ネットフリックスが成功した理由。人を依存症にさせるシンプルな方法。

人間は完了した体験よりも、完了していない体験のほうに、強く心を奪われる。これが「ツァイガルニク効果」と呼ばれる現象だ。 (アダム・オルター)


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ネットフリックスが視聴者を虜にしている理由

アダム・オルター僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた書評を続けます。人は完了していない体験に心を奪われますが、このツァイガルニク効果をマーケティングに取り入れ、成功しているのがネットフリックスです。

ネットフリックスは2012年8月に、「自動再生(post play)」と呼ぶ新機能を導入しました。この機能を使うと、たとえばドラマ『ブレイキング・バッド』全13話が、いわば13時間の1本の映画になります。第1話が終わると自動的に次のエピソードがロードされ、5秒後には再生が始まるため、人は途中でやめられなくなります。

1つのエピソードが手に汗握るクリフハンガー(劇中で盛り上がる場面)で終わったならば、そのまま待っていれば次の話が始まり、クリフハンガーが解消されるのです。自動再生(post play)が導入される前は、次のエピソードを観るという判断を能動的に下す必要がありましたが、今は、観ないという判断をしなければなりません。このささいな変更によって、ネットフリックスは視聴時間を伸ばしています。

番組を視聴した多くのユーザーは、何もしないことを選び、気づいたら『ブレイキング・バッド』を8話連続で観つづけていたのです。ドラマなどを何話もぶっとおしで観るビンジ・ウォッチングは、この自動再生機能の導入後エスカレートしています。グーグル・トレンドで確認すると、アメリカで「ビンジ・ウォッチング」という言葉の検索頻度は、2013年1月(初めてその言葉が検索された時期)から、2015年4月まで上昇していました。

ネットフリックスも2013年11月に市場調査会社を使って、アメリカの成人3000人を対象に聞き取り調査を行いました。その結果、回答者の61%は、ある程度のビンジ・ウォッチングをしていると答えています。2015年10月から2016年5月にかけて、全世界190か国の視聴デー夕を調べた際にも、同様の傾向が確認されました。こうした視聴スタイルで観る人は、番組のファーストシーズンを4日間から6日間ほどで観終わります。通常、連続テレビ番組の1シーズンは数か月にわたって放送されるものだが、それを1週間以内、1日平均2~2時間半というスピードで観終えてしまうのです。

クリフハンガーを活用し、停止規則をなくすことでネットフリックスは視聴者の時間を奪っているのです。1話の終わりから次の話までを区切る壁がなければ、やめる理由がなくなり、人はネットフリックスに依存するのです。

 

臓器提供の数字をあげるためのたった一つの設問

余計な行動をさせないことで、臓器提供の数字をあげることも可能になります。多くの国では、運転免許を取得するタイミングで、臓器ドナーになる意思を問われます。心理学者エリック・ジョンソンとダン・ゴールドスタインは、これに対する答えがヨーロッパ各国で大幅に違うことに着目しました。

たとえば、デンマークにおける臓器提供の同意率は4%、スウエーデンは86%、ドイツは12%。オーストリアは100%になっています。オランダは28%、ベルギーは98%と隣国で文化が近い国でも大きな差が出ています。特にオランダでは臓器移植に関する大々的な啓蒙キャンペーンが行われたにもかかわらず、同意する人数は増加しませんでした。

文化も教育も関係ないのだとしたら、ある国では臓器を提供しようという人が多く、別の国ではしたくない人が多くなるのは、いったい何が要因になっているのでしょうか?その答えは、設問の仕方における小さな違いにあったのです。一部の国では、運転免許取得に伴い、次の問いに了承のしるしをつけるよう求めていました。

臓器を提供してもよい場合は、ここにチェックしてください。□

四角いマスにチェックを入れるなど、たいした面倒には思えませんが、自分が死んだときに臓器がどう使われるか決断しようとしている人間にとって、ほんのわずかな面倒であっても、それは大きなハードルになるのです。やすやすと答えられる質問ではないので、多くの人は、マスにチェックを入れないという形で小さな抵抗を示し、とりあえず何も変わらぬ人生を続けようとするのです。

デンマーク、ドイツ、オランダなど、同意率の低い国々では、この設問で臓器移植の意思表示を求めていました。一方、スウェーデン、オーストリア、ベルギーといった国々では長年、次のような設問で臓器提供の意思を確認しています。

臓器を提供したくない場合は、ここにチェックしてください。□

違いは、デフォルトで臓器提供をすることになっている点だけです。ドナーリストから自分の名前を外したい場合だけ、マスにチェックを入れなければならないのです。回答者にとって難しい決断であることは変わりありませんが、面倒な行動を省き、余計な思考をさせないことで、臓器の提供率を高めているのです。

まとめ

面倒な行動を省くだけで、人の習慣を簡単に変えられます。ネットフリックスは、自動再生機能(post play)を提供することで、人の停止規則をなくすことに成功し、視聴時間を伸ばしました。臓器提供もチェックボックスの仕掛けを変えるだけで、数字をアップできます。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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