田中道昭氏の2025年のデジタル資本主義: 「データの時代」から「プライバシーの時代」への書評


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2025年のデジタル資本主義: 「データの時代」から「プライバシーの時代」へ
著者:田中道昭
出版社:NHK出版

本書の要約

プライバシー規制強化の中で、GAFAに厳しい目が向けられています。中央集権型社会から個人の幸福にフォーカスする分散型フラット型社会にシフトする中で、日本企業にも再び飛躍するチャンスが訪れます。企業は人間中心主義を取り入れ、顧客と従業員を満足させる経営を行うべきです。

プライバー規制が日本企業のチャンスになる?

デジタル化の流れが一つの岐路に立たされています。デジタル化の弊害が顕著化してきているのです。(田中道昭)

本書の帯には、「日本の活路はどこにあるのか?」という著者からの強烈な問いかけが書かれています。データを独占するGAFAが力を増す中で、日本の企業が生き残る方法はあるのでしょうか?GoogleとFacebookの2社の実態を間違えてはいけません。実はこの2社の収益は広告から上がっています。彼らはクッキー情報やをSNSの機能を拡張し、顧客を丸裸にしながら、広告で利益をあげているのです。

デジタル広告ビジネスにおいて、GoogleとFacebookの勢いが止まりません。WARC社の調査によると、両社で全世界のあらゆる種類の広告費の24.5%を占め、デジタル広告のみを見ると、GoogleとFacebookは2018年の広告費の56.4%を独占しました。

しかし、個人データの利用に関する規制が強化される中で、デジタル・マーケティングや広告ビジネスは変化せざるをえません。GoogleやFacebookもプライバシー規制強化の中で、厳しい目に晒されるようにになると著者は指摘します。田中氏はGoogoleのビジネスモデルを否定するBraveというブラウザを紹介しながら、ユーザーにも広告の利益が配分されるべきだと言います。同社は分散型のデジタルプラットフォームを提供することで、ユーザーは見たくない広告をブロックしながら、見たい広告を見る権利を得られるのです。これにより広告主やメディアの立ち位置も変わるはずです。今後は広告ビジネスにもD2Cの視点が欠かせなくなり、顧客との信頼関係が欠かせなくなるはずです。Braveのように広告料を顧客とシェアすることが当たり前になるかもしれません。

広告主:プライバシーを保護しながらユーザーとの良好な関係を構築
メディア:コンテンツの価値を高め、その対価として個人データというマーケティング資産を活用し、広告ビジネスを行う。

データの利用でもプライバシー重視でも欧米に立ち遅れている日本は、後発組みとして利益を享受しながら、将来世界をリードするための戦略的な動きを今こそ進めるべきです。プライバシーを保護するためのテクノロジーである「プライバシー・テック」に注力することで、再び日本企業が復活できるかもしれないのです。

ポストGAFAのキーワドは人間中心主義

田中氏はGAFAの次に来るものを10の論点として、以下のように整理しています。
1、「中央集権型社会」から「分散フラット型社会」への転換
2、「株主偏重主義」から「ステークホルダー主義」への転換
3、「大胆なビジョン」から「社会に求められる目的」への転換
4、真の社会価値重視社会の到来
5、プロダクトセントリックからカスタマーセントリックへの転換
6、「メディア」になることが求めらる組織と人
7、アンビエントコンピューティングの時代
8、ホリスティックが求められ、それが可能となる時代の到来
9、「会社の芯からSDGsに対峙する」時代の到来
10、「データの時代」と「プライバシー」の時代の到来

データをGAFAが独り占めするのではなく、個人が一人一人主役になり、それぞれが責任を持ち、ゆるくつながる社会を生み出されば、日本にもチャンスがあるはずです。アメリカ企業と日本企業の良い点を融合した「三方良し」のアップデートにより、日本企業は飛躍できる可能性があります。企業が人間中心主義を採用することで、顧客も従業員もハッピーになれるのです。テクノロジーが進化する中で、カスタマーセントリック(顧客第一主義)が当たり前になる中で、この考え方を取り入れられなければ、日本企業は取り残されるはずです。

Amazon Goのカスタマーエクスペリエンスと日本企業の無人レジの間には大きな開きがあります。GAFAやBATHは利益をあげながら、顧客体験を高めることにも注力しています。しかし、日本企業は顧客視点が抜け落ち、人間中心主義を実現できずにいます。本書の10の提案を取り入れ、日本企業は今すぐにでも、人間中心型の経営にシフトすべきです。

Society5.0が「経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」であり「人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることができる社会」であるならば、日本こそがデータとプライバシーの両立をリードする存在になるべきだと、私は考えます。

本書でも取り上げられるトヨタイムズはコロナ時代のマーケティングに必要なことが凝縮されています。経営者と従業員が影響力を持ち、世の中を変える意志を示すことで、顧客をファンにすることができるのです。経営者も従業員も顧客も不安な時代に、力強いメッセージを発信することの重要性に気づけました。

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本書の最後にコロナ時代の新しい生き方が提案されていますが、その中にメルケルの覚悟のある演説が紹介されています。実はドイツと日本のコロナ対策予算は同額ですが、中身は似て非なるものになっています。ドイツのスピーディで力のある政策を見習い、国民を救うことを目的にした政策を日本政府に期待したいと思います。しかし、現実は厳しく、日本政府がもっとも人間中心主義に遠い存在であることが明らかになりつつあります。この日本政府の弱者に冷たい姿勢が、日本人が不幸である最大の理由かもしれません。

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