山本康正氏の銀行を淘汰する破壊的企業の書評

銀行を淘汰する破壊的企業
著者:山本康正
出版社:SBクリエイティブ

本書の要約

GAFAなどのテクノロジーカンパニーが金融業界に進出し、スマホ上でAIを活用したサービスを提供することで顧客体験を変えています。銀行やローン、クレジットカードなどの既存サービスが、AIによって再定義される中で、金融業界は変化を起こさなければ、生き残れなくなっています。

クレジットカード業界を駆逐するアファームとは?

テクノロジーカンパニーが銀行を持つ。正確には従来の銀行が行っていたような金融サービスの機能を、スマホ完結で実装する。(山本康正)

著者の山本氏は、「フィンテック」や「人工知能(AI)」を専門とするベンチャーキャピタリストとして活躍する傍ら、テクノロジーが帰る未来についての執筆を続けています。今回の山本氏のテーマはフィンテックで、最新のアメリカのトレンドから銀行業界の未来を予測します。

著者はGoogle、Amazon、Facebook、Apple、ペイパル、ストライプ、アント、アファーム、コインベース、キャベッジ、ロビンフッドなどの世界最先端企業・11社を分析することで、2025年の銀行の姿を読み解いてくれました。各社の動きを見る中で、手のひらの中のスマホにあらゆる金融サービスが集約されていくことがわかります。

今回は私が気になっているアファーム・ホールディングス(Affirm)をピックアップします。アファームは、米国のフィンテック企業で。主にオンラインやモバイルでのEコマースにおける後払いサービスを提供します。顧客はZ世代の若者で、商品の購入時点で融資を申し込み、後払いや分割払いの支払いをシンプルにすることで、クレジット業界を破壊しようとしています。

アファームはアメリカナスダック市場に上場しています。同社はPayPalの創業メンバーCTOでもあったマックス・レブチンが創業した注目の企業です。

アファームは、WakmartやPeltonなどのEC事業者に対して「分割払い」機能を提供しています。高級家電やフィットネスで使うエアロバイクなど、一括で購入するには金額が大きいけれど、銀行やクレジット会社のローンを組むには、利率が高すぎます。あるいは、そもそもファイナンスがない商品も存在します。

アファームはECで購入した商品のローン(後払い)を、これまでのクレジットカードのローンなどの金利よりも低く、申し込みならびに審査がスムーズに行えるサービスを手がけることで、新たなマーケットを創造したのです

アメリカ人はローンでの購入を好みますが、金利が16~17%という高金利の買い物になると、さすがに躊躇します。しかし、アファームのファイナンスを利用すれば、5%程度で借り入れができるようになり、これがZ世代に受けているのです。

テクノロジーカンパニーが銀行業務を始める?

アファームはマーケティングが秀逸です。消費者が、ECサイトで買い物をしていたとします。欲しい商品を見つけたけれど、キャッシュで買うには高額すぎる、あるいは、クレジットカードでローンを組むには、あまりにも金利が高すぎると感じ、サイトから顧客が離脱しようとした瞬間に、商品の横にアファームのファイナンスならびに金利が5%であることが表示されます。 キャンペーンが行えわれている場合には、分割手数料がゼロになる時もあります。

アファームのローン審査はとてもシンプルです。これまでネット上で大量に購入されてきた商品ならびに支払内容などのデータを基に、商品ごとの適切な金利をコンピュータが設定します。膨大なデータならびに綿密に設計されたアルゴリズムにより、計算式を設定し、最適な金利を導き出しているのです。

審査は瞬時に、そして24時間いつでも受けることができ、12カ月、24カ月払いなど、利用者の状況や意図を汲み取り、支払期間を設定できます。

アファームは同社のアルゴリズムを、一般消費者向けのECだけでなく、事業資金の融資にも展開。個人向けと同じく、事業者が今すぐ欲しいキャッシュを低金利で貸すサービスにも着手しています。日本にはまだ入ってきていませんが、導入がスタートしたら、日本のクレジットカード会社は打撃を受けるでしょう。

アファームはさらに、自社のローンの特徴である”もの”によりアプローチしていき、新たなサービスを展開すると著者は予測しています。ネット上のあらゆるデータを分析し、顧客体験を高めるサービスを提供することで、アファームとの関係を強化していきます。例えば、ローンで買った商品の下取り価格が安くなる前に、高額で売れるタイミング(最適な売り時)を提示し、顧客を囲い込んでいくと著者は考えています。

今後、顧客データを持ったappleやAmazonが、自社サービスをより使ってもらうために、銀行業務に続々と参入していきます。その際、手数料はゼロになっても、他のサービスで利益を稼げるGAFAは困りません。

テクノロジーカンパニーにとっては、銀行はインフラではなく、あくまでツールなのです。そして、持っておくべき必須のツールでもある。そのためこれから続々と、デジタルバンクを備えたテクノロジー企業が登場してくると私はみています。

テクノロジーカンパニーが銀行業務に参入することで、今後3つのメガトレンドを起こります。
①全ての銀行手数料がゼロになる。
②預金量よりもデータを持つ銀行が未来を制す。
③24時間365日開いている銀行が標準に。

預金量などの現在価値ではなく、データで稼ぐ力が今後の金融業界を左右することは間違いありません。スマートフォン内のデジタルバンク機能がなければ、メガバンクといえども生き残れなくなっています。与信機能もキャベッジやマネーフォワードの方が遥かに進んでいる現状を見ると顧客はやがて銀行離れを起こすはずです。顧客データを持たないことが、金融機関にとって致命傷になりつつあります。

銀行やローン、クレジットカードなどの既存サービスが、テックカンパニーによって再定義される中で、金融業界は変化を起こさなければ、生き残れなくなっています。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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