尾原和啓氏と山口周氏の仮想空間シフトの書評


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仮想空間シフト
著者:尾原和啓、山口周
出版社:エムディエヌコーポレーション(MdN)

本書の要約

今回のコロナ禍が私たちの働き方を変え、過去の仕事の常識が通用しなくなりました。今後、仕事だけでなく、暮らしや社会も変化する中で、私たちは思考と行動を変えなければなりません。自分のアイデンティを一つに絞るのをやめ、様々なアイデンティを組み合わせ、自分の価値を高め、世の中に貢献すべきです。

アフターコロナで加速する仮想空間シフト

アフターコロナという時代は、ビフォアコロナの時代に信じられていたフィクションがどんどん剥がれていく時代になる。(尾原和啓)

今回のコロナ禍で、私たちの仕事が一気に変わりました。オフィスに通勤するのではなく、在宅勤務が当たり前になる中で、仕事や私たちの暮らしが変わりました。これまでは働く場所が生活する場所を決めていましたが、今回のコロナ禍がその常識を壊しました。通勤がなくなり在宅勤務が日常化することで、移動時間が減り、趣味や副業に時間を使えるようになりました。今後、Zoomやチャットなどの仮想空間で働くことが当たり前になることを、フューチャリストの尾原和啓氏は「仮想空間シフト」とネーミングしました。

尾原氏は、著述家の山口周氏との対談の中で、今回のコロナ禍が今後5つの変化を引き起こすと指摘します。
(1)仕事が変わる
(2)暮らしが変わる
(3)社会が変わる
(4)人生が変わる
(5)国と行政が変わる
コロナ禍が続き、変化が避けられない中で、私たちはどう生きていけばよいのでしょうか?山口氏はこれから起こる変化を前向きに捉えるべきだと言います。

アフターコロナ、というと「どんな未来が来るのか心配だ」と思いがちで、もちろんコロナウイルスそのものの脅威は今後もあるわけですが、社会や働き方の変化という意味では明るい未来を構想することも可能です。日本の社会が幕末の外圧、太平洋戦争の敗戦という2回の危機を契機に大きく変化したように、今回の危機を前向きな変化の契機とできるかどうかで未来が大きく変わってしまう。山口周)

さまざまな制約がなくなり、自由度が高まる未来が現れることで、私たちは今まで以上に自分の人生を楽しめるようになります。未来を悲観せず、自分の可能性にチャレンジしましょう。

仕事がプロジェクト単位になることや、住む場所が仕事によって縛られなくなれば、人間関係の悩みは大きく減ります。今まで以上にインターネット上での活動が増えれば、嫌な人と敢えて付き合う必要もなくなります。自分の好きないくつかの仕事を組み合わせれば、ある程度の収入を得られるようになれば、人間関係というストレスの原因がなくなり、心の平穏も維持できます。

場所や会社などの制約条件がなくなれば、選択肢が広がります。「新しい生活様式」や働き方に適応し、幸せに働く人が増えれば、キャズム理論通りに多くの人の働き方が変わるはずです。

ビジョンがますます重要になる!

熱狂できる仕事さえ提示することができれば、報酬は関係なく世界中の人が手伝ってくれる可能性がある。(山口周)

働く場がインターネットという仮想空間にシフトしたことで、ビジョンが大事になってきました。報酬よりもやりがいを重視する若い世代が台頭する中で、経営者には魅力的なイシューを示すことが求められています。問題を解決する能力よりも課題発見力の方が、今後、はるかに重要なスキルになっていくはずです。ビジョンに合わない意見を持つメンバーが多くいる会社は、仮想空間では意思の疎通が難しくなり、それだけで生産性を下げてしまいます。

ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則ジム・コリンズが指摘するように同じバスに乗る人を決めなければなりません。ビジョンに共感し、自ら考え、動けるメンバーが、様々な課題を発見し、解決していきます。社長が掲げたビジョンに共感する人だけが集まり、愚直にその問題に取り組む組織が、仮想空間での仕事の生産性を高めていくはずです。

今後、経営者も社員も自分を経営するような視点が必要になります。 マッキンゼーが提唱した「ポートフォリオ・オブ・イニシアティブ」(POI)という考えを採用し、短期的な収益と、将来のための種まきのバランスを意識しなければなりません。一人で働く時間とみんなで働く時間を意識し、短期的な目的以外のことにも時間を使うべきです。一人で働く時間が増えるとついつい無理をしてしまいます。あまり自分を追い込みすぎず、心と体の健康のための時間も確保しましょう。

上のマトリックスの右側と左側の両方のバランスを取りながら、自分の価値を高めるようにするのです。仮想空間によってマトリックスの右側の活動が効率よくできるようになったとしても、左側が不足し、新しい課題を見出せなければ、自分の未来を暗くしてしまうと考えるのです。

ライフシフトで有名なリンダ・グラットンは「人生に必要な資産は3つある」と述べています。この3つの資産を備えられれば、バランスのよいマトリックスをつくれます。
1、生産性資産
生産力を上げるための資産 仕事に役立つスキルや知識、仕事につながる人間関係や評判など。
2、変身資産(自分をコモディティ化させない)
今の自分とは違う自分に変身するための資産。多様な人的ネットークを持ち、新しい環境に適応できる能力
3、活力資産
肉体的・精神的な健康と幸福がなければ、長く楽しく働けません。自らの健康維持と幅広いネットワークを構築しましょう。

今後は、一つの会社で働くのではなく、プロジェクトベースで働くことが当たり前になります。さまざまなプロジェクトを渡り歩く際には、一人一人がいくつものアイデンティティを持つようになります。尾原氏は自分のアイデンティや役割を好きになることが重要だと言います。

その中で自分のアイデンティティを好きになるためには、その自分の役割、係を好きになれないといけないわけですが、それはすなわち「仕事の目的、意味」です。だから、魅力的なイシューのもとで、熱量を持って仕事を消費するということが、自分というアイデンティティを愛して精神状態を健康に保つことになるわけです。

また、アイデンティティを複数持っていれば、一つのアイデンティティがダメになっても、他のアイデンティティを活用することで、生活レベルを下げることなしに、豊かな人生を送れます。

今回、コロナ禍で明らかになったことは、一つの収入だけを頼ってはいけないということです。本当に安定した収入を得るためには、複数の収入源を持つべきです。一つの会社に依存するという考え方をやめ、自分が適材適所になれる場を探しましょう。仮想空間シフトが広がれば、新たな課題が出現し、自分のやりたい仕事が見つかるはずです。また、他社からのオファーを受けるために、自分のビジョンやスキルを日頃から積極的にアウトプットするようにしましょう。

会社の中で居場所がなくなったとしても、仮想空間での働き方が当たり前になれば、自分のアイデンティを多様化することで、会社に依存しなくてもすみます。嫌な同僚や上司との付き合いを減らし、仮想空間でいくつかの仕事を組み合わせれば、パートナーから感謝されるようになります。好きな人と好きな仕事をするようになれば、生産性が高まり、収入がアップするだけでなく、人間関係から生じるストレスにも苦しまなくなります。

私は6年前に独立し、複数の会社で社外役員やアドバイザリーをしていますが、会社ごとにアイデンティティを変えています。それぞれの会社で自分の異なるスキルを提供することで、私は多くの経営者から感謝されるようになりました。

働き方を変え、自分の時間を増やすことで、私の人生は面白くなりました。アイデンティを複数持つ働き方が、人生の質を高めてくれ、幸福度も確実にアップしています。働き方を変えることで、無形資産と有形資産を同時に増やせるようになるのです。仮想空間シフトが未来を明るくすると考え、自分の価値を棚卸し、ポートフォリオを再構築しましょう。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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