渡部弘毅氏のお客様の心をつかむ心理ロイヤルティマーケティング 「心の満足」と「頭の満足」を測り、科学的にロイヤルティを高める手法の書評


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お客様の心をつかむ心理ロイヤルティマーケティング 「心の満足」と「頭の満足」を測り、科学的にロイヤルティを高める手法
著者:渡部弘毅 監修:諏訪良武
出版社:翔泳社

本書の要約

行動ロイヤルティだけでなく、心理ロイヤルティを高めることで、エンゲージメントが高まり、収益がアップします。良い売上とは行動ロイヤルティと心理ロイヤルティの両方が高い顧客(ファン)によってつくられ、この層を増やすことで未来の売上をアップできるようになるのです。

心理ロイヤルティが収益アップの鍵!

ファンをつくることは、既存顧客の維持が基本です。お客様のプロファイルや行動、体験を考慮して、絶え間ない対話を繰り返し、お客様と「お互いの価値の共創関係」を築き上げなくてはなりません。つまり、長い年月をかけて育成していく農耕型マーケティングといえるでしょう。(渡部弘毅)

カスタマーサクセスが話題になっていますが、著者の渡部弘毅氏はそのスペシャリストです。以前、私はカスタマーサクセスの会社のCMOをしていましたが、その際、著者と何度か一緒に仕事をしました。彼の心理的アプローチを活用したロジカルな提案で、クライアントの売上がアップしていくのを目の当たりにしたことで、私のマーケティングの考え方が顧客体験重視にシフトしました。その渡部氏から、新刊お客様の心をつかむ心理ロイヤルティマーケティングを献本いただいたので、紹介したいと思います。

顧客を創造し、売れ続ける仕組みをつくるつくることがマーケティングの基本ですが、そのためにはファンをつくることが重要になります。しかし、多くの経営者は目先の売り上げのために、新規顧客を獲得するキャンペーンなどの販促活動を重視します。LTVを考えれば、長期的に売り上げを生み出すファンづくりのほうが大切ですが、面倒な顧客満足向上活動に彼らはなかなか取り組めずにいます。

しかし、ロイヤルティにフォーカスし、経営に取り入れれば、売上をアップできます。顧客満足と収益の間にロイヤルティの指標を入れると収益との関連性を説明できるようになるのです。実は、このルールに気づいた企業が成功しています。

ロイヤルティには、「経済ロイヤルティ」「行動ロイヤルティ」「心理ロイヤルティ」の3つがあります。
■経済ロイヤルティ 顧客の購買金額が指標 企業目線
■行動ロイヤルティ 来店頻度、HPへのアクセス頻度、利用頻度 比較的企業目線
■心理ロイヤルティ 企業や商品への愛着度合い

ロイヤルティ向上でもっとも重要なのは心理ロイヤルティで、行動ロイヤルティだけでなく、心理ロイヤルティを高めることで、エンゲージメントが高まり、収益がアップします。良い売上とは行動ロイヤルティと心理ロイヤルティの両方が高い顧客(ファン)によってつくられます。ロイヤルティマネージメント(ロイヤルティ調査・分析、改善)を通じて、この層を増やすことで、未来の売上をアップできるようになるのです。

良い売上比率を高めよう!

売上を心理ロイヤルティ指標で3段階に分けて、見える化します。心理ロイヤルティが高いお客様の売上は、将来を支える「良い売上」、心理ロイヤルテイが中ぐらいのお客様の売上は現在を支えてくれているが「不確実な売上」、心理ロイヤルティが低いお客様の売上は将来のリスクになる「悪い売上」と名付けています。「良い売上」、「不確実な売上」、「悪い売上」の比率を計算することで、ロイヤルティマーケティングの視点での収益評価が可能になります。

「良い売上」、「不確実な売上」、「悪い売上」を指標化することで、翌年の売り上げを予測できます。顧客満足度が低下気味の狩猟型マーケティングを行っている会社は、「悪い売上」の比率が高く、既存顧客が離脱し、売上げ急降下するリスクを抱えています。逆に「良い売上」の比率が高ければ、ファンが多く、その口コミから翌年度の売上がアップ可能と予測できます。

損益計算書の数字は過去の指標でしかなく、未来予測には適しません。顧客目線のロイヤルティの実態を見える化できることがロイヤルティマネジメントの効果で、これにより中期的な視野で持続的な収益向上策の立案が可能になるのです。

モノからコトにこだわる顧客が増える中で、体験価値がキーファクターになってきました。感動的な顧客体験が心の満足を高め、売り上げを左右するファンを生み出してくれます。

体験価値とは、お客様が商品を選択して購入し使用するプロセスで生まれる価値です。一般的にいわれるカスタマーエクスペリエンスの向上とは、この価値を向上させることを意味しています。小売業では、企業や商品の情報収集、購買体験時の店舗接客や支払処理、ネットでの商品閲覧、商品使用時のサポートサービスといった項目です。クラウドサービスにおいては、導入時の打合せ、システムの設定、運用時のテクニカルサポートやトラブル対応といった項目です。つまり、お客様の商品購入や使用を手助けするサービスプロセスを磨き上げ、顧客満足を高め、体験価値を向上させます。

ロイヤルティをマネージメントするためには、経営者がロイヤルティを向上させる経営を取り入れる必要があります。顧客体験はあらゆるコンタクトポイントで生まれますから、店頭やオンラインサイトを改善するだけでは片手落ちです。顧客満足を社員全員に意識させ、経営指標として取りれるべきです。著者はNPSだけでなく、リピート率を評価する指標のNRSや琴線感度(心の満足)を経営に取り入れるべきだと言います。

心理ロイヤルティの高い良い売上比率をアップすることを経営指標にすることで、顧客との関係が変わります。ファンの声を経営者と社員が分かち合い、ファンを増やすことで会社を強くできるのです。

 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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