河合雅司氏の未来のドリル コロナが見せた日本の弱点 未来の年表の書評


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未来のドリル コロナが見せた日本の弱点 未来の年表
著者:河合雅司
出版社:講談社

本書の要約

人口減少と少子化が社会の老化を引き起こしています。人口減少によって、多様性のある組織がつくれないことが、発想を硬直化させています。若者の力を引き出すことを考えなければ、社会の老化は止められず、今後、日本はますます衰退していくはずです。

コロナ禍で進む少子化が何を引き起こす?

コロナ禍が残した最大の爪痕は、少子高齢化とそれに伴う人口減少の悪化であった。いわずと知れた、わが国一番の国難だ。コロナ禍がこれに与えた影響は、”一過性の変化”とはいかない。深刻さの度合いが違い過ぎる。 それはまず、婚姻件数の激減という形で始まった。(河合雅司)

河合雅司氏は今回のコロナ禍が少子化を加速させたと指摘します。少子化はコロナ以前に予測していたよりも18年も早まり、今後これが日本経済に大きな影響を及ぼします。

厚生労働省の人口動態統計月報(概数)で2020年1〜11月を見ると、前年同期間比で12.3%減少しました。婚姻件数の落ち込みは、出生数の減少に直結します。

人口動態統計速報で1~3月を「コロナ前」であった2020年の1~3月と比較すると、驚くことに出生数は9.2%下落しました。このペースが続いていけば、従来の想定よりも、少子化が半世紀も前倒しされる可能性が出てくると言うのです。

また、今回のコロナ禍が、「ワクチン敗戦国」と言われるほど日本政府の対処能力の低さが露呈しました。ワクチン以外でもデジタル化の遅れ、医療崩壊、ザルのような水際対策、いつまでも拡充されないPCR検査など政権や役所の劣化が明らかになりました。

なぜ日本がここまで落ちぶれてしまったのか、その理由にある。日本社会の深層にある「老化」だ。たち「社会の老化」と呼ぼう。それは、少子高齢化の行きつく先である。質の悪い「国家の病巣」 とも言うべきものだ。すべての年代の人々の思考を守勢に追い込み、”無難な道”を選ばせていく。挑戦する気力を吸い取ってしまう”邪気”だ。

「社会の老化」が起きるのは、あらゆる場面において平均年齢が高くなっていることが影響しています。若い世代が担っていたポジションや役割に、ベテランが就くことで、新しいことが生まれずらくなっています。

人口減少によって、多様性のある組織がつくれないことが、発想を硬直化させています。若者の力を引き出すことを考えなければ、社会の老化は止まらず、日本の衰退は避けられません。

社会の老化を防ぐための5つの処方箋

日本のような国民の平均年齢が高い「年老いた国」は、「若い国」よりも積極的に社会経済活動を行わなければ、国際競争に太刀打ちできない。コロナ禍の経済危機からの回復のように、世界各国が一斉に復興のスタートを切る局面ではなおさらだ。

「社会の老化」を看過できないのは、経済的困窮があちこちで見られるようになることです。必要以上に若者の手足を縛ることで、日本人自身が自ら不況を創り出しているのです。

経済が停滞すること、日本企業に元気がなくなることで、多くの企業が外国資本にM&Aされ、国益や雇用が守れなくなる可能性も高まっています。

目先の感染症対策や”一過性の変化”にとらわれ、少子高齢社会が受けるダメージから目を背けることは許されません。「社会の老化」を放置し続ければ、「未来の年表」は悪化の一途をたどってしまい、経済的困窮どころか、やがて国家の致命傷となります。

少子高齢化がもたらす最大の恐ろしさや弊害とは何でしょうか?日本は少子高齢化によって、若年人口が減ることで、社会全体の思考や発想、行動が「守り」に入り始めてます。「守り」に入れば、やがて社会全体の活力が損なわれ、国家は衰退の道を歩むことになります。

他人の行動がまわりの人々と違うことに口出しをする「同調圧力」も、「社会の老化」が進むほど強まっていきます。思考が「老化」した人々にとって、旧来の価値観が”絶対”のモノサシになってしまい、それを遵守しない人たちへの攻撃性が増していきます。

今回のコロナ禍で、”自粛警察”やあらゆる地方の飲食店街で見られた、「県外の方は入店をお断りします」「当面は常連さんのみの営業といたします」といった店先の貼り紙は不寛容さの象徴です。国民の平均年齢が「若い国」であれば、「実現し得る方策」を探そうと努力しますが、日本のように「老いた国」では”無難にやり過ごす”ことを重視します。

現在の日本には、生産年齢人口が増加していた1990年代前半までのようなエネルギーが感じられず、新しいことにチャレンジする若者が減っています。データを見ると他国の若い世代に比べて意識が「安定志向」であることがわかります。

内閣府の資料「若者等の意識について」によれば、日本は仕事におけるリスク回避の意識が高くなっています。仕事を失ったとしても希望の仕事に就こうとするかの意識については、日本は9%で、フランス(18%)の半分程度になっています。管理職への希望も男性27%、女性15%といずれも各国に比べて極端に低くなっています。

著者は日本の未来を明るくするための「処方箋」を5つ用意しています。
1、国政選挙に「若者枠」を新設
2、中学卒業時からの「飛び入学」導入
3、「30代以下のみが住む都市」の建設
4、大学を共同キャンパス化する
5、若い人々に英才教育をする

社会の老化に飲みこまれないために、自分をアップデートするのは当然ですが、若者世代が活躍しやすい環境をつくることが大事だと思います。コロナ禍が続く中、多くの大人がマインドセットを変え、若者のために行動しなければ、日本の衰退は免れません。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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