城田真琴氏のデス・バイ・アマゾン テクノロジーが変える流通の未来の書評

アマゾンはアマゾン・ゴーの採算を度外視している可能性もある。つまり、店内における顧客の行動データが捕捉できればそれでよいという考えである。店舗に入店した顧客は事前にアマゾンのアカウントと紐づけられ、店内における一挙一動は無数に設置されたカメラですべてトラッキングされている。このため、店内での足取りや表情、視線などに加え、「一度、棚から取り出したものの、結局は買わなかった」といった商品の情報も把握できる。(城田真琴)

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出店を強めるアマゾン・ゴー

アマゾン・ゴーがアメリカで開店してから、無人店舗の動きが加速しています。お客様の待ち時間を無くしたレジなし店舗は、現在シアトルを中心に4店舗まで増えています。アマゾン・ゴーの店舗の天井にはカメラが、商品棚にはセンサーが設置されており、使用機器が数百基使われていると言います。IT機器が捕捉した顧客や商品の動きを、コンピュータビジョンやディープラーニング・アルゴリズムなどの最新の技術で把握し、レジを無くすことによって、顧客の待ち時間を減らしたのです。このアマゾン・ゴーを1店舗をオープンさせるには、数百万ドルが必要ともいわれていますが、コストを気にかけずアマゾンは積極的に動いています。

城田真琴氏もデス・バイ・アマゾン テクノロジーが変える流通の未来の中で、アマゾン・ゴーは顧客の行動特性や商品情報をつかむことが目的の実験店舗の意味合いが強いと紹介していましたが、早くも実験フェーズが終わり、アマゾンは多店舗展開に乗り出すようです。一昨日の19日にブルームバーグがアマゾン・ゴーの多店舗化のニュースを配信しました。アマゾンはアマゾン・ゴーを2021年までに3千店に急拡大させ、3年後には一大チェーンにする模様です。

 

アマゾンの強みは何なのか?

eコマースでは、「ある商品のページを何度も訪問しているのに買わなかった」「一度カートに入れたのに、最終的には購入に至らなかった」といったデー夕収集が当たり前のように行われている。一方、実店舗においては、一切行われてこなかった。実店舗でもこうしたデータが収集できれば、その商品の購入阻害要因(価格、デザインなど)を探る上で大きなヒントとなりうる。同時に、顧客一人ひとりのアマゾン・ゴーへの来店頻度、滞在時間(レシートに明記されている)、購入履歴などの情報も正確に把握でき一るため、eコマースでの購入履歴も合わせると、顧客のオンライン/オフラインの購買行動が見事に丸裸になる。今後、データが蓄積されていけば、eコマース同様の商品のレコメンデーションや一般のスーパーではなしえない「一人ひとりに異なる値引き」なども行われる可能性がある。

アマゾンはサイトに訪れる顧客の膨大な情報を把握しています。顧客の特性はアマゾンによって、丸裸にされていますが、アマゾン・ゴーが多店舗展開されることで、ますます拍車がかかりそうです。実店舗での顧客行動も明らかになり、サイトの情報と統合されていきます。アマゾン・ゴーの買い物情報も加わることで、商品の購入阻害要因が明確になり、アマゾンのレコメンドの精度が高まります。正確な顧客情報を持つことで、アマゾンが競合他者を抑えていくことが予測できます。

ただでさえ、アマゾンは他の小売にはないAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)という稼ぎ頭を持っています。売上額では10%に満たないAWSが、実に43億ドルもの営業利益を叩き出していのです。売上高では全体の10%に満たないクラウド事業が全営業利益の7割以上を稼いでおり、様々な実験やMAをするための原資になっているのです。

日本のコンビニはランチタイムの待ち時間が問題になっていますが、アメリカのアマゾン・ゴーは待ち時間がなく、回転率が高くなっています。確かに膨大な初期コストは必要ですが、人件費を減らせるというメリットがあります。

地球上でもっともお客様を大切にする企業であること
地球上で求められるあらゆるものを探し、発見でき、購入できる場を提供する
常にお客様からスタートし、お客様の立場でいろんなことを考える

アマゾンのミッションを見れば、明快ですが、アマゾンは徹底した顧客志向に基づいて、ビジネスを展開しています。顧客が喜ぶサービスが見つかれば、そこに投資を厭わず、少しくらいの赤字を気にしません。この顧客思考がアマゾンの強みなのです。

アマゾン・ゴーが日本に進出する可能性はゼロではありません。アメリカで事業が軌道に乗れば、ベゾスは日本でもアマゾン・ゴーを展開するはずです。莫大なAWSの利益を使って、アマゾンが日本を攻めに来た時にセブンやローソンはどのように迎え撃つのでしょうか?小売業VSアマゾンの戦いから、ますます目が離せなくなってきました。

まとめ

アマゾン・ゴーの多店舗展開が発表になりましたが、これはやがて日本の小売業を脅かすはずです。AWSの利益を使って、サイトとアマゾン・ゴーの顧客データや商品データを活用することで、アマゾンはますます強くなっていくはずです。その時、日本の小売業はアマゾンとどのように戦うのでしょうか?

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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