音楽のグルーヴの力を活用しよう!ケリー・マクゴニガルのスタンフォード式人生を変える運動の科学の書評


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スタンフォード式人生を変える運動の科学
著者:ケリー・マクゴニガル
出版社:大和書房

本書の要約

音楽のグルーヴの力を使うことで、元気を取り戻せます。アスリートはテンポの良い音楽を聞くことで、自分の限界を超えられます。音楽によって脳が刺激され、アドレナリン、ドーパミン、エンドルフィンが大量に分泌されると、活力が出て、痛みが緩和されることもわかっています。

音楽の「グルーヴ」の力を活用しよう!

強力な本能によって動かされていた音楽やリズムが聞こえると、体が勝手に動いてしまうのだ。音楽学ではこの衝動を「グルーヴ」と呼んでいる。(ケリー・マクゴニガル)

ケリー・マクゴニガルスタンフォード式人生を変える運動の科学書評を続けます。私は調子が出ない時に、ダンスミュージックを聴くことで、元気を取り戻します。散歩の時にもハウスミュージックBGMに歩調を保つようにしています。音楽やリズムが聞こえると人の体は勝手に動いてしまいます。この音楽が持つグルーヴの力によって、人は幸せになれることが明らかになってきました。

音楽の力で体が勝手に動いてしまう「本能」は生まれてすぐに表れます。生後48時間の新生児も、規則的なリズムを聞き分けることができます。乳児たちはモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の4分の4拍子のリズムに合わせて、にこにこしながら足を動かします。赤ちゃんは、言葉を覚えたりハイハイしたりする前に、音楽に合わせて体を動かす能力や楽しむ能力を身につけているのです。

実際、脳は体を動かすための合図として、音楽を認識するようなのだ。脳スキャナー装置で横になった状態で音楽を聴くと、脳の運動系が活性化するのが見て取れる。音楽が聞こえると、動作を計画する補足運動野や、動作を調整する大脳基底核や果核、動作のタイミングを制御する小脳を含む、脳の運動ループが活性化する。

リズムが激しい音楽、あるいは好みの音楽ほど、脳の それらの領域は活発に動きます。体が安静状態にあるときでも、こうした現象が起こることがわかっています。

神経科学者のオリヴァー・サックスは、「私たちは音楽を聴くとき、筋肉を使って聴いているのだ」と述べています。人生の最大の喜びのひとつは、グルーヴに身を任せることです。音楽によって、人は一体感を得られます。私が高校2年生の時にレゲエの神様のボブ・マリーのライブを見ましたが、彼のグルーヴに会場が一つになり、高揚感を得たことをこの文章を書きながら思い出しました。会場のグルーヴを思い出すことで、40年前の幸せな記憶がよみがえりました。

音楽によって脳が刺激され、アドレナリン、ドーパミン、エンドルフィンが大量に分泌されると、活力が出て、痛みが緩和されます。そのため音楽学者は、音楽には強壮剤のようなパフォーマンス向上効果があると考えています。

時代や文化を問わず、音楽は労働のつらさを軽減し、人びとにやりがいをもたらすために利用されてきました。音楽の効果でエンドルフィンが分泌されると、作業が楽になるだけでなく、ともに働く仲間同士の絆が生まれます。

音楽が人に奇跡をもたらす!

音楽のもつ強壮剤的な効果は、人びとが体の限界を超えて力を発揮するのに役立つ。

ある実験では、糖尿病と高血圧の中年の患者たちを対象に、心臓の強度や持久力を測定する心血管ストレステストを実施しました。参加者たちはトレッドミルの上で歩いたあと、こんどはできるだけ長く走ります。トレッドミルはだんだん速度を上げ、台の傾斜も大きくなっていきます。ほとんどの人は6分で息切れを起こし、8分以内にギブアップしましたが、アップテンポの音楽を聴きながら走った場合は、患者たちは平均で51秒も長く持ちこたえたのです。

いまでは多くのアスリートたちが音楽を活用し、限界にチャレンジしています。音楽をかけた場合、ボート選手や短距離走者や水泳選手たちが、自身のタイムを縮めることができました。ランナーたちは極度の暑さや湿度により長く耐え、トライアスロン選手たちは疲労の限界に達するまでの距離を延ばすことができたのです。アスリートたちが全力を出すときに音楽に合わせて体を動かすと、酸素を効率よく消費できるようになります。

人を元気にするパワーソングには、刺激をもたらす共通の特徴がいくつかあります。たとえば、激しいリズムや力強い曲調、1分間に120拍から140拍のテンポは、世界的に人間の運動にもっとも適したリズムとされています。 効果的なパワーソングの歌詞には、ワーク、ゴー、ランなど、運動と関連する単語が含まれている場合が多いことがわかっています。

英ブルネイ大学のコスタスカラゲオルギス博士は、Spotify の協力を得て670万曲を分析し、エクササイズ効果が高まるプレイリストを作成しました。博士が選んだファレル・ウイリアムズの「ハッピー」やレディ・ガガの「アプローズ」などの楽曲は確かに効果がありそうです。

アスリートは、英雄的なイメージを湧き起こす曲で元気になります。カラゲオルギス博士は、限界まで運動を行う体力テストを実施しましたが、映画『ロッキー3』のテーマ曲「アイ・オブ・ザ・タイガー」が、アスリートたちのやる気を高めました。参加者たちの脳活動の計測記録を調べたところ、この曲の効果によって疲労感を意識しなくなったことで、最初の不快感を乗り越えたことが明らかになったのです。

音楽はパーキンソン病の治療にも役立ちます。パーキンソン病の人でも、音楽を聞くと歩行が楽になるだけでなく、顔による感情表現を引き起こす効果があることもわかりました。楽しい音楽を聞くと、笑うときに口角を頬骨のほうに引き上げる大頬骨筋が、反射的に収縮します。このように自発的な表情があらわれるのは、音楽に込められたミュージシャンの感情が、患者に伝わるからです。

音楽が脳のミラーニューロン系を活性化させることで、ほかの人が思っていることや感じていることを認識し、理解しやすくなるのだ。ミラーニューロンは、音や声、ボディーランゲージ、ジェスチャーによって伝わってきた感情を感知し、コード化する。さらにミラーニューロンは、私たちが人とつながりたいと思ったとき、無意識に相手のまねをするようにうながす。

人は笑顔を向けてくれた相手にほほえみを返したり、誰かの笑い声につられて大笑いしたりします。パーキンソン病になると、顔による感情表現と同じく、無意識に相手のまねをすることが難しくなり、人とのコミュニケーションが取れなくなります。

ところが、音楽とダンスはこの障害を取り除いてくれることがわかってきました。2011年、ドイツのフライブルクでおこなわれた研究では、「パーキンソン病患者のためのダンス・プログラム」に基づいたレッスンを週1回実施したところ、パーキンソン病患者らの、顔の表情による感情表現が増えました。

音楽の力によって、患者が喜びを感じるだけでなく、顔の表情で喜びを表現し、人とつながれます。音楽は私たちにエネルギーを与え、感じる力、表現する力、つながる力を引き出してくれるのです。1991年8月、米国上院特別委員会の高齢化小委員会において、神経科学者のオリヴァー・サックスは、複雑骨折のあとで片脚が完全に麻痺してしまった女性の症例を報告しました。担当の医師たちは、その患者の脳からの信号が、脊髄を経由して脚の筋肉に伝わっている証拠を見つけられませんでした。、彼女の脳は脚の感覚を失っており、脚の動作をコントロールすることは不可能と思われていたのです。ところが、アイルランドの民族舞踊ジグの音楽が聞こえてくると、彼女のつま先が動きだし、リズムを取ることができました。その後、その女性は音楽療法によって歩 けるようになっただけでなく、ふたたび踊れるようになったのです。

音楽は記憶を呼び起こす助けにもなる。なにかの曲で記憶がよみがえって、そのとき、その場所、その瞬間の気持ちを思い出すことがある。

エルヴイス・プレスリーの物まね芸人、ジョシュ・ホワイトは、全米の老人長期介護施設を慰問しています。コミュニケーションができない人や昏睡状態の人までが、特定の曲に反応し、目を開けて瞳を輝かせたのを、彼は何度も目撃しています。

音楽に心を動かされると、その曲が神経系に記憶されるため、その曲を聞くたびに喜びがよみがえるのです。私もボブ・マリーの曲を聞くたびに、ライブを見た40年前の光景を思い出します。彼のグルーヴを聞くたびに、楽しかった高校時代の思い出がよみがえり、幸せな気持ちになれるのです。音楽を聞き続けてきた人生に感謝します!

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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