ベンチャーという職場は猛獣園である?VUCAの時代の組織の作り方。


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その仕事、全部やめてみよう――1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」
著者:小野和俊
出版社:ダイヤモンド社

本書の要約

今までは、同質化により秩序を保つことが是とされてきましたが、時代の急激な変化に適応するためには、異質な人たち(猛獣)の能力がぶつかり合う多様な組織を作るべきです。猛獣たちが多様なカオスを作り、彼らの能力を引き出すことが、VUCAの時代の経営者の重要なタスクになっています。

ベンチャーの職場は「猛獣園」である?

チームは2つに分けられる。1つは、同質の人たち「だけ」で構成されるチーム。もうーつは、異質な人たちで構成されるチームだ。前者は歴史ある日本の大企業でよく見かける。製造業等、過去の成功体験をしっかり踏襲していくことが重要視される世界では、こうしたチームがいまも強いのかもしれない。一方で、後者のチームはいつもカオスで、環境が目まぐるしく変わっていく状況に強い。IT ベンチャーはその典型だ。(小野和俊)

小野和俊氏のその仕事、全部やめてみよう――1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」の中に、『ベンチャーの職場は「猛獣園」である』という考え方が紹介されています。(本書の関連記事はこちらから

デジタル化の波が押し寄せ、あらゆる企業が方針転換を迫られています。今までは、同質化により秩序を保つことが是とされてきましたが、時代の急激な変化に適応するためには、異質な人たちの能力がぶつかり合う多様な組織を作る必要が出てきました。似通った才能を集めるのではなく、多様なカオスを作ることが、VUCAの時代の経営者には求められています。しかし、そこには異質な才能を一つにまとめるという難問があります。(VUCA=Volatilit、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの頭文字をつなげた言葉)

では、突出した能力を持つ人たちを一つの組織にまとめるために、リーダーはどうすればよいのでしょうか?著者の小野氏はITベンチャーと大企業、両方の組織の経営経験がありますが、彼は職場を「猛獣園」と捉えるべきだと言います。

多様性に満ち、突き抜けた人材のいるチームは、1つの濫の中にライオンとトラとゾウと裸の人間が一緒に暮らしているようなものだ。こうしたチームを「猛獣園」と呼ぼう。猛獣園は危険に満ちている。空腹のライオンが人間の腕に噛みついたときに「ちょっと待って、僕の意見も聞いてもらえるかな?」と説得を試みようものなら、その最中に首にも噛みつかれて絶命するだろう。

腕に自信のある優秀なエンジニアが、自分の設計やプログラムを否定されたとき、怒りを爆発させ、周囲に当たり散らすことがあります。これは、空腹のライオンが周囲の人間に噛みつくのと同じ現象で、優秀な人がいるベンチャー企業ではよくある話です。

時には暴力的になるほどこだわりを持っている人の話には、重要な内容が含まれていたり、解決のヒントが隠されています。メンバー間で意見が分かれ、もめたときには、リーダーは冷静になるべきです。以下のステップでコミュニケーションをはかり、今後の方針を作るようにしましょう。
1、メンバー全員の意見を聞くと宣言する。
2、意見がある人から発言してもらう。発言中は反論せず、全員でその人の話を最後まで聞く。
3、全員の意見を聞いたあと、リーダーが方針を明らかにする。

メンバーの意見はできるだけ尊重すべきですが、締めるべきところはしっかり締める必要があります。猛獣園ではこの意思決定法が驚くほど機能します。 メンバーが意見を述べる機会を与えられること、全員が傾聴することで、チームにまとまりが生まれます。

そもそもライオン(猛獣)がなぜ噛みつくかというと、空腹や危険を感じるからです。同じように突出した人材は、自分の伝えたいことがきちんと伝わっていないと感じたり、周囲から反対意見を次々と浴びせられ、身の危険を感じるから、人に襲いかかるのです。

メンバーの長所を見出し、褒める文化を組織に作ろう!

優秀なエンジニアは変わっている人が多い。だから一般常識で見ると、優秀さの前に「変なところ」が目立ち、「あの人なんなの?」とマイナスイメージを持たれやすい。だが、同じことが同じようにできる人が集まるよりも、長所と短所がはっきりしている凸凹のある人が集まり、ワイワイやりながら互いの短所をそれぞれの長所で埋め合うほうが、チーム全体の力を表現したレーダーチャートは大きくなる。 

ベンチャー企業では異端で優秀な人を採用し、定着させることがとても重要になります。異端をチームに溶け込ませるためには、メンバーの短所は見ずに、長所を見るようにすべきです。リーダーは彼らの力を引き出し、できるだけ早く、彼らが力を発揮できる機会を作るようにするのです。「あの人がいると、こんなことが実現できるんだ!」というポジティブな空気を作ることで、チームに良いエネルギーが生まれます。

チームに多様性があればあるほど、それぞれのメンバーの常識は異なると小野氏は指摘します。Aさんにとっての常識はBさんにとっての非常識であり、逆もまたしかりなのですから、メンバーそれぞれの長所を見つけ、それを掛け合わせるようにしましょう。

人事評価でもチームメンバーの互いの評価でも、「あの人は○○ができない」というマイナス評価は行わなずに、あくまでもいいところだけを見るようにするのです。その結果、組織に優秀な異端者が集まるようになります。「欠点はあるが、何かに突出している人」を集めてチームを作り、プラスの能力を掛け合わせることで、素晴らしいプロダクトやサービスが生まれます。

では、メンバーひとりひとりが最大限に力を発揮するためには、どうすればいいのでしょうか?著者は『一番大切なのはメンバーが「自分の価値は正しく理解されている」と感じながら仕事をすることだ』と言います。

上司が自分のよさや価値を本当によく理解してくれて、仕事や成長をとてもよくサポートしてくれている。そう感じられたらそれだけで「仕事をもっとがんばろう」と思える人は少なからずいるはずだ。 ここぞとばかりに注力した仕事を高く評価してもらえれば、部下のモチベーションも大きく上がるだろう。逆はどうだろうか。自分にまるで関心がなく、チームに必要だと思ってとった行動の価値を少しも理解してくれない。そんな状況では、転職を考える人や、心を閉ざして言われたことだけ淡々とこなしていこうと思う人が出てきてしまうだろう。

いくら上司が忙しくても、部下の活躍を見出し、それを褒めるようにしましょう。部下の「ファインプレーを称え合う時間」が増えれば増えるほど、組織のエネルギーが上がり、メンバーひとりひとりのモチベーションが高まるようになります。「自分の価値が正しく評価されている」とメンバーが思える組織をリーダーは意識して作るのです。結果、異端の才能を持つ猛獣たちの能力が掛け合わせることで、組織が強くなります。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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