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外資系コンサルの知的生産術~プロだけが知る「99の心得」~
著者:山口周
出版社:光文社
本書の要約
良質なアウトプットを導き出すためには、自分への反証が欠かせません。正しい数字を使っているか?定説に流されていないか?をしっかりとチェックし、アウトプットの質を高めましょう。机上の理論ばかりに頼るのではなく、人が動くシーンを具体的に思い描くことを忘れないようにすべきです。
数字は嘘をつかないをルールにし、数値の皮膚感覚を磨こう!
数値の皮膚感覚を磨くとアウトプットの精度が上がります。(山口周)
山口周氏の外資系コンサルの知的生産術~プロだけが知る「99の心得」~の書評を続けます。世の中の課題が複雑になる中で、ビジネスパーソンには知的生産性を高め、良質なアウトプットを行うことが求められています。正しい答えを見つけることが難しい時代を生きているのですから、自分のアイデアやソリューションは絶対ではないと考え、自分に対して反証の問いかけを日頃から心がけましょう。
自分へのツッコミをする際に、数字を活用するとよいと著者は指摘します。数字は嘘をつかないという言葉通り、数字を見極めることで、正しい答えが見つかるようになります。
課題を解決する際に、私たちは公的な統計データやテストマーケティングで得た調査結果など、さまざまなレベルの数値を扱うことになります。当然、数値の正確さにはバラツキがありますから、それらを上手に組み合わせる必要があります。その際、不確かな数字を鵜呑みにして、間違えた答えを導き出さないように注意しましょう。
自分の持っている数値感覚と照らし合わせながら、数値が非現実的なものでないかの自己チエックを繰り返すことが重要です。GDPや世帯支出など主要な数値の規模感を押さえ、仮説の精度を高めましょう。 知的生産に従事する立場にあるのならば、数値の皮膚感覚を持つように心がけ、日頃から様々な統計データを見るようにすべきです。
巷に溢れる定説に流されてしまうと知的パフォーマンスが低下します。社会的にコンセンサスの取れた命題を課題評価すると間違いが起こります。定説も疑うという姿勢が、知的生産者には欠かせません。
ビジネスにまつわる定説の多くは「誤り」であるか、少なくとも「ケースバイケース」であると思っていた方がいいでしょう。 ある時代において現実をよく説明できた社会科学の定説が、さまざまな要因の変化によって、次に来る時代ではうまく現実に対応できなくなった、というのはよくあることです。そして、まさに経営学というのは「ある時代において現実をよく説明できる定説」の寄せ集めですから、これを頭から「そういうものだ」と考えてしまうのはとても危険なことなのだと覚えておきましょう。
例えば、「日本は少子高齢化の成熟市場なので国内での事業成長は難しい」といった定説は、本当に正しいのでしょうか?ここ十年の統計を見る限り、日本のサービス産業市場は拡大していますし、また高齢者マーケットにセグメントを限れば、この市場が今後数十年にわたって拡大する市場であることは、多くの人が皮膚感覚では理解できるはずです。
想像力を働かせて「人」を思い浮かべる
アウトプットの質が低い人は、考察が甘く、思考の深堀りができていません。彼らに人に共通している特徴は、「想像力がない」ことだと著者は言います。
エリートの多くは観念的な数値を机上にあげてあれこれ議論することは得意ですが、マーケットへのイメージを働かせることが苦手です。「その場にいる人がどんな気持ちで、どんな行動をするだろうかと想像する」ということがなかなかできません。そのため、正しい答えが見出せないのです。
数値や理論にばかり頼るのではなく、生活者をしっかりと見ることが重要です。マーケットにいる生活者をイメージし、現場への視点を欠かさないようにしましょう。
神経学者アントニオ・ダマシオはソマティック・マーカー仮説を提唱しています。外部からある情報を得ることで呼び起こされる身体的感情(心臓のドキドキ、口が渇くなど)が、前頭葉に影響を与えて、意思決定を効率的にするというのがダマシオの仮説です。
ソマティック・マーカー仮説によると、クオリティの高い意思決定を行うためには、理性と情動の両方が必要となります。この枠組みで考えれば、想像力を働かせて「その人の身になってみる」というのは、いわば情動を喚起させているわけで、つまりソマティック・マーカーを駆動させていると考えることもできます。
ビジネスには必ず「人」が関わりますから、人が動くシーンを具体的に思い描くことが大事だということを決して忘れてはなりません。ビジネスの世界における知的生産のアウトプットで、人の行動をイメージしないことは命取りになるのです。思考する際には、必ず人をイメージし、アウトプットの質を高めるようにしましょう。
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