冨山和彦氏のコーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変えるの書評


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コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える
著者:冨山和彦
出版社:文藝春秋

本書の要約

破壊的イノベーションの時代には、コーポレート・トランスフォーメーション(CX)で、アーキテクチャを根本的に変容するCX経営が求められています。「両利きの経営」を実践するためには古い組織を壊し、トランスフォーメーションをスピーディに行う強力なリーダーが不可欠です。

アフター・コロナはアーキテクチャ・コントロール・ゲームの時代

DXはコロナショックでさらに加速するだろうし、グローバル化はサイバー空間では加速しながら、リアル空間ではローカル化が進む「グローカルモデル」化しつつ進んでいく可能性が高い。古いモデルは、いずれにしてもますます有効性を失うのである。(冨山和彦)

前作のコロナショック・サバイバル 日本経済復興計画で、アフターコロナ時代の日本の近未来を予測した冨山和彦氏が、今度は日本の会社が生き残るための処方箋を用意してくれました。売り上げがなくなる中で、キャッシュポジションを高めるなど、経営者の8つの心得を前作では紹介していましたが、今回の続編では変容(トランスフォーメーション)をテーマに、新しい企業のあり方がわかりやすく説明されています。(前作の書評ブログはこちらから

戦後、ジェームス・アベグレン氏やエズラ・ヴォーゲル教授が、褒め称え、世界に紹介した「日本的経営」、「日本的カイシャモデル」はもはや過去の異物でしかなく、日本的経営の悪しき部分が目立つようになりました。日本社会は過去の成功の呪縛、それも30年以上も前の成功の呪縛で、世界に比べて一周遅れとなっています。冨山氏は自分の過去のコンサルの失敗例まであげながら、日本的経営がいかに時代遅れになっているかを説き明かします。

GAFAや中国のベンチャーなどの新興勢力は、競争のルールを変える戦いを挑むことで、日本企業を追い詰めたのです。スティーブ・ジョブズが仕掛けたiPhoneというゲーム・チエンジング、ビジネスモデルの転換スピードを競う戦いによって、日本の携帯電話メーカーは一気に負け組にな理ました。

YouTubeやネットフリックスといった新興勢力が、まさに既存のTV業界を破壊していますが、今後あらゆる業界がアーキテクチャ競争に巻き込まれていきます。デジタル時代の産業構造は、アップルやアマゾンなどの「脳」が肉体を支配するヒエラルキーになり、アーキテクチャーの上位にいる企業が勝利するようになっています。

新しく作り出される産業構造、ビジネスモデルの頂点(脳)を取りに行く戦いなのです。このアーキテクチャ・コントロール・ゲームの時代において、従来の日本的経営モデル、日本的カイシャモデルはチカラを失います。今回のコロナウイルスによる破壊的なショックは、日本だけでなく、世界中の会社に経営の見直しを求めていますが、今回、日本自身が、過去の呪縛を断ち切らなければ、本当の負け組になってしまうのです。

CXを微分すれば、それはすなわち個人としての働き方、生き方のトランスフォーメーションとなり、CXを積分すれば、それは社会や国家としてのトランスフォーメーションとなる。

個人も会社の経営者もトランスフォーメーションが求められています。ビフォア・コロナの時代にはもう戻らないと考え、私たちは変容をキーワードに時代に適応し、イノベーションを起こすべきです。

両利きの経営が成功の鍵

この30年間に度々やってきた経済危機の中で、今回のコロナショックは最大級の破壊性を持っている。この破壊的ショックに乗じて、すべての経営者、企業の大中小、伝統企業とベンチャー企業とを問わず、日本的経営なるものからの完全決別を宣言し、その宣言を実行に移すべき時である。

日本も、世界も、今回のコロナショックを契機に、企業も個人もモア・トランスフォーメーションの時代に入ります。会社の経営だけでなく、私たちの働き方、生き方が大きな影響を受けます。私が役員やアドバイザーをしている会社でも、テレワークが当たり前になり、そのうちの一社はオフィスを閉じる選択をしました。今までであれば、このような大きな決断をするのに時間がかかっていましたが、この時代を乗り切るためにトランスフォーメーションが一気に進んでいます。

私たちはこのコロナ禍をチャンスに変えるべきです。古い日本経営モデルから脱却するための思い切ったコーポレート・トランスフォーメーション(CX)を推進することが求められています。そのためのヒントがチャールズ・A.オライリー、 マイケル・L. タッシュマンの両利きの経営にあると冨山氏は言います。(両利きの経営の書評

イノベーションの時代を経営するには、一方で既存事業を「深化」して収益力、競争力をより強固にする経営と、イノベーションによる新たな成長機会を「探 索」しビジネスとしてものにしていく経営の両方が求められる。

「両利きの経営」すなわち、既存事業の強化、深化と破壊的イノベーションへの投資を同時に進めることが経営者に求められています。既存事業の収益性を上げることで、イノベーションへの投資を十分に行えるようになります。破壊的イノベーションをした業界でも、生き残る為には改良的なイノベーションが必要で、私たちは顧客に向き合い、顧客体験を高める努力を続けなければなりません。

「両利き経営」の必要3要件は以下の3つだと著者は指摘します。
■本業の稼ぐ力
■事業と機能新陳代謝力、組織能力の多様性
■流動性をしっかりクリアする

破壊的イノベーションの時代、破壊的環境変化の時代、最大最強の戦略行動は、その両方ができるような組織能力を身に付けること、コーポレート・トランスフォーメーション(CX)でアーキテクチャを根本的に変容するCX経営なのである。

「両利きの経営」を実践するためには、古い組織を壊し、強力なリーダーやプロフェッショナル経営者を雇う必要があります。顧客、社員、株主にビジョンや存在価値を示し、スピーディに会社をトランスフォーメーションできるリーダーがいなければ、生き残りは厳しくなりそうです。

アマゾンは誰かが思いついた斬新なアイデアや、テクノロジーブレークスルーを「探索」し、さっさと取り込んで次々と「深化」させて、競争障壁を築いてきた会社だと冨山氏は言います。偶然頼みの破壊的イノベーションシーズを自作することに拘らないしたたかなマネジメント力によって、アマゾンは大きく成長したのです。0から1を作り出すことが苦手な日本企業は、このアマゾンの力を見習うことで、本業に特化することができます。

事業ポートフォリオ経営に加えて、アーキテクチャ構築力に関わる組織能力を含めた機能ポートフォリオ経営までをクリアすることが、アフター・コロナ時代の経営者には求められます。ポートフォリオの見直し、入れ替え、デジタル化の推進、多様性のある組織運営など「両利きの経営」には新陳代謝が欠かせません。

今の60代の経営者にそれができるのか?と問えば、答えは明らかです。抜本的な組織改革をする勇気、イノベーションを起こせる人材を組織に作り出すことが重要です。多様性を受入れ、ルールの異なる競争でも、優位性を発揮できる人材を揃えた企業が、今後の勝ち組になるのです。大企業だけでなく、中小企業もトランスフォーメーションをキーワードに「両利きの経営」を行うべきです。

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