モバイルに関してもやはり、アマゾンが一歩先んじている。アメリカのメディア分析会社が2017年に実施した調査によると、ミレニアル世代の約半数が、スマートフォンのホーム画面からアマゾンにアクセスできるよう設定しているという。さらに、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツの消費者を対象にした2017年の調査では、以下のことがわかった。(ナタリー・バーグ&ミヤ・ナイツ)
Technology photo created by freepik – www.freepik.com
ROBOが顧客の買い物スタイルを変え始めた!
ナタリー・バーグ&ミヤ・ナイツのamazon「帝国」との共存の書評を続けます。アマゾンはPCだけでなく、スマホというプラットフォームでも存在感を増しています。 多くの消費者は買い物の際に、スマホでアマゾン検索を行っていることが明らかになりました。
■消費者の72%が、実際に購入する前に、アマゾンを利用して商品情報を収集。
■消費者の26%が、店舗で商品を購入する際に、事前にアマゾンで価格と情報をチェック。
アマゾンのオンラインにおける優位性は、買い物客がどこでリサーチするかにかかわらず、いかなるカスタマージャーニーのリサーチ段階にも、甚大な影響をおよぼし続けることです。この行為が実店舗形態のライバル小売店から売上を奪う可能性が高まっています。
2017年のアメリカの調査によると消費者の3分の2が実店舗での買い物、あるいはオンラインとの組み合わせを好んでいることがわかりました。多くの小売業にとって、ROBO(オンラインでリサーチしてオフラインで購入する)対策を行うことが求められてます。
2018年に実店舗で商品を買った消費者の半数近く(45%)が、事前にオンラインでリサーチしたことがわかっています。アメリカのバザーボイスが実施した同様の調査から、ROBOに最も大きな影響を受けた商品力テゴリーは、電化製品(59%)、健康・美容・フィットネス(58%)、おもちゃ・ゲーム(53%)であることが明らかになりました。、電子機器(41%)や乳幼児用品(36%)でも効果的です。
サーチ段階ではアマゾンに劣る競合小売業も、ROBOを好む顧客傾向のおかげで、それを補えるだけのセールスを実店舗で上げられているといえるかもしれません。 ROBOのサーチ段階で小売業者がアマゾンに勝利するためには、価格、品揃え、商品情報、店舗の場所のいずれかでアマゾンの優位に立つ必要があります。
価格については、オンラインの巨人であるアマゾンに勝利することはとても大変なことです。アマゾンはROBOのトレンドに対応し、2010年にバーコードスキャンアプリの「プライスチェッカー」を導入しました。さらにその年の終わりには、1日に購入した商品3点にそれぞれ5%(上限5ドル)、合計15ドルの1回限定の割引制度を適用し、顧客のアプリ使用を奨励しました。
また、アマゾンが最も競争力の高い価格で商品を提供できるよう、実店舗が広告に出している価格と店舗情報を報告するよう利用客に呼びかけました。アマゾンがカスタマーレビューや評価の価値にいち早く目をつけ、商品情報の提供に力を注いだことも、アマゾンのオフラインへの移行によい影響を及ぼしました。
さきほどのバザーボイスが行った調査によると、実店舗で商品を購入する前に、オンラインでカスタマーレビューを読むという消費者は、2018年で前年比15%増の45%になっています。アマゾンは商品が検索ランキングの上位になるよう、商品やマーケットプレイスの売り手に関するカスタマーレビューを上手に活用してきました。テクノロジーの力と顧客の評価によって、アマゾンは購入時の顧客の行動を変えてしまったのです。
しかし、競合にはまだ、オンラインレビューによって、アマゾンに勝てる可能性があります。あるeコマースシステムのプロバイダによると、1つの商品に50件以上のレビューがつけば、オンラインのコンバージョン率が4.6%上昇し、顧客がレビューを読むとさらに58%アップすることがわかりました。
2015年、アマゾンはシアトルにアマゾン・ブックスをオープンし、顧客による評価とレビューを前面に押し出したのも意味があります。アマゾン・ブックスでは、書籍販売の業界用語で「シェルフトーカー」と呼ばれるタグをどの本にも付し、バーコードとともに、アマゾン・ドット・コムのカスタマーレビューと、星の数を表示しています。
商品棚には値札がなく、価格などの情報を得るには、顧客がアマゾン専用アプリでバーコードをスキャンするか、あるいは携帯用デバイスを持った店員にスキャンしてもらうことになります。書棚同士が近すぎるレイアウトや、アルファベット順を無視した非合理な陳列方法はアマゾン独自の物です。背表紙ではなく表紙を見せて置く陳列方法が話題になりました。アマゾン・ブックスは、書店としてよりもショーケースとして役割を担っていたのです。2017年末にアマゾン・ブックスの実店舗の売上がはじめて発表されると、ほとんど利益がないことが明らかになりました。
マーケティングをより広義で捉えれば、アマゾン・ブックスの目的は必ずしも利益を上げることではなく、オンラインでの経験をどのようにオフラインに転換できるかを試験し、フライホイールに実店舗という物理的なスポークを構築することだったことは容易に理解できる。その点で、モバイルが非常に重要な役割を果たしていることもわかるだろう。
店舗内にいる顧客に、さまざまなアマゾン商品を閲覧できる機会を提供し、それと同時に、アマゾンサイトとプライムアプリのユーザーの閲覧や購入履歴を実店舗への来店に結びつけることができます。アマゾンは、カスタマージャーニーの全体像が見えるようになり、オンラインとオフラインの両方の購入ファクターを正確に把握することができるようになったのです。
アマゾンは顧客の購入履歴や好みから、それぞれに合ったオファーやレコメンドをオンラインで提供してきました。今後は、同様に実店舗でも、顧客が実際にどのような買い物をするかに基づいて商品を提示し、また価格や商品情報、販促の観点からも、それぞれの顧客に合わせたオファーを提示することで顧客満足を高めようとしています。
|
ショールーミングでも存在感を増すアマゾン
アマゾンの目標は、顧客が自ら個人的な情報を提供する ことで成り立つ、物理的な小売環境を創造することだった。顧客と共有するデータを繰り返し利用することで、それぞれに合った顧客体験を提供し、どの段階でもカスタマージャーニーを補完することができる。顧客が保有するデバイス内のアプリに価格などの情報を送ることができれば、それぞれの顧客に合った提案、推奨、価格をリアルタイムで提供できるようにもなる。顧客がアマゾンの店舗にいようが、ライバルの店舗にいようが、コンバージョンと取引を最大化する潜在性を手に入れることができるのだ。
アマゾンはモバイルを通じて、それらをアマゾン・ブックスの店舗環境に取り込み、顧客体験のパーソナライゼーションを強化してきました。また、顧客がオンラインのショッピング活動で生み出したデータは、実店舗のあらゆる側面(品揃えから販売計画、価格設定から販売促進活動まで)でも活かされています。アマゾンはオフライン事業で得られた結果をオンライン事業の活動に結びつけ、またその逆も実践し、常に修正と改善を繰 り返すという好循環を生み出しています。
ROBOを潜在的に促進するには、位置情報による検索や「ニアミー(現在地から近いところ)」検索が、実店舗型小売が自由に利用できる強力なツールとなります。アマゾンが誕生する以前、立地は常にレリバンシー(自分ごと化)を左右してきました。世界の大手小売業者は広範にわたり、ときには密集した店舗ネットワークを構築しているのはそれが理由です。しかし、外出先でのニアミー検索が顧客行動を変え始めたのです。
ニアミー検索では、場所を探すことと同じくらいに、人と物をタイミングよくつなぐことが重要になっています。グーグルは2017年に、「買える」あるいは「買い物」という言葉のバリアントを含む「ニアミー」検索が、2年間で500%増加したと発表しました。買い物客が外出先での今すぐの課題を解決するために、検索を活用していることがわかります。
この検索状況を考えると、実店舗にデジタルを確実に導入し、在庫が必ず見つかるようにすることが、オンラインとの戦いでは必須になります。グーグルは、2018年、顧客が近くにある店舗の在庫を検索できる「シー・ホワット・イン・ストア(SWIS)」という新しいツールを発表しました。買い物客はグーグルのメインの検索バーかグーグルマップを使い、特定の商品の在庫を保有する店舗、あるいは、特定の店のすべての在庫状況を調べることができるようになったのです。ただし、こうしたローカル在庫広告に店名を表示させるには、お店は広告料金を支払う必要があります。
eコマースが強いのは、人々がどこに行けば欲しいものが見つかるかわからないことが理由です。グーグルはその不利な状況を打破する方法を考え、アマゾンとの広告ビジネスでも対抗しています。近くの店舗に欲しいものがあるとわかれば、あるいは配達を待たずに近くの店で受け取れると知っていれば、顧客はオンラインで注文しようと考えないかもしれません。
ローカル在庫広告の取り組みがスタートしても、商品検索に関してはアマゾンの優勢は変わらないことがわかっています。消費者のほぼ半数(49%)が商品をオンラインで探す際にアマゾンを使っています。それに続くのが検索エンジン36%、小売事業者が3位で15%となっています。
アマゾンに勝つためには、現状の消費者の動機をチェックする必要があります。買い物体験やナビゲーションにフォーカスすることで、アマゾン検索に勝てるかもしれません。(下図参照)
テクノロジー・プロバイダのスライスは画像認識の可能性にトライしています。彼らはメイシーズ、トミーヒルフィガーなど、アメリカやイギリスの多数の小売に、ビジュアル検索エンジンの画像認識技術を供給しています。スライスは同社の画像認識の品質が、イニシャル点の分類機能と検知機能を構築しており、アマゾンやグーグルの類似製品より優れているとしています。
小売が自社のeコマースサイトやモバイルアプリの検索に、スライスの技術を組み込めば、平均受注数が20%、コンバージョン率は60%上昇するとスライスは言います。ビジュアル検索のような機能は、視覚的な特徴にしたがって類似する商品を提示し、店舗の内外にかかわらずオフラインとオンラインの ギャップを埋め、顧客体験を高める手助けとなりそうです。
マイクロソフトのサーチエンジン「ビング」もビジュアル検索機能を備え、ピンタレストも2017年に「レンズ」をリリースしています。今後は、ショッピングにおけるモバイルの利用が主流になっています。モバイルでのニアミー検索や画像検索が、店舗内にいる買い物客の購入決定にも非常に大きな影響力を持つようになったのです。
ROBOと同様、「ショールーミング」も買い物プロセスにおける閲覧(検索)と購入段階に関連します。ROBOがオンラインで商品を閲覧するのに対し、「ショールーミング」は実店舗で閲覧します。つまり「ショールーミング」では、店舗が販売チャンスを失ってしまうのです。ショールーミングでもアマゾンは存在感を増しています。
2013年の時点で、アマゾンは実にグーグルの2倍の頻度でショールーミングに使用されていました。その当時、スマートフォン保有者の58%(アメリカの消費者の3分の1)が定期的にショールーミングを行っていたこともわかっています。そのうちの56%は、店舗内にいる段階でモバイル機器から商品を購入しています。また、ショールーミングをする買い物客のうち46%が、アマゾン・プライムの会員だったという驚くべき数字が出ています。
外出先での検索がオンラインとオフラインの買い物のスタイルを変えています。顧客が買い物の主導権を握った今顧客満足を高めるアマゾンの動きから目が話せません。ROBOやショールーミングが当たり前になった今、アマゾンのテクノロジーの進化の動きをチェックし、対策を練らない限り、競合は生き残れなくなっています。
まとめ
ROBO(オンラインでリサーチしてオフラインで購入する)やショールミングといった顧客の購買行動の変化が小売業の売上を左右するようになりました。オンラインとオフラインをマージし、テクノロジーを進化させているアマゾンの動きを注視し、対策を練らないとアマゾンに売上を奪われてしまいます。
参考図書 ナタリー・バーグ&ミヤ・ナイツのamazon「帝国」との共存
ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。
|
コメント