ブリッツスケーリングにおける成長を最大化する4つの要因 リード・ホフマン&クリス・イェ のブリッツスケーリングの書評


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ブリッツスケーリング 苦難を乗り越え、圧倒的な成果を出す武器を共有しよう
著者: リード・ホフマン&クリス・イェ 
出版社:日経BP

本書の要約

急激に成長する会社には4つの共通点があります。巨大な市場規模を有する、ディストリビューションでの優位性、粗利益率の高さ、ネットワーク効果で一気に顧客を獲得することです。起業家はプロダクトの開発、改良ばかりに目を向けますが、この4つの要因を意識しなければ、成長でいないことを忘れないようにすべきです。

成長を最大化する4つの要因

エアビーアンドビーとウーバーの場合にそうだったように、市場規模と動向を正しく予測し、ライバルが逡巡している間に投資を始めることは、法外に巨大なリターンを生む要素だ。

リード・ホフマン&クリス・イェブリッツスケーリング 苦難を乗り越え、圧倒的な成果を出す武器を共有しよう書評を続けます。アマゾンやウーバーなど急激に成長する会社は、ブリッツスケーリングを行っています。彼らは以下の4つの要因を意識し、実践することで、一気に成長します。

成長要因1 市場規模
成長要因2 ディストリビューション
成長要因3 粗利益率の高さ
成長要因4   ネットワーク効果

成長要因1 市場規模
ベンチャーファンドは投資額の3倍のリターンを要求します。彼らの投資を得るためには、巨大なマーケットに参入し、そこでシェアを獲得する必要があります。 新しい市場を創出するにせよ、既存の市場を拡大するにせよ、投資家が望む「ビリオン(10億)」に到達するためには、現状からそこに至る納得性のある道筋を示さねばなりません。自社の市場が巨大なものでないならば、投資家からは見向きもされません。

成長要因2 ディストリビューション
成長要因の2つ目は、ユーザーに届けるまでのディストリビューションです。シリコンバレーの多くの企業はプロダクトの開発に集中します。確かに、プロダクトが優れていることはポジティブな要因ですが、優れた販売チャネルがなければ意味がありません。モバイルファーストになった時代には、販売チャネルも変化しています。モバイル時代の新しい販売手法は、既存ネットワークの活用とバイラル性という2つの大きなカテゴリに分類できるます。

A 既存ネットワークの活用
スタートアップには、広告キャンペーンに使う資金もターゲットもありません。そこで既存のほかのネットワークを利用してユーザーを獲得する独創的な方法を見つける必要があります。ペイパルは当初、主にイーベイでの決済で使われていました。同社はイーベイの売り手がリスティングに「ペイパルで支払い可能」ボタンを自動的に追加できるソフトウェアを開発したことで、イーベイという巨大なユーザーベースにサービスを売り込めました。

既存の強力なネットワークを利用することはビジネスモデルの重要な部分を占めることがある。既存ネットワークの利用がいわば宇宙ロケットの第一段として作動し、サービスを軌道に打ち上げる場合は特にそうだ。このような場合にはバイラル効果、ネットワーク効果も得られることになる。

エアビーアンドビーはオンライン案内広告の大手「クレイグズリスト」のAPIにつなげることで、成果を上げました。部屋のホストが部屋をクレイグズリストにクロス投稿できるシステムによって、ホストは収入を増やせました。プロダクトの革新ではなく、あくまでディストリビューションの革新を行うことで、エアビーアンドビーはメリットを得たのです。

Bバイラル性
バイラルまたはロコミによるユーザー獲得ユーザーがプロダクトを気に入り、ほかのユーザーに推薦することで新しいユーザーが得られます。 リンクトインは、創業後オーガニックなロコミを発生させる方法を見つけようとして多大な時間とエネルギーを費やしました。ユーザーのアウトルックの連絡先に簡単に接続できるようにするソフトウェアを開発することで、ユーザーは付き合いの深い重要な相手を簡単に招待できるようになりました。また、ログインせずに閲覧できる公開プロフィールをロコミツールとして追加し、そこに表示できる内容をカスタマイズできるようにしました。その結果、メンバーにとっての価値とロコミの双方を高めることができたのです。

ペイパルでは、ロコミを発生させるためにオーガニックとインセンティブの双方を組み合わせました。ペイパル経由の送金を受け取りたいなら、アカウントを登録しなければなりません。ペイパルはこれに経済的インセンティブを追加しました。ユーザーが友だちにペイパルを紹介し、友だちが加入すればユーザーも友だちも共に10ドル分のクレジットを得られるしくみをつくったのです。この組み合わせでペイパルは、1日あたり7~10パーセントも成長しました。ペイパルのネットワークが成長するうちに、インセンティブも徐々に減り、収益を改善することに成功します。

成長要因3 粗利益率の高さ

起業家が見落としがちな重要な成長要因は、粗利益率の水準だ。粗利益率が高ければ会社にとって売上ードルあたりの価値が高くなる。つまり、売上の中から会社が成長と拡大に投資できる資金の割合が高くなるということだ。

アマゾンの成功について最も驚くべきことは、小売業をベースに巨大企業を構築できたことです。小売業は一般に利益率の低い業界で、アマゾンでさえ、利益率の維持ではAWSに大きく依存しています。2016年にAWSはアマゾン全体の営業利益の150パーセントを占めました。つまり小売部門は赤字だったのです。

高価値企業の大部分は粗利益率が60~70パーセントであり、中には80パーセントを超えているものもあります。たとえば2016年のグーグルは897億ドルの売上に対して、546億ドルの粗利益(61%)を上げていました。フェイスブックの売上は276億ドルに対して、粗利益は239億ドルで87パーセントでした。

アマゾンの2016年の売上高は1360億ドルで、粗利益は477億ドル、利益率は35パーセントでした。一方、2016年のGEの売上高は1197億ドル、粗利益は322億ドル、粗利益率は27パーセントしかありませんでした。つまり「利益率の低い」アマゾンでさえ、伝統企業の中で高利益率を誇るGEよりもさらに高い利益率を得ていたのです。粗利益率が高いことは強力な成長要因で、この利益によって、リスクを取れるようになるのです

利益率の高いビジネスは投資家にとっても魅力的で、投資家は現金を生むビジネスモデルに対して、プレミアムを用意します。非公開企業の場合、投資家に魅力あるビジネスモデルを提示できれば、会社評価額が上がり、したがって資金調達が容易になります。電撃的成長を実現するには、低いコストで資金にアクセスできることが絶対の条件なのです。

アマゾンや中国のハードウェアメーカー、ファーウェイ、シャオミなどはブリッツスケーリングを実行するために、市場シェアの最大化を優先して粗利益率を下げた価格・料金を設定してきました。ほかの要素が同じなら、投資家は今後粗利益を高くできる企業をすでに粗利益を最大化してしまった企業よりも評価します。企業の成長は粗利益率ではなく、総収入やプロダクトの総販売ユニット数に比例します。

年間売上が1億ドルになるような優良ユーザーが多くいる場合でも、サービスを提供するコストは、粗利益率によりません。それが10パーセントでも80パーセントでもサポートに必要な社員数は変わりません。あたりまえですが、粗利益が8000万ドルあれば、1000万ドルの場合よりずっと優れた顧客サポートを提供できます。

成功のチャンスを大きくし、成功の見返りを最大化するためには、起業家は利益率の高いビジネスモデルを設計する必要があるのです。 

成長要因4 ネットワーク効果

この20年でインターネットが世界の隅々まで普及し、ネットワーク効果はこれまでの歴史で見られなかったレベルにまで高まっている。テクノロジーが経済の支配的な要素になった大きな理由が、ネットワーク効果だ。

テクノロジーは今や世界中の人間を過去には考えられなかったほど緊密に結びつけています。現在、20億人を超える人々がスマートフォン(そのほとんどはアップル製かグーグルのアンドロイドOSを利用)を持ち歩いています。ありとあらゆるものが常に世界的なネットワークに接続し、私たちはいつでも世界のありとあらゆる情報を発見(グーグル)し、プロダクトを購入(アマゾン、アリババ)し、コミュニケーション(フェイスブック、ワッツアップ、インスタグラム、ウィーチャット)をとることができます。世界は高度に相互に接続し、多くの企業がネットワーク効果を活用して大きな成長と利益を生み出すようになったのです。

サービスのユーザー数または利用量の増加がネットワークの効用を増大させるなら、そのサービスにはプラスのネットワーク効果が働いている。 経済学者はこの現象を「需要側のスケールメリット」あるいは「正の外部性」と呼ぶ。ネットワーク効果というマジックはプラスのフィードバックを生成し、結果として非線形の急成長と価値創造をもたらす。ひとたび確立したネットワークのノードになってしまうと別のネットワークのサービスに乗り換えることが非常に困難になる。

新規参入者が既存のネットワーク並みの価値を提供することが極めて難しくなります。「スケールの拡大が利益を増加させる」という現象は、トップとなったサービスや企業が「ひとり勝ち」状態をつくり出し、その分野の利益の大半を手に入れた状態で均衡を保ちます。賢明な起業家(と賢明な投資家)がこうしたネットワーク効果を最大限生かすシステムづくりに努力するのは、当たり前のことなのです。イーベイ、フェイスブック、エアビーアンドビーなど多数のスタートアップがこのメカニズムを利用して支配的な地位を築きました。

5種類のネットワーク効果

ニューヨーク大学のアルン・スンドララジャン教授は、テクノロジー系ウェブサイトの組織研究の中でネットワーク効果を大きく5つのカテゴリに分類しています。
1、直接的ネットワーク効果 使用量が増えると、価値が直接的に高まります。(フェイスブック、ウィーチャット、ワッツアップ、その他メッセージアプリ)
2、間接的ネットワーク効果 使用量が増えると、補完財の消費を促し、間接的にプロダクトの価値が高まります(例 ソフトウェア開発者はマイクロソフト・ウィンドウズOS、アンドロイドOSなどの市場支配的なオペレーティングシステムを採用することで、アプリケーションやプラットフォームの価値を高められる)
3、双方向ネットワーク効果 あるユーザーグループによって使用量が増えると、別の補完的なユーザーグループの価値を高まります。(イーベイ、ウーバー、エアビーアンドビーなどマーケットプレイス・サービス)。
4、ローカルネットワーク効果 一部のユーザーグループの使用量が増えると接続ユーザーの価値が高まります。
5、互換性と標準規格 あるプロダクトの使用が増えると、それと互換性のあるプロダクトが有利となります。(マイクロソフト・オフィス)

ネットワーク効果は積極的な成長を生み出すネットワーク効果を活用するには、ネットワーク自体の急成長や普及を積極的に追求しなければならない。ネットワーク効果はネットワークの規模に対して指数関数的に増えるため、スケールが小規模である場合はむしろネガティブな影響を与える。

ユーザーがサービスを利用するかどうかを決めるときに重視するのは、現在の普及レベルと、将来の普及に対する期待の双方です。大勢のユーザーが集まると予測するとサービスの価値は高まり、ユーザーが実際に参加する可能性が高くなるのです。企業はまずニッチな市場に焦点を当てて足場を築き、そこから周囲へと拡大していく「ボウリングピン」戦略を推奨します。この戦略はネットワーク効果ビジネスにとってさらに重要で、キャズムを超えるためのマーケティング戦略を考えるべきです。

世界がインターネットによって相互に密接につながるようになると、市場優位性をもたらすネットワーク効果が発揮される均衡点にいち早く到達できます。インターネットは、プロダクトとサービスの発見コストをかつてないほど低くしています。顧客とつながることがインターネットで簡単にできることで、成長も維持できます。

グーグルやアマゾンは、驚くべき高収益性によって、新分野に投資を拡大できます。アップルは莫大な利益の一部を費やして音楽プレイヤーのiPodからスマートフォンのiPhoneへ、さらにタブレットのiPadへと次々に新製品を開発してSカーブを更新してきました。

フェイスブックがインスタグラム、ワッツアップ、さらにはVRハードウェアのオキュラスを買収し、グーグルがディープマインドを買収したように新しいS字曲線へとジャンプできます。

巨大になったシリコンバレーのスタートアップの多くは、企業文化としてビジネスモデルの革新に重点を置き、ネットワーク効果主導型の新しいビジネスを生み出している。面白いことに、シリコンバレーの多くの起業家はネットワーク効果やそれを起こす原因を尋ねられても、うまく定義できないことが多かった。つまり多くの起業家はさまざまなビジネスモデルを試みているうちに、知らず知らずのうちに強力なネットワーク効果を見出したわけだ。

シリコンバレーの起業家は急成長するビジネスモデルづくりに全力をあげるため、まずネットワーク効果を取り入れようと試みます。シリコンバレーでは近隣のライバルと激しい競争を避けられないので、アグレッシブな成長(つまりブリッツスケーリング)を求めます。そのためほかの地域のスタートアップより早くネッ トワーク効果が生まれる均衡点に到達する可能性が高くなるのです。

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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