T・バトラー=ボードンの世界の哲学50の名著 エッセンスを究めるの書評


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世界の哲学50の名著 エッセンスを究める
著者:T・バトラー=ボードン
出版社:ディスカヴァートゥエンティワン

本書の要約

50冊の哲学書の名著を一冊にまとめた本書を読むことで、人間がどうのように進化してきたかを学べます。メディアやテクノロジーの変化が、人間のあり方を変え、思考や行動に影響を及ぼしてきました。50人の哲学者の思考を取り入れることで、様々な視点から物事を考えられるようになります。

テクノロジーの進化とともに哲学も変化する。

哲学のすばらしさは、たとえ客観性に欠けるとしても、世界の上に「遥かかなたを照し出す光線」を投げかけ、ものごとを新しく見直す機会をわれわれに与えてくれるところだ。哲学は他のあらゆる知識を見るための枠組みを提供するばかりでなく、より個人的で刺激的なレベルで、思考、存在、行為、そして知覚に対する、新しくてしばしば解放的な方法をわれわれにもたらしてくれる。(T・バトラー=ボードン)

ノンフィクション作家のT・バトラー=ボードンは、取っ付きにくい学問である「哲学」を身近なものにしてくれました。著者は難解な哲学書を50冊セレクトし、素人にもわかるようにエッセンスを抜き出します。50人の哲学者との対話を重ねることで、私たちは思考のメソッドを学びながら、新たな視点を手に入れられます。

私は書評家として、日々、本を読み続けていますが、いまだに読めていない名著が無数に存在します。特に古典と言われる哲学書は齧った程度で、内容を忘れているものが多々あります。最初から読むのを諦めた難解な本も著者はわかりやすく解説してくれているのが、うれしい限りです。本書をはじめから終わりまで読むことで、哲学の歴史を振り返りながら、様々な思考法を学べます。ブックガイドとして本書を活用し、興味を覚えた哲学書を別の機会に読むのもよいと思います。

今日はその中から、マーシャル・マクルーハンを取り上げ、テクノロジーと哲学の変化について考えていきます。マクルーハンは、マスメディアと通信テクノロジーは中立的な発明ではなく、実際には人間のあり方を変えると主張しました。アルファベットができる前は、人間の主な感覚器官は耳でしたが、その後は目が中心になりました。人はアルファベットの使用によって、文章が構成されるのと同じ方法で思考するようになったのです。それは、事実と概念の連続的な連結による直線的な思考様式を生み出しました。

新しいメディア環境は多次元的であり、メディアから濃密な情報が急速に送られてくるために、われわれはもう脳内で情報を適切に分類し、処理することができない。

現代に成長する子どもは両親と教師だけから影響を受けるのではなく、全世界の多様なメディアから情報を受け取っています。今やテキストではなく、情報の主流は動画と言う情報の塊になっています。世界中の大量の情報を動画でリアルタイムに受け取れるようになり、人の思考と行動に影響を与えています。

例えば、VRはコンテンツの視聴を「他人事の視聴」から「自分事の体験」に変えてしまったのです。テクノロジーは人間の体を拡張することで、可能性を広げていますが、脳がそれに追いついていかない可能性があります。リアルとバーチャルの壁がなくなる中で、人間の悩みも様変わりし、哲学者も新たな視点で解決策を探すようになるはずです。

テクノロジー企業に哲学者が在籍する理由

これまで社会はつねに、コミュニケーションの内容よりも、むしろそれを伝えるメディアの性質そのものによって、形成されてきた。 車輪は足の延長である。本は目の延長である。衣服は皮膚の延長である。電気回路は中枢神経の延長である。メディアは、環境を変えることにより、われわれの中に特有の感覚比率を作り出す。われわれの感覚のどのひとつが拡張されても、それは、われわれの考え方、行為の仕方、世界を認知する仕方を変える。これらの感覚比率が変わる時、人間も変わる。(マーシャル・マクルーハン)

マクルハーンが指摘するように、もはや人間をテクノロジーから切り離して考えることはできません。

新しい哲学である「トランスヒューマニズム」の思想家は、人間がテクノロジーを使いこなすだけの時代はもう終わったと主張しています。彼らによれば、機械はもはや人の一部であり、体の延長としての役割をますます強めていきます。私たちは機械を通して、自己と世界を認識することになる時代を生きていますが、哲学の役割も自ずと変わっていくはずです。

科学技術を積極的に活用することで生物学的限界を超越しようとするトランスヒューマニズムは、テクノロジーの力を活用することで、病気や障害を克服し、生きていることの喜びを最大限にすることを目指しています。最近では不死の世界を視野に入れた研究も行われています。

グーグルのラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、ビル・マリスと共にグーグル・ベンチャーズを設立しました。マリスは不老長寿社会を実現するために、バイオテクノロジーに多大な投資を行っています。長寿社会が出現すれば、生と死に対する思考も過去のものとは様変わりします。

グーグルにはつい最近までデイモン・ホロヴィッツという哲学者が在籍していました。テクノロジーが進化する中で、人間は神の領域に近づこうとしています。テクノロジーの進化が人間を不幸にさせないようにするために、グーグルやアップルでは、哲学者を採用する動きが広がっています。プロダクト開発をエンジニアだけの任せるのは危険です。彼らがルールを破り、暴走することを防ぐために、経営者は哲学者と共にサービス開発を行っています。サービスやプロダクトが倫理的・法的に問題がないかを哲学者と共に考えることで、エンジニアが一線を超えないようにしているのです。

マクルーハンは「すべてのメディアは、われわれのすみからすみまで変えてしまう」と言う名言を残しています。今やメディアがテクノロジーという言葉に置き換わっているのかもしれません。テクノロジーは個人的、政治的、倫理的、社会的な生活に深く浸透し、様々な影響を及ぼしています。テクノロジーの進化が人間のあり方を変えるなら、哲学もそれに呼応し、役割を変えなければなりません。現代の哲学者には、企業の監視役としての役割も期待されているのです。

50冊の哲学書の名著をまとめ読みすることで、人間の思考がどうのように進化してきたかを知ることができます。様々な哲学者の思考メソッドを学ぶことで、私たちは多様な視点から物事を考えられるようになります。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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