山口周氏の外資系コンサルの知的生産術~プロだけが知る「99の心得」~の書評


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外資系コンサルの知的生産術~プロだけが知る「99の心得」~
著者:山口周
出版社:光文社

本書の要約

今、流行の「思考の技術」だけを身につけても、知的生産性は高まりません。情報をしっかり集め、そのアウトプットの質を上げること(行動)がなければ、クライアントや上司を納得させられません。思考の技術だけでなく、行動の技術を習得することが知的生産性には重要です。

知的生産性をアップするコツ!

「思考の技術」だけを高めても、知的生産性は向上しないのです。知的生産性というのは「思考の技術」そのものよりも、「情報をどう集めるか」とか「集めた情報をどう処理するか」といった「行動の技術」、いわゆる「心得」によってこそ大きく左右されます。(山口周)

思考の技術を学ぶ本が売れていますが、本書の著者の山口周氏は、この技術だけを学んでも結果を出せないと指摘します。なぜなら、知的生産には、目的に照らして情報を集め、集めた情報を分けたり組み合わせ、示唆や洞察を導き出すことと、それをアウトプットしてビジュアルやレポート文書にまとめるという一連の作業プロセスがあるからです。「思考の技術」はあくまで知的生産における「道具の一つ」でしかなく、他の技術を組み合わせる必要があるのです。

本書には、知的生産性を高めるための心得が紹介されています。著者が広告会社や外資系のコンサルタントで使ったノウハウや体験がこの一冊に網羅されています。本書の内容を実践することで、課題発見力や解決力を養うことができます。

今日は、知的成果を出せない時の対処法を中心に本書のエッセンスを抜き出していきます。今までのアプローチでは、求められている知的成果を出せないのではないかと思えるときには、知的生産のアプローチを見直すべきです。

私たちが知的生産に臨む際のアプローチは
■オプティマル(事実と論理を積み上げて答えを出す)
■ヒューリスティック(論理的には正しい答えを導けないが、ある程度のレベルで正解が出せる)
■ランダム(サイコロを転がす)
の3つの方法があります。

ヒューリスティックは日常、よく使う手法ですが、これをビジネスに応用するのです。知らない街でレストランを選ぶときに、混んでいる店と空いている店があったなら、私たちは間違いなく混んでいる方を選びます。

クライアントが程々の答えで良いというなら、このヒューリスティックで十分です。わたしたちは論理的に正しいことを追求しすぎるあまり、「まあまあ満足できる」という解をもたらすためのアプローチをなかなか考えることができないと山口氏は言います。しかし、論理的に正しいことを追求して壁に当たってしまっているときに、「まあまあ満足できる」という解を求めるアプローチにシフトすることで、いろいろ な打開策が見えてくることがあります。

高い精度が求められているときにヒューリスティックなアプローチは使えませんから、こういう場合は、まず要求されている解の精度を落とすことができるかを確認することから始めましょう。

視点・視野・視座を意思的に変えよう!

プロセッシングに煮詰まってしまってなかなか前にすすまないとき、視点・視野・視座の3つを意識的に変化させてみると打開策が見えてくることがあります。

視点=対象に着目するポイント
視野=検討する対象の空間的・時間的な広がり
視座=対象を考察する上での自分の立ち位置

プロセッシングに行き詰まっているとき、視野を広げることで打開策が見えてくることがあります。そんな時には、考察の対象となる時間・空間を広げてみましょう。プロセッシングでは、集めた情報から示唆や洞察を導き出すわけですが、狭い視野から得られた情報だけにもとづくと、誤った示唆や洞察を導き出してしまう可能性があるのがその理由です。典型的な「狭い視野による一次情報の偏り」をなくすことで、間違った答えを出さずにすみます。

視野を広げることで、思考の偏りを防げます。物事には正の側面と負の側面がありますが、貧弱な意思決定というのは、この「正」と「負」の両面への目配りが足りていない場合に起こります。「正」と「負」の両方からアプローチすることで、最適な答えを見つけられるようになります。

つまり重要なのは、多面的な「視点」を設定して、それらを柔軟に行き来できる包容力のある知的態度を身につけられるかどうか、ということです。モノゴトを左右に決しようとしているとき、「正」の側面だけに視点を限定すれば「負」の側面は忘れ去られ、「負」の側面だけに視点を限定すれば「正」の側面は見すごされがちになります。知的生産に従事する立場にある人間であれば、モノゴトの多面的な側面に視点をおいて考察するという態度を忘れてはなりません。

他者と同じポイントに着眼して論理的に思考を積み重ねれば、出てくるアウトプットは普通レベルのものになりますが、これでは差別化できません。それを避けるために、モノゴトの多面的な側面に目を向けるようにしましょう。

最後は「視座」です。視座を上げる、というのは要するに「誰の利益を背負っているか」という立場を変えるということです。より高い視座からの考察によって、より高いレベルのアイデアを生み出せます。 私たちは2つ上のポジションの視座を持つことで、よりよい答えを出せるようになります。若い時に私も社長の視座を持てと上司からアドバイスを受けましたが、この時の教えが今の仕事(社外役員)にも役立っています。

また、著者は「革命家の視座」を持つことの重要性を指摘します。この世界を、いまある世界からどのようにしてよくしていくか?その計画を実現するために、自分の会社をどう活用できるか?そういった高い視座に立って仕事をすれば、世の中の多くの課題を発見できるようになります。ここから私たちはイノベーションのヒントをもらえるのです。

変化が継続的に起こっている世界において、一度学んだコンセプトやフレームワークに執着し続けるのは、怠惰を通り越して危険ですらあるといえるでしょう。こういった世界に生きるわたしたちは、常に「昔とった杵柄」を廃棄し、常に虚心坦懐に世界を眺めながら、自分が学んできたことと常識を洗い流す、つまり「アンラーン」し続けることが求められます。

アンラーンを繰り返すことで、自分という存在を古くせずにすみます。過去の知識が逆にリスクにすらなるのです。変化が激しい時代には、一度学んだ知識をまっさらにして捨ててしまうことで、絶えず成長できるようになります。高いレベルを目指すのであれば、学びという自己投資をやめてはいけないのです。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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