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科学的に幸せになれる脳磨き
著者:岩崎一郎
出版社:サンマーク出版
本書の要約
脳の島皮質を鍛えることで、人の幸福度がアップすることがわかってきました。・感謝の気持ちを持つ ・前向きになる ・気の合う仲間や家族と過ごす ・利他の心を持つ・マインドフルネス(脳トレ座禅を行う) ・Awe(オウ)体験をすることで、脳全体をバランスよく協調的に破たらすことができ、私たちは幸福になれるのです。
脳磨きで人は幸せになれる?
脳を磨けばいい。そうすれば人は豊かに幸せに生きられる。(岩崎一郎)
特定の脳の使い方を続けていくことで、脳は磨かれていくと脳科学者の岩崎一郎氏は言います。その結果、「経済的な安定や豊かさ」「自分の仕事に対するほこり」「働きがい」「共に生きていく仲間や家族」「健康」、そして「生きがい」などを手に入れることができるようになります。
著者は25年以上にわたり、ノースウェスタン大学医学部脳神経科学研究所など、米国を中心に世界最先端の医学脳科学研究に従事する中で、幸せになるためには、脳を磨くことが重要であることに気づきます。最新の研究を含む255の論文からエビデンスが紹介されているため、情報の信頼度も高く、翻訳本のような説得力があります。
著者はこれまであまり注目されてこなかった「脳の部位」のひとつである「島皮質」が重要だと指摘します。最近の研究によって、「島皮質」を鍛えることで、脳が磨かれることがわかってきました。この部位を鍛え、脳全体をバランスよく協調的に働かせることで、人生をより豊かに幸せにできるのです。
脳磨きとは、島皮質を鍛え、脳全体をバランスよく協調的に働かせるようにすることなのです。 脳では、この部位は記憶を担当、この部位は理性の担当というように、各部位でそれぞれの役割担当が決まっています。島皮質が担当する分野はかなり幅広く、社会的感情、道徳的直感、共感、音楽への感情的な反応、依存、痛み、ユーモア、他者の表情への反応、購買の判断、食の好みなどに関わります。 また島皮質に障害が起きると、無気力になり、できなくなります。さらに島皮質からの情報は、えられて意思決定にも関わります。
この島皮質の機能を高めれば、他の人と心の繋がりを持ちやすくなり、たとえどんな過去を持っていようと、過去の自分を受け入れやすくなります。それだけでなく、島皮質のいろいろな箇所を繫いでいるため、脳全体が活性化され、脳が本来持っている力が引き出されるのです。
脳磨きの6つのポイント
著者は脳磨きをするための6つのメソッドを紹介しています。
・感謝の気持ちを持つ
・前向きになる
・気の合う仲間や家族と過ごす
・利他の心を持つ
・マインドフルネス(脳トレ座禅を行う)
・Awe(オウ)体験をする
今日はこの中のAew(オウ)体験を紹介しようと思います。山や海、星空など大自然を前にすると、人は圧倒されることがありますが、この経験をAwe体験と言います。私たち人は自然を前にすれば、ちっぽけな存在でしかありません。
大自然や大宇宙の悠久さや広大さを前に、自分の存在の小ささを感じると、脳は活性化し、謙虚な気持ちになる。すると寛容で道徳的になる。
カナダ・トロント大学のステラー博士らは、延べ977人の被験者の協力のもとにAwe体験を検証しました。その結果、被験者が「Awe体験によって世界が違って見えた」「AWe体験によって生かされている感じがした」と答えるなど、AWe体験をすると自分の自我(エゴ)を少なくし、謙虚な気持ちを起こすことがわかりました。
また、謙虚になると他者に興味を持てるようになり、自分の成功に対しては「周囲の人が協力してくれたおかげ」などというように、他者や自然の力に感謝の気持ちが起きることもわ かったのです。
目の前に広がる大自然の前で、人は「自分を小さい」と感じますが、その際、人は非常に謙虚な持ちになり、そして素直に感謝の気持ちを持ちます。その結果、前向きにもなり「世の中のため、誰かのために役立ちたい」という思いを強くするのです。
また、中国・北京師範大学ザオ博士らの研究では、563人の被験者でAwe体験をしやすい脳の使い方と「人生の目的・志を持っていること」についての相関関係を調べました。その結果、Awe体験を頻繁にしている人は、人生の目的を明確に持っていることがわかりました。人生のビジョンを持ちたければ、都会で働くだけでなく、自然のなかで過ごすようした方がよさそうです。
中国・広州大学のリー博士らの研究によると、Awe体験を持った人は、未来の時間の感覚を持てるようになり、 社会性のある行動が取れるようになることがわかりました。未来の時間の感覚を持てる人は、現代の課題を解決するだけでなく、未来の社会をよりよくしようとします。 パタゴニアが社会的課題を解決しようとしたのも、彼らが大自然に触れていたからなのです。
カナダ・トロント大学のステラー博士らの研究から、Awe体験を頻繁にしている人はインターロイキン6の濃度が低く保たれていることがわかりました。 インターロイキン6は、身体が慢性的な炎症を起こしているときに出るもので、慢性的な炎症は人の寿命を縮めます。 逆にいうと、インターロイキン6が下がっている状態というのは身体には良く、寿命を延ばすことにつながるのです。
米国・マウントサイナイ病院のコーエン博士らは、13万6265人のデータベースの研究を行った結果、人が志(人生の目的)を持つと、いろいろな疾患のリスクが軽減されることを突き止めました。たとえば高い志を持っている人は、普通の医学の常識で推定される寿命よりも生存率が高まからだること、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが半分に軽減できること、身体の炎症反応も抑えられることが、インターロイキン6など炎症関連遺伝子の発現を調べることで明らかになってきました。
身体の炎症反応が少なくなると寿命がより長くなることがわかっています。ちなみに、新型コロナウイルス感染症で、急に症状が重症化するのはインターロイキン6が大量に放出され「サイトカインストーム(免疫暴走)」を起こすことが、要因のひとつだとわかってきました。
高い志を持つことでネガティブな感情をうまく扱えることができ、身体的活動なども高まること、また記憶力や脳の情報処理速度などの脳機能テストをしても年齢による低下がなくなることなどが明らかになりました。自分の心と体の健康のためにも、Awe体験を増やしたくなりました。
米国・アリゾナ州立大学のシオタ博士はAwe体験がもたらす効果をあげています。
①マインドフルネスを行ったように、何ごともありのままに受け取ることができるようになる
②心と身体をリラックスさせる
③好奇心を引き出す
④人と心の繋がりを作る
⑤利他の心を引き出す
⑥身体を健康にする
⑦創造性を引き出す
⑧希望に満ちた状態になる
⑨幸福感が高まる
⑩嫉妬心など、ネガティブな感情が少なくなる
このように、広大な大自然や大宇宙の悠久さを体験することは、単に心が洗われるだとか、気分転換になるだけでなく、具体的に心身ともに良い影響があると著者は言います。
私は毎朝、瞑想をしたり、感謝日記を書いていますが、本書のエビデンスを読むことで、日々自分が脳を磨いていることに気付けました。また、この数年で自分の後半戦のビジョンが見えてきました。自分の思考と行動を変えたことで、私の幸福度は確実にアップしています。脳を磨くことは今日からスタートできます。本書に紹介されているメソッドを実践し、幸福な人生を送りましょう。
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