デイビッド・ローワンのDISRUPTORS 反逆の戦略者――「真のイノベーション」に共通していた16の行動の書評


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DISRUPTORS 反逆の戦略者――「真のイノベーション」に共通していた16の行動
著者:デイビッド・ローワン
出版社:ダイヤモンド社

本書の要約

無数のテクノロジーが既存のビジネスモデルを脅かしている現在、自分の会社は大丈夫だとか、まだ時間があるなどと悠長に構えることが最大のリスクになります。破壊的起業家がイノベーションを起こすことで、巨大企業といえども、生き残れなくなっています。

イノベーションを起こすために必要なこと!

企業にイノベーション(変化する現実の下で将来の価値を確実にするためにビジネスを一新するプロセス)をもたらすものは、気まぐれきわまりない有機的相互作用であり、血も涙もある人間的なものであって、とてもではないが機械的な公式に落とし込めるものではないだろうという疑問だ。(デイビッド・ローワン)

Wired UKの英国版創刊編集長のデイビッド・ローワンは、シリコンバレーのイノベーションの常識に反旗を翻しました。彼は135人にインタビューを行い、イノベーションに必要な行動を明らかにしました。ネットワーク効果により、多くのベンチャーがマーケットを席捲するようになりました。エアビーアンドビーやウーバーが既存産業にダメージを与え、資本家や労働者を翻弄しています。

破壊的起業家が生み出す、新たなサービスが一気にマーケットを獲得することで、大企業の寿命は短かくなっています。「創造的破壊(ディスラプション)」の理論を説いたマッキンゼーの元ディレクターであるリチャード・フォスターは、米国のS&P500企業の平均寿命は、1958年の61年から2012年には18年にまで低下したと言います。

リタ・ガンサー・マグラスによれば、英国でも同じことが起こっています。1984年のFTSE100社(ロンドン証券取引所における時価総額上位100社)のうち、2012年にも残っていたのは、わずか24社だけでした。信頼性の高いブランド、継承された伝統、サプライチエーンの優位性、潤沢な広告予算などがあっても、スピードが遅ければ、新興ベンチャーにあっという間に駆逐されてしまいます。

ネットワーク化された世界では、新技術が採用されるのに要する時間も短くなっている。ユーザー数5000万人に到達するのに要した時間は、電話は約50年、iPodは4年、ポケモンGoは19日だった。そして意思決定の権限は、階層型組織である企業からソーシャルメディアによって力を獲得した消費者へと移った。

スポティファイのダニエル・エクは、イノベーションは会議室から生まれないと言います。イノベーションは幸福なセレンディピティの産物で、思いがけないところから起こるのです。イノベーションは多様性から生まれ、時には非合理的に物を考える必要があります。一見すると無関係な2つのことを結びつけ、希少価値のある能力を見出すことで、偉大なアイデアが生まれてきます。

1920年以来、オーストラリアでは、全国道路・モータリスト協会(NRMA)がロードサイドで自動車の修理サービスを行ってきました。しかし、自動車の故障が減り、電気自動車が当たり前になる中、会員数も売上も減少し、NRMAは存続の危機に直面しました。

そこで2016年1月、NRMAはフォクステルとセブン・ウエスト・メディアのCOOを務め、米ヤフーと豪セブン・ネットワークが出資するポータルサイト「ヤフー7」を率いたこともあるローハン・ルンドをスカウトしました。彼は就任前に顧客対応の前線で働いているスタッフ50人を対象にヒアリングを行った結果、建設的アイデアを持っている社員が、時代遅れの経営陣に不満を感じていることを突き止めました。

ルンドは真の破壊的再出発のためには「満たされていない顧客のニーズを満たす」ことが必要だと宣言し、「イノベーションは、まぐれ当りを願う片手間仕事では実現しない」と力説しました。EV(電気自動車)の増加、メーカーによる車両データ管理の進展、ロードサイドサービスをめぐる保険会社間の競争、ライドシェアリング、自律走行自動車、新しい輸送技術こうした新しい現実を否定することはできません。電気自動車の台頭を脅威と見なすのではなく、NRMAはオーストラリア最大の急速充電設備ネットワークの拡充に着手し、会員にロードサイド充電を無料で提供しました。ソフトウエアが修理工の存在意義を薄れさせたと嘆くのではなく、会員が登録した車両にデータ収集装置を取り付けて遠隔保守と故障予測のサービス戦略の再考を「自動車」からスタートしたのです。

同社は投資額1000万豪ドルで、ニューサウスウェールズとオーストラリア首都特別地区にヴィーフィル(Veefil)という電気自動車の急速充電スタンドを設置しました。この充電設備ネットワークはやがてオーストラリアのEV充電ニーズの5~10%を満たし、新たなビジネスチャンスを同社にもたらします。NRMAは充電設備を商業目的地に設置したり家庭用充電器として販売することもできます。

NRMAはコア事業に見切りをつけたわけではありません。ロードパトロール部隊は顧客ニーズの変化に素早く対応できるよう前線のスタッフの仕事の進め方を見直しました。出動車両の100台以上が交換用バッテリーを積み、ボタンーつでレッカー車になる新しい特注の「モバイル・レスポンス・ユニット」(MRU)を採用したのです。NRMAは顧客体験を変えることで、オーストラリアで最も信頼されるブランドのーつになったのです。

NRMAは常にドラィバーの利益を追求してきましたが、事業領域をひろげ、レジャー目的地の国内最大の運営企業になることを決めました。42のホリデーパークを購入し、ホテルチェーンのトラベロッジを傘下に収めました。ルンドは、「メンバーシップ」(会員制)の意味を再考することで、大胆な起業家的飛躍を遂げました。NRMAは現在、ロードサイドサービスを含まない「NRMAブルー」という月額5ドルの会員制サービスを提供しています。ガソリン、保険、旅行、エンターテイメントなどの分野で、35のパートナー企業が3000のアイテムを提供するサービスを提供し、たとえば燃料1リットル当り5セントの割引、観光名所の入場・入園料割引、 宿泊および交通サービス、そして無料期間2カ月のスポティファイ・プレミアなどを提供しています。

同社の目標は、データを活用して顧客との間にパーソナライズされた関係を築き、「市場」と呼べるほど多数の会員を集めることです。くたびれかけた自動車修理工場が突如、競争力のある販売会社に変身し、顧客の日々の生活に影響を与え始めています。

連続15年も会員数を減らし続けたNRMAが、最近2年で会員数を5%も増やしました。宿泊施設、レンタカー利用、旅行サービスまで含めれば、500万人の顧客にリーチし、新たなビジネスモデルも軌道に乗りました。不安定な財務状況からも脱し、2018年の税引前利益は前年比17%増の1億2930万豪ドルになりました。デジタルの未来に対応する体制を築き、多彩なデータを活用する企業になることで、NRMAが次の100年も事業を継続している可能性が高まったのです。

イノベーションに成功する企業の13の共通点

真のイノベーションを達成した賢いリーダーには共通点がある。事業内容にかかわらず、「自分はテクノロジー企業を経営していると考えている」ということだ。

絶えず変化するデジタル社会に適応し、顧客を惹きつける新製品を生み出すチームには以下の13の共通点があると著者は言います。

1、自ら判断して動く少人数チームを社内に組織し、顧客ニーズを発見し対応する
2、権限を与えている世界レベルの才能を採用し、動機づけ、つなぎとめる能力こそ最大の資産であると理解している
3、好奇心を保ち、外の世界を観察し、問いを持って学び、自己満足に陥らないよう自戒している
4、仮定に基づいて検証し、フィードバックを吸収し、あらゆるステップで繰り返すことを厭わない
5、会社のゴールより顧客のニーズを優先する
6、新市場の動向を理解し、今のビジネスモデルや製品の先にあるものを発見しようとしている
7、階層構造や官僚的思考からの脱却をめざし、意思決定を速め、リスクを取ることを恐れない
8、一大胆な行動に出て失敗しても、意味のある学びがあれば、それを次に活かすことでよしとする
9、短期的な結果を求める圧力からチームを守る構造になっている
10、「イノベーション」を特定の個人やチームの責任と見なさない
11、分野の壁を乗り越える協働と、異なる文化を融合するハイブリッド思考ができる
12、社員が会社の目的に共感し、価値観を共有している
13、社内で起業家精神を発揮することを奨励し、それに報いる仕組みがある

わかりやすい例として、ドミノ・ピザが紹介されています。ドミノ・ピザはこの10年で、米国の株式市場で際立った成功を収めました。「ドミノ・ピザは食欲をそそらない、接客にやる気が感じられない、ブランドそのものがしょぽい」と酷評されていた2010年にCEOになったバトリック・ドイルは、配達物流がピザそのものと同じくらい重要であることを認識し、行動を起こしました。オペレーションと顧客サービスをデジタル化するためのソフトウエア開発とデータ分析に多額の投資をすることで、顧客との関係を一気に改善しました。

顧客はドミノ・アプリでも、ツイッターでも、シリでも、ピザの絵文字のテキストメッセージでも、簡単にピザを注文できるようにったのです。オンラインでピザの好みのカスタマイズができ、注文から配達までの各段階を追跡できるようになることで、顧客満足度が高まりました。新生ドミノ・ピザは、ピザの会社のようでマーケティングの会社であり、マーケティングの会社のようでテクノロジーの会社といういくつもの顔を持つことで、業績が改善し、株価上昇につなげました。

著者はインタビューを通じて、イノベーティブな会社の13の共通点を見つけました。そこには、明確な「イノベーションの公式」は発見できませんでしたが、問題を抱えている企業には、人的バイアス、つまり間違った考えや行動を取ることがわかりました。

機械学習、ナノテクノロジー、ゲノミクス、3Dプリンティング、その他無数のテクノロジーが既存のビジネスモデルを脅かしている現在、自分の会社は大丈夫だとか、まだ時間があるなどと悠長に構えることが最大のリスクになるのです。テクノロジーが進化する中で、変化にスピーディに対応しなければ、巨大企業といえどもあっという間に負け組になってしまうのです。

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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