要なことに集中することです。心理学や脳科学の知見から、AI時代に必要な思考と行動の習慣を学べる一冊です。
→ リンクはこちらから

【書評】最先端研究でわかった 頭のいい人がやっている言語化の習慣(堀田秀吾)
自分の感情や考えを言葉にする「言語化」は、自己理解を深め、よりよい意思決定につなげる重要な習慣です。言葉は単なる説明の道具ではなく、物事の捉え方や行動を変える力を持っています。ジャーナリングや内省を通じて感情や直感を言語化することで、自分の価値観が明確になり、新たな可能性にも気づけます。「事実はひとつ、解釈は無限」。同じ出来事でも、どう意味づけるかによって、その後の行動や人生の質は大きく変わるのです。
→ リンクはこちらから

【書評】「頭がいい」とは何か (勅使川原真衣)
勅使川原真衣氏の『「頭がいい」とは何か』は、個人の能力だけで人を評価する能力主義に疑問を投げかけます。仕事の成果は本人の資質や努力だけでなく、職場環境や人間関係、役割分担にも左右されます。優秀な人材を集めるだけでは、強い組織は生まれません。著者は、能力の優劣ではなく、一人ひとりの持ち味を認める「いい味出てる」という視点を提案します。多様な個性を生かし、互いの弱みを補い合える組織づくりの重要性を説いています。
→ リンクはこちらから

科学的に証明された 頭のいい人が習慣にしている 学び方の戦略の書影

最強Appleフレームワーク


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

Ewilジャパン取締役COO
Quants株式会社社外取締役
Mamasan&Company 株式会社社外取締役
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
徳本昌大 Amazonページ >
 

徳本昌大をフォローする
ブログ
スポンサーリンク
徳本昌大をフォローする
Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました