直感を信じた行動がなぜリスクをもたらすのか?


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Think right 誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法
著者:ロルフ・ドベリ
出版社:サンマーク出版

本書の要約

不合理な行動は、理性が感情がコントロールできない時に起こります。また、現代のような複雑な社会では、直感だけを信じて行動すると、思考の落とし穴に簡単にハマってしまいます。重要な選択をする際には、出来る限り慎重かつ合理的に判断を下すようにしましょう。

不合理な行動を説明する「熱い理論」と「冷たい理論」

「不合理な行動」についての理論には、「熱い理論」と「冷たい理論」がある。「熱い理論」は古くから存在している。プラトンは、「感情」と「理性」の関係を、激しく疾走する馬とそれを操る馭者にたとえた。理性が感情をコントロールするのである。だが、それがうまくいかないと、愚かな結果が待っている。(ロルフ・ドベリ)

ロルフ・ドベリThink right 誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法書評を続けます。何かを決断する時に感情と理性を上手にコントロールすることで、よい結果を得られますが、人は感情の生き物で、相手とのやりとりの中で、自分を失い、失敗を起こしがちです。

「感情」は火口から噴き出す溶岩で、時に理性では抑えきれず、爆発してしまいます。不合理な行動は感情が爆発したときに起こると考えられていることから、「熱い理論」と名付けられたのです。何百年以上にもわたり、不合理な行動が起こる原因は、熱い理論で説明されてきました。

フランス生まれの神学者で宗教改革の指導者だったジャン・カルヴァンは、「感情は悪であり、感情を抑えこむには神に頼るしかない」と唱えていたほどです。フロイトは「感情」は自我と超自我でコントロールされると述べています。

もう一つの「冷たい理論」は、ナチスの全体主義が起こった理由を研究する中で生まれました。ヒトラー政権では、感情が爆発する場面がほとんど見られませんでした。ヒトラーの熱狂的な演説も、感情を爆発させたものではなく、一種の芝居でしかありませんでした。全体主義というヒトラーの考えが、国民を間違った方向に導いていったのです。ロシアのスターリンやカンボジア共産党(赤色クメール)についても同じようなことが言えます。これらの独裁政権は、計算し尽くされた計画のもとに、人々を悪い方向に道連れにしたのです。

ナチスの行動の背景には、感情の爆発がなくても何らかの誤り、つまり論理的ではない考え方があったに違いありません。 1960年代に入り、心理学者たちは、人間の思考や決定の仕方や行動パターンについて、「不合理な行動は、感情を抑えられないために起こる」というこれまでの理論とは別の視点に立った研究を始めました。その結果生まれたのが、人間の不合理な行動に関する「冷たい理論」です。

この理論では、人間というものは、そもそも論理的に考えずに間違いをおかしやすい。それは、すべての人に当てはまると考える。優れた知性をもちあわせている人ですら、同じ落とし穴に何度もハマりこんでは、試行錯誤をくり返している。こうした誤りは偶然に起こるのではない。ハマった落とし穴の種類によって、決まった方向に間違いをおかすのである。

私たち人間は間違いを犯しやすい生き物だと考えることで、過ちを予測でき、ある程度、自分の行動を修正することができます。思考の落とし穴で失敗しないために、私たちは過去の人間の失敗を学ぶべきです。

重要な決断をする際には、著者が本書に紹介しているリストやエピソードを参考にして、じっくり考え、行動するようにしましょう。感情を爆発させない術を学ぶことで、人は失敗を減らせます。また、一見正しそうな話を信じ、不合理な選択をしないように注意を払うべきです。複雑になった世の中では、自分の直感を信じ、行動することはとても危険なことなのです。

現代人が直感的に行動してはいけない理由

わたしたちは生物学的には、原始人となんら違いはなく、どんなにブランドの服に身を固めても、脳をはじめとする肉体は、狩猟と採集をする人間にすぎないのである。変化したのは「人間そのもの」ではなく、わたしたちが暮らす「環境」のほうだ。

原始時代は、大きな変化がなく、日々同じようなことを繰り返していました。世の中が激しく変化し始めたのは、農耕や牧畜が始まった1万年ほど前のことです。都市が形成され、国と国の間で取引が行われるようになり、環境が大きく変化したのです。

テクノロジーが進化することで、人間の脳にとって最適な環境はもはやほとんど残っていないと著者は指摘します。現代人は、ショッピングセンターを1時間ぶらぶらするだけで、私たちの祖先が一生の間に見かけたよりもたくさんの人間を目にします。AIやバイオテクノロジーの進展によって、私たちはもはや人が理解できない世界を生きているのです。

いまや10年後の世界がどんなふうになるかがわかると言う人がいたら、笑い飛ばされるだろう。この1万年の間に、人間は、自分たちでももはや理解することのできない世界をつくり上げてしまったのだ。 

私たちは「物質的な豊かさ」を手に入れましたが、その代償として、「思考の落とし穴」も生み出してしまったのです。

今後も社会はますます複雑になり、わたしたちは、より頻繁にこの落とし穴にハマり、より深刻な問題に直面するはずです。 たとえば、狩猟や採集といった環境においては、「考える」作業よりも、実際に「行動する」ほうが、はるかに重要でした。

私たちの祖先が生き延びるためには、「即座に反応する」ことが重要で、「長いことあれこれ思い悩む」のは大きなマイナスでした。仲間が急にその場を走り去ったら、自分もすぐにあとを追って逃げることに意味があったのです。

仲間が目撃したのは、本当にトラだったのか、ただのイノシシだったのか、それすら考えずにただ逃げ出すことが正しい選択でした。そのときに、第1の間違い(危険な動物がいるのに逃げなかった)をおかせば、命を失っていたはずです。

第2の間違い(危険な動物ではないのに逃げ出した)をおかしても、エネルギーを少々消費するだけで、命を失うわけではありません。逃げ出さなかった人は、遺伝子を残すことができずに消えていったのです。つまり、現存している私たちホモ・サピエンスは、他人のあとをついて逃げてばかりいた人間の子孫だと言えるのです。

私たちの祖先の当たり前は、現代人には不利になります。何も考えずに、人の真似をするという「直感的な行動」により、私たちは多くの間違いを起こします。現代では、しっかり考え、自主的に行動するほうが、価値が高いのです。

思考の落とし穴で失敗しないためには、重要な選択をする時に、すぐに直感で動くことをやめた方がよさそうです。複雑になった世の中では、答えは単純でないことが多いのですから、出来る限り慎重かつ合理的に判断を下すようにしましょう。よい結果を出すためには、正しい選択をするために、思考の落とし穴に十分注意を払うべきです。本書のリストを読むことで、失敗を最小限にできるようになります。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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