老化は過去のものになる?LIFE SPAN(ライフスパン)―老いなき世界の書評


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LIFE SPAN(ライフスパン)―老いなき世界
著者:デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント
出版社:東洋経済新報社

本書の要約

バイオテクノロジーによって様々な治療法が変わり、老化はやがて過去のものになります。老化研究では細胞のリプログラミングが、次のフロンティアになりそうです。しかし、この技術には倫理的な問題があることを忘れてはいけません。誰にどの病状ならこの技術を使うのか?を真剣に議論する必要があります。

細胞のリプラミングによって、長寿社会が到来する?

細胞のリプログラミングは社会に大きな影響を及ぼすおそれがあるため、この技術を巡る倫理問題については早いうちに議論を始めたほうがいい。実用化されてからでは遅すぎる。

デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラントLIFE SPAN(ライフスパン)―老いなき世界書評を続けます。著者たちは老化は病気の一種でしかなく、やがて治療が可能になると言います。最近では、サーチュイン系の遺伝子が寿命の鍵をになっていることが明らかになりました。レスベラトロールやNMNなどを摂取することで、老化を防げると著者は指摘します。

当然、NMNの投与だけでなく、細胞のリプラミングや遺伝子編集などのバイオテクノロジーによって、私たちの寿命は確実に伸ばせるようになります。デビッド・A・シンクレアの研究室では、リプログランミングのための遺伝子を体内に導入することで、マウスのエピゲノムを若返らせることに成功しています。エピゲノムはDNAの配列を司るソフトウェアで、これを若返らせることで老化が防げます。OSK遺伝子(Oct4 Sox2 Klf4)を体内に投与することでマウスの老化が食い止められ、以後神経細胞は老化せず、死滅しないと言うのです。

やがてこの技術が進化すれば、成人の体細胞や、老化した神経までもリプログラミングすることで、私たちは若々しいエピゲノムを取り戻せるのです。

どう控えめにいっても未来は面白くなりそうである。最も治しにくいものを治し、最も再生困難な体細胞を再生できるのなら、再生できる細胞の種類に限りはないのかもしれない。そう、損傷したばかりの脊髄を修復できるのはもちろん、老化によってダメージの加わった体組織なら何でも元に戻せることになる。肝臓、腎臓、心臓から脳に至るまで、対象から外れるものはーつもない。

細胞のリプログラミングなどのバイオテクノロジーによって、様々な病気の治療法が変わり、老化はやがて過去のものになります。老化研究では細胞のリプログラミングが、次のフロンティアになりそうです。

遺伝子組み換えのリスクは倫理問題?

細胞のリプラミングや遺伝子編集などのバイオテクノロジーには、当然リスクがあります。しかし、世の中には、「思い切った一歩を踏み出す」のを厭わない人が大勢います。老化に伴う病気によって寝たきりになってはいますが、健全な精神を有した90代、100代の有志たちは、自分の人生の晩年をよりよいものにしたいと考えます。あるいは、自分の子どもや孫やひ孫たちに、より長く健康な人生を与えてやりたいと願っています。こういった人たちがアーリーアダプターとなり、高額な治療をスタートするはずです。

リプログラミングの安全性が高まって、予防目的でも使用できるようになると、倫理問題はより一層複雑になってきます。
著者はいくつかの問題を指摘します。
■何歳でリプログラミングが行なわれるべきなのか?
■リプログラミングのスイッチを入れる抗生物質を処方されるには、まず何らかの病気を発症しなければだめなのか?
■主流の医師たちが支援を拒んだ場合、人々は海外を目指すことになるのか?
■この技術によって医療費が著しく削減されるなら、リプログラミングを義務化すべきなのか?
■より長く健康な人生を子どもたちに与えてあげられるのなら、私たちにはそうする道義的責任があるのか?
■子どもの眼を治したり、脊髄の損傷を回復させたりするのにリプログラミングが役立つのなら、何も事故が起きないうちから、リプログラミング遺伝子を体内に導入しておくべきなのだろうか?
■敢えて老化することを選ぶ権利もすべての人に与えるべきなのか?
■若返る選択をした人たちは、そうではない人たちのためにやはり医療費を支払わなくてはいけない?
■人より早く家族の重荷になるのを承知のうえでリプログラミングを受けないのは、倫理にもとる行為になるのか?

また、これ以外にも遺伝子組み換えは、倫理という大きな問題を抱えています。2018年11月、中国の研究者ヘ・ジャンクイが、遺伝子組み換えをした子どもを世界で初めてつくり出したと発表しました。その誕生を機に、ゲノム編集で「デザイナーベビー」を生み出すことの是非を巡って科学界に議論が巻き起こりました。

へ・ジャンクイの狙いは、双子にHIVへの耐性をもたせるためだったとされています。しかし、実際、中国でHIVに感染する割合は1000人に1人にも至りません。リスクに見合うよう、できるだけ大きな健康効果を得たいなら、なぜ心臓病の原因遺伝子を編集しなかったのかと著者は疑問を呈します。中国ではほぼ2人に1人が心臓病で亡くなっており、はるかにHIVより効果を実感する人が多いのです。

へ・ジャンクイのような不届きな科学者がまた現われて、目的のためなら手段を選ばない世界一過保護な親と手を組み、老化の影響に耐性をもった遺伝子組み換え一家をつくる可能性があります。無神論国家である中国とキリスト教を信じる欧米では、新たな命に対する価値観が異なります。宗教というブレーキがない中国では、今後もこういったことが起こる可能性が高いのです。

大金持ちが遺伝子操作することで、普通の人間とは異なる脳や体を持つようになり、ハイパーヒューマンが登場する可能性も否定できません。ハイパーヒューマンと普通の人間との格差が浮上し、身分が固定することで社会は二極化していきます。

バイオテクノロジーが普及する中で、倫理的な問題が今後浮上することは間違いありません。私たちは正しい結論を見出すために、真剣な議論をすべきです。技術の進化は私たちが思っている以上にスピーディーで、よくない輩が現れることは間違いないのですから!

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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