電通Bチームのニューコンセプト大全 仕事のアイデアが生まれる50の思考法の書評


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ニューコンセプト大全 仕事のアイデアが生まれる50の思考法
著者:電通Bチーム
出版社:KADOKAWA

本書の要約

電通Bチームは「今までの方法を変える」新しい価値観や方法論を生み出すプロジェクトです。既存のアプローチではなく、自分の好きなことや体験から、ビジネスを生み出すことで、イノベーションを起こせるようになります。PlanBというアプローチを選択肢の一つにしましょう。

なぜ、Plan Bが重要なのか?

行き詰まった現状を突破する方法は常にBから生まれる。自分だけの才能や個性を活かせるBチームを作ってみよう!(倉成英俊)

シンクタンク・ユニット「電通Bチーム」をご存知でしょうか?電通Bチームは、株式会社電通の中の特殊クリエーティブチームで、個性的な56人のメンバーが今までとは異なるアプローチで、イノベーションを起こしています。そこから新たなコミュニケーションをデザインしたり、斬新なプロダクトを生み出しています。

私が子供の頃は、アナログ盤が全盛期で、ロックやR&Bの45回転のシングル盤をよく買いました。その当時、A面には売れそうな曲が収録されていましたが、B面は通好みの渋い曲が選ばれていました。中学生の頃から私はB面の曲が好きで、別のアプローチをとることを考える生意気な子供でした。

電通Bチームの倉成英俊氏もビートルズのレコード作りを例に出し、A面にはヒット曲、B面には実験曲が入っていたと述べています。新しいことは小さく、裏(B面)のアプローチから始まることが多いのです。

電通Bチームのメンバーも個人的なB面を活用て、本業(A面)に活かしています。

好きこそ物の上手なれで、モチベーション高く仕事ができる、そして、検索できない、体験に基づく活きた情報が入ってくるメリットもあります。イノベーションは違う情報の新結合。良い情報は必須ですから、すごい武器になります。またふたつ目の意味は、「PlanB」や「ApproachB」のB。今までと違うプランや方法を生むということです。

イノベーションを起こすためには、小さなテストから始めることです。スモールトライすることで、プロダクトの可能性も広がりますし、熱狂的なファンも作れます。「PlanB」から新たなムーブメントが生まれることもあるのです。

本書には、時代に即した新しいアイデアの出し方が50個公開されていますから、今日はこの中から「偏愛」と「Proto type for One」をピックアップし、紹介したいと思います。

偏愛から熱狂的なプロダクトが生まれる??

編集から編愛へ(南木隆介)

最近では、「ひとつ」のものに「偏愛」的にこだわったビジネスが注目を集めています。今までもあるジャンルを集め「編集」的に扱う専門店やセレクトショップ的なものはありましたが、よりひとつにフォーカスし、濃い価値を生み出す偏愛型のショップが増えていると言います。

これだけモノが溢れ、差別化が難しい時代には、「偏愛」と言えるくらい細分化し、特化したほうが人の関心を引けるようになります。白Tシャツだけを何種類も売る千駄ヶ谷の「#FFFFFFT(シロティ)」や食パン専門店などの一つの商品にこだわったショップが人気を集めています。

徹底して絞った視点で、強い差別化につなげる。それは「編集」でできたセレクトショップ型のビジネスとは違う「偏愛のビジネスモデル」と言えるのではないか。

食パンだけを3種類扱うというセントル ザ・ベーカリー経営するル・スティル社の代表取締役、西川隆博氏は兵庫県をルーツにする1947年創業のニシカワ食品の3代目です。西川氏は新規事業として2003年に「日本一・高いパンをつくる」ことを目標にし、美味しいぱんで有名なヴィロンや世界初のエシレバター専門店を出店を出店し、2013年に食パン専門店セントル ザ・ベーカリーをオープンしました。

食パンは日本一食べられているパンであり、市場が大きいことから、食パンという1種類のパンに、素材や製造環境を注力します。その結果、圧倒的に美味しいパンができ、それが競合との差別化につながりました。セントル ザ・ベーカリーは、「偏愛のビジネスモデル」によって、絶対的なオンリーワンの存在になれたのです。

セントルザ・ベーカリーでは顧客が「食パンの偏愛体験」を受けられます。テイクアウトでは焼きたてのパンの湿気がこもらないよう煙突状に開けた包装で渡され、温もりとパンの香りが漂います。店内では、3枚の食パンを3種のバターとともに食べ比べるメニューがあり、比べることで、より味に敏感になれます。店内には、食べ比べる食パンを焼くために、何種類ものトースターが用意され、焼き方も楽しめるようになっています。ここでは、すべての体験が食パンを楽しむために設計されているのです。

驚くことに、セントル・ザ・ベーカリーには自社サイトがありません。西川氏は「情報だけ取りに来てほしいとは思わない。いちばん濃い体験は食べることだからウェブサイトは必要ない」と言います。しかし、検索すれば、食パンを応援する多くの偏愛型ファンの投稿を読めます。彼らはパンのおいしさや自らの体験を積極的に投稿することで、全国のパン好きを引き寄せています。

ひとつのことに「偏愛」的に特化することで、働く職人さんたちも食パンの世界に没頭し、他を圧倒する食パンを作るようになります。食パン一つにこだわることで、食パンのクオリティが日々進化していくのです。効率が求められ、機械化、均質化する市場の中で、「偏愛」が魅力的な商品やサービスを生み出す源泉になり、それが大好きな熱狂的なファンを引き寄せていきます。

「ひとりのため」にがみんなのために。(鳥巣智行)

目の前の大事な人のために、たった一つのプロトタイプを作ることから、巨大なビジネスがスタートすることがあります。有名な公文式も子供のために作ったテキストが口コミで普及することが、ビジネスの原点でした。鳥巣智行氏はそれをPrototype for Oneと名付け、ビジネスの可能性を説明しています。

ターゲットは身近にいる大切な人ですから、彼らの行動や習慣などの観察がすぐでき、彼らの課題を見つけ、解決するためのプロダクト生み出せます。身近な人だから、熱い想いがあるから、プロトタイプをつくるモチベーションも高まります。そのひとりを相手に、トライアル&エラーをしながらPDCAを回しながら、よりよいプロダクトを作れるようにうなります。

最近、ペダルのない子供用の自転車「ストライダー」をよく目にしますが、これはアメリカの片田舎に住む父親のガレージから生まれたPrototype for Oneです。彼はまだ自転車には乗れない2歳の息子のために、市販の子ども用自転車のペダルとブレーキをなくし、足で地面を蹴りながら前へ進めるようにしました。「ストライダー」は、子どもの好奇心を刺激し続けるだけでなく、バランス感覚の向上にも役立ち、自転車に乗る前のトライアルにもなります。

一人のためのプロトタイプ作りからイノベーションが生まれることがあります。マスアプローチのペルソナ型のプロダクト開発だけでなく、このアプローチBをとることで、今までとは全く異なったアイデアが生まれます。

偏愛アプローチや身近な人の課題を解決するなど「今までの方法を変える」ことで、他者が考えてもいないマーケットを創造できます。時には個人的なアプローチから、ビジネスを捉えてみましょう。自分の好きなことや好きな人を思う気持ちから、思いがけないプロダクトが生まれることがあるのです。

広告会社をやめた後の私の人生もB面からのアプローチで仕事を動かしてきました。この5年で、様々なベンチャーの新規事業のサポートをしてきましたが、その中には偏愛型の起業家もいれば、プロトタイプ型の経営者もいました。ベンチャーが競合と差別化するためには、熱狂的なファンやネオフィリアと呼ばれる新しもの好きを巻き込む必要があります。そのためには、自分の好きなことやこだわりをビジネスのネタにすべきです。プロダクトのストーリーを語り、共感を生み出すことが、ベンチャー・スタートアップの経営者には欠かせません。

今後も何回に分けて、本書のコンセプトを紹介します。

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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