行動嗜癖に対するアプローチは2通りある。排除するか、活用するかだ。
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行動嗜癖をゲーミフィケーションで改善しよう!
アダム・オルターの僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかたの書評を続けます。 行動嗜癖には良い面もあれば、悪い行動嗜癖は排除し、害のある行動をよい行動に差し向けていくこようにすることで、人生を改善できます。自分の悪い習慣を見直し、良い習慣に置き換えるようにしましょう。
人間のもつ気質こそが、私たちをスマートフォンやタブレットやビデオゲームの奴隷にしているのだが、同じ気質を逆手にとって、食生活を改善する、運動量を増やす、効率よく働く、他人に親切にする、お金を節約するといったよい行動を促していくことができる。実際のところ、行動嗜癖とよい習慣の差は紙一重だ。
アップルウォッチやフィットビットは極端な使い方をすると運動への依存や摂食障害をもたらしますが、これらのデバイスのおかげでぐうたら生活を改めて運動を始めることもできるのです。何かをしたいという動機が過剰に強まることが、依存症を引き起こします。すでに運動へのモチベーションが強い場合は生活を犠牲にして追求することになりかねませんが、あなたが運動嫌いのカウチポテト族だとしたら、良い習慣を身につけるきっかけになります。
そもそも人類の行動には膨大な改善の余地があります。 たとえば先進国の全人口のうち60%は体重過多または肥満に悩んでいます。アメリ力人に限定すれば67%、ニュージ⊥フンド人は66%、ノルウエー人は65%、イギリス人とドイツ人とオーストラリア人は61%が体重過多という状況です。
また、アメリカの教育現場では、小学校から四年制大学まで、すべての教育レベルで卒業率が下降しています。全米公共政策・高等教育センターの試算によると、この卒業率下落は、今後15年の平均個人所得の減少につながります。
貯金の傾向を見ても、アメリ力人の平均貯金額は世帯年収のたった3%でしかありません。デンマーク、スペイン、フィンランド、日本、イタリアはさらに少なくなっています。長寿が当たり前になることで、2000年以降に先進国で誕生した子どもの半分は100歳以上まで長生きすると言われていますが、長寿によって貯金が底をつきます。
誰でもーつや2つは変えたい行動があるものだ。浪費がちで貯金できない癖を改めたい、勤務時間の9割をメールチエックに費やしている毎日を変えたい、食べすぎるのをやめたい、もっと運動する習慣をつけたい。どんな変化にも努力が必要だが、残念なことに意志の力は限られている。
悪い習慣を変えるときには、意志の力が求められていますが、これには限りがあります。これを補完するのが、ゲーミフィケーション(ゲーム化)です。ゲーミフィケーションとは、ゲームではない体験をゲームにしてしまうことを指します。
コンピュータープログラマーのニック・ペリングがこの言葉を生み出しましたが、彼はゲームのメカニズムでどんな体験でも魅力を高められると考えました。その後、2010年にグーグルとベンチャー・キャピタル大手数社がゲーミフィケーションというコンセプトに注目したために、日の目を見たのです。「体験そのものを報酬にすべき」という発想によって、遊びながら良い習慣を身につけられるようになったのです。
食糧支援団体に寄付する意欲がなくても、単語を覚える気がなくても、フリーライス・ドットコムで英語を学ぶ体験を楽しんでいるうちに、いつのまにか単語を暗記し、いつのまにかコメを寄付できます。ゲーミフィケーションを活用し、ダイエットや貯金のできるサービスも広まっています。
ゲーミフィケーションの専門家のペンシルベニア大学ウォートン・ スクール教授のケビン・ワーバックと、ニューヨーク・口ースクール教授のダン・ハンターは、ゲーミフィケーションに共通する3つの要素を明らかにしました。
■ポイント制であること
■バッジがあること
■上位に入ったプレイヤーを発表するランキング表(リーダーボード)
この3つを活用した最初の試みが、航空会社のフリークエント・フライヤー・プログラムです。1972年にユナイテッド航空はマイレージプログラムを立ち上げ、他の航空会社もすぐに同様の仕組みを導入しました。飛行機に乗るたび、あるいは特定のお店で購入をするたびに、マイルという形でポイントがたまるプログラムは人気になり、多くの顧客を囲い込んでいます。
1年間で一定のポイントがたまれば、シルバー会員、 ゴールド会員、プラチナ会員といったふうに、ステータスを示すバッジが与えられます。上級会員は空港で専用の列に通されて優先的に搭乗し、ときには機内でも特別待遇を受けることができます。
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子供も会社もゲーミフケーションで行動を変えられる?
子どもが正しい習慣を身につけるためにも、このゲーミフィケーションが使えます。子どもも大人と同じくゲームが大好きなのだから、ゲーミフィケーションで自制心をもたせられます。フィリップス・ソニッケアーは、ゲーミフィケーションで、子供が大嫌いな歯ブラシを習慣にすることができました。子どもにしっかり2分間の歯磨きをさせることを狙ってデザインされた歯ブラシ「ソニッケアー・キッズ」は、スマホアプリと連動し、ゲームができるようにしました。アプリにスパーキーという名前のキャラクターが登場し、歯磨きをするとポイントたまって、スパーキーにエサをやることができるのです。スパーキーと遊ぶのが楽しくて、子どもは歯磨きをしたくてたまらなくなったそうです。
本質的に怠け者の人間を働かせるために、一般的な企業も実はゲーミフィケーションを取り入れています。仕事をして給料を獲得し(ポイント)、年功序列で昇進し(バッジ)、新しい肩書きがつく(リーダーボード)。多くの職場が真のゲームと異なっているのは、内発的動機を重視していない点です。
多くの企業はお金や特典や褒賞といった外発的報酬で働く者をつなぎとめています。しかし、ゲーミフィケーションという言葉を考案したニック・ペリングが考えていたように、ゲーミフィケーションの定義は体験そのものが報酬となるのです。
外発的報酬だけでは裏目に出やすい。運動依存症になった人は、運動のゲーム性ばかりを重視して、連続記録や歩数や距離にこだわってしまう。運動自体が健康になるためにデザインされた活動であることを忘れて、ひたすら目標の数値を追求し、疲労に伴うケガを負ったりする。重要なのは内発的報酬のほうだ。
2000年にIT系企業家4人が立ち上げたコールセンター委託請負サービス「ライブオプス」はゲーミフケーションで成功した企業のーつです。2万人以上のスタッフで顧客企業の電話業務を請け負っているほか、最近ではピザハットや、ビデオゲーム開発会社エレクトロニック・アーツといった大手企業に対し、専用のソーシャルメディア・プラットフォーム運営も手掛けています。
厳しい審査を経て採用されたスタッフは、30分単位の好きな時間で在宅で働きます。必要なものは固定電話回線と、コンピューターと、高速インターネット接続環境、そしてヘッドセットです。顧客企業のほうは分単位で支払いをするか(電話1分あたり25セントなど)、もしくは電話の本数や売り上げに応じて支払いをします。
このライブオプスで働く人にとっての魅力は、勤務時間が固定されないことです。パートタイムとして、自宅で子どもの面倒を見ながら、または本業の合間に働くことができます。この融通性の高さは会社としての強みですが、在宅で自由な時間に働ける仕組みではスタッフのモチベーション維持が難しいという課題がありました。その対策として、ライブオプスではゲーム化したダッシュボード(管理画面)を導入したのです。
スタッフー人1人の専用ページに進捗状況を示すグラフがあり、売り上げにつながった割合、特定の売り上げ目標に達成したことを示すトロフィーやバッジ、そして個々人の課題などを表示しています。売り上げトップのスタッフを紹介するリーダーボードも用意しています。このようにゲーミフィケーションを上手に使うことで、組織のパフォーマンスも向上できるのです。
まとめ
行動嗜癖には良い面もあれば、悪い行動嗜癖は排除し、害のある行動をよい行動に差し向けていくこようにすることで、人生を改善できます。自分の悪い習慣を見直し、良い習慣に置き換えるようにしましょう。その際、ゲーミフィケーションを活用すれば、楽しみながら自分の行動を改善できるようになります。
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