幸運をつかむためのディシジョン・ツリー活用法。杉浦正和氏の幸運学 不確実な世界を賢明に進む「今、ここ」の人生の運び方の書評


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幸運学 不確実な世界を賢明に進む「今、ここ」の人生の運び方
著者:杉浦正和
出版社:日経BP

 

本書の要約

世の中が複雑になり、選択肢が増える中で、決断することが難しくなっています。不確実性な時代によい決断をするためには、悩むのではなく、脳の中にある情報を書き出し、しっかりと考えるべきです。その際、ディシジョン・ツリーを活用することで、結果を出せるようになります。

複雑性の減少によって、経営をよくする方法

マネジメントの目的について、経営学では「複雑性の減少」と説明します。もしものごとが単純明快であれば、何も考えずに前に進めればよく、マネジメントは必要ないからです。けれど実際は、ものごとは混乱しているので、その絡まりを解いていかなければなりません。

世の中は複雑になり、経営者は様々な決断をしなければなりません。優秀な経営者は、いくつもの選択肢の中から最適と思える答えを見つけています。彼らはものごとをよりシンプルな単位に分けて、複雑性を減少させているのです。例えば、売り上げを伸ばすためには、「売上高」を分解して考えるべきです。

売上高=顧客数×平均顧客単価
このように分解すれば、顧客数に対する対策と平均単価を増やすための対策は異なることがわかります。顧客数と平均顧客単価は次のように分解できまさす。
1、顧客数
■既存顧客数+新規顧客数
■団体の顧客数+少数グループの顧客数+おひとり様の顧客数
■地元の顧客数+遠方からの顧客数
■リピート顧客数+たまの顧客数+1回きりの顧客数

2、平均顧客単価
■どのような価格帯のものを買っているのか(安価なものか、高価なものか)
■何を買っているのか(日用品か、嗜好品か)
■どんな目的で買っているのか(自家用か、贈答用か)
売上げの要素を分解することで、原因を明らかにできます。マーケティング視点で分析を行ったら、次に解決策を考えるようにします。その際、解決に向けてどんな手が打てるか?を考え、アクションの選択肢を次々と書き出すします。そして、どの選択肢を取れば、どの程度の確率で成功するのか、見積もるようにします。

原因を書き出すことで、「今、ここ」に至った理由を知ることができます。書き出すのは、対策を練るため、「今、ここ」から将来を見据えるために必要なことなのです。

著者は「考える」と「悩む」の違いを次のように整理しています。悩むのをやめ、考える時間を持つことで、行動が変わり、結果を出せるようになります。
・考えるのは、未来に向けて案を練ること、一方悩むのは、ひたすら未来を案ずること
・考えるのは、選択肢の確率を見積ること、悩むのは「わからない」と投げ出すこと
・考えるのは、言葉や数字にしてみること、悩むのはその手間を惜しむこと
・考えるのは、悩まずに思考を進めること、悩むのは考えているつもりになること
不確実なことに悩むよりも、言葉やデータなどの事実を書き出し、自分の頭の中を整理すべきです。脳の中のモヤモヤを書き出すことで、悩みは確実に減らせます。さっさと悩むのをやめ、未来を変えるための行動に時間を使いましょう。

ディシジョン・ツリーを活用しよう!

プランAで行くか?プランBで行くかで悩んだら、「ディシジョン・ツリー」を活用すべきです。特に、経営者は複数の選択肢の中からベストの解を選ぶ必要がありますから、それぞれの選択肢の「期待値」を計算し、その結果が一番高いものを選ぶようにすべきです。

ディシジョン・ツリーは次のように使います。
・意思決定を行う際にどのような選択肢があるか、その可能性を考えます
・それぞれを選択したときに起こり得る事柄とその確率を想定します
・それぞれの結果が起きたときにどの程度のリターンがあるか計算します
・リターンと確率を掛け合わせて期待値を計算し、高いほうを選びます。

傘を持って外出する例で、著者はディシジョン・ツリーについて説明します。降水確率は2割で、空がどんよりしている場合に、人は傘を持っていくかどうかで悩みますが、これもディシジョン・ツリーで解決できます。期待値は、「ポイント」×「確率」で求めます。
・傘を持って行って晴れると、かさばる(ちょっと残念) マイナス20ポイント
・傘を持って行って雨が降ると、濡れずに済む(助かった!) プラス100ポイント
この場合の「持って行く」の期待値は、(−20×0.8)+(100×0.2)=4
・傘を持って行かずに晴れると、身軽で良い(少し嬉しい) プラス20ポイント
・傘を持って行かずに雨が降ると、ずぶ濡れに(最悪の事態!) マイナス100ポイント
「持って行かない」の期待値は、(20×0.8)+(−100×0.2)=−4
持っていくはプラス4ポイント、「持っていかない」はマイナス4ポイントですから、この場合は傘を持っていくが正しい答えになります。

計算式に影響する要因は2つあります。まず、降水確率の見立てです。降水確率が変われば、計算結果も変わります。そして、傘を持って動いた時に起こることも加味します。著者の場合は、傘を持って行って晴れると、かなり高い確率で、傘を置き忘れるとのことなので、ポイント配分が少し変わります。

・傘を持って行って晴れると、かさばるし、「忘れるかも」 マイナス30ポイント
・傘を持って行って雨が降ると、濡れずに済む プラス100ポイント
「持っていく」の期待値は、(−30×0.8)+(100×0.2)=−4
・傘を持って行かずに晴れると、身軽だし、「忘れずに済む」 プラス30ポイント
・傘を持って行かずに雨が降ると、最悪の事態に マイナス100ポイント
「持っていかない」の期待値は、(30×0.8)+(−100×0.2)=4
条件を少し変えたら、「持っていく」がマイナス4ポイント、「持っていかない」がプラス4ポイントになって、評価が逆転しました。著者の場合は、傘は自宅に置いておいたほうが良さそうです。

このように私たちの生活は、意思決定の連続です。私たちは日々、何かを選択するたびに、期待値の比較を無意識のうちに行っています。「確率の見立て」と「利得の評価」の両方が正確になればなるほど、私たちは成功する確率をアップできます。それが、全体としての幸運を創りだしていくのです。良い選択をディシジョン・ツリーを使って、繰り返すことで、運を高められるのです。

当然、ディシジョン・ツリーにも、いくつかの限界があります。
・自分で考えた選択肢が十分に可能性をカバーしていないかもしれない
・想定したシナリオ以外のことが起きるかもしれない
・確率の見立てを正確に行うことは難しい
・将来のリターンについて、きちんと見積もることは難しい

しかし、ディシジョン・ツリーを活用することで、結果をよくできることは間違いありません。

ディシジョン・ツリーが教えているのは、「意思決定とは、選択肢をリストアップし、確率を見立て、小さなプロセスに分解する」ということです。それが、単に悩むのではなく、「合理的に考える」ことなのです。

不確実性の中で行動することは、暗闇の中を歩むのに似ています。ディシジョン・ツリーを使うことで、道をある程度明るくでき、暗闇の中のリスクを減らせます。少しでも良い意思決定を繰り返すことで、長期的には望ましいことが起きる確率が上がります。不確実性のもとで賢く歩む地図が、ディシジョン・ツリーであるのなら、それを徹底的に活用し、運を高めるようにしましょう。

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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