イラッド・ギルの爆速成長マネジメントの書評


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爆速成長マネジメント
著者:Elad Gil(イラッド・ギル
出版社:日経BP

本書の要約

プロダクト・マーケットフィットを達成したレイターステージの経営者が今後も企業を成長させたければ、スタートアップ時の経営スタイルを忘れる必要があります。CEOの役割、組織やマーケティングなどの今までの常識を捨て、本書のアドバイスに従うことで、爆速成長企業の仲間入りができます。

爆速成長企業が、経営陣をプロフェッショナルで固める理由

すべての爆速成長企業はいずれ、組織構造、レイターステージの資金調達、企業文化、創業者の不得意分野を補う経営幹部の採用、他社の買収といった様々な課題に直面する。創業者はこれらの課題を初めて経験し、それらを並行で処理しなければならないため、爆速成長期は非常にストレスのかかるジェットコースターのような体験をすることになる。(イラッド・ギル)

グーグル、ツイッターを急成長させた有名起業家であり、現在は投資家として活躍するイラッド・ギル。彼は短期間で成功した起業家には、共通点があることを見つけます。

ほとんどのスタートアップは失敗してすぐに消えていくため、彼らの多くは急激な成長する段階まで到達できません。そのため、レイターステージから爆速企業になるためのノウハウが少ないのが現状です。

そこで、著者はレイターステージのスタートアップやファウンダーからの質問への答えをまとめたサイトをローンチすることにしますが、公開前にストライプの創業者の1人であるジョン・コリソンに見せたところ、書籍で出版した方がよいとアドバイスを受け、本書が出来上がったとのこと。

アーリーステージの優先事項の1つは、プロダクトマーケットフィット(PMF)に到達することです。このPMFがうまくいけば、資金調達が可能になり、次のステージに進めます。2つ目は、共同創業者と喧嘩をしないことです。内輪もめがなければ、会社をうまく回せるようになると著者は言います。

ミドルステージを超え、レイターステージに入ると、それまでの経営ノウハウが通用しなくなります。より多くのことを達成するための組織を作り、マーケティングを進化させる必要があります。パートナー戦略や海外展開、M&Aなど多くのやるべきことが生まれます。

経営者は以下の3つに意識を向け、経営を行うべきです。
①社員全員に明確な方向性を示すこと
②その方向性を追求するために必要な資金を確保すること
③プロフェッショナルな経営陣を揃えること

経営陣が強化され、組織にプロフェッショナルが増えることで、様々な課題をスピーディに解決できるようになります。多くの爆速成長企業は初期の段階から、経営陣をプロフェッショナルで固めています。事業をスケールさせるためには、優秀な経営陣が必要なのです。コア・コンピタンスを生み出し、イノベーションを重ねることで、レイターステージの企業は成長します。

企業を成長させたければ、CXOに業務を任せよう!

50人を超えて150人に向かうまでに人事部門をつくらないと、間違いなく何らかの大失敗をするでしょう。150という数字がダンバー数、つまり人間が直接人を認知できる上限だからです。社員数が50人から150人となる段階で、全社員がお互いの顔と名前を知っている状況が失われます。見知らぬ人たちが社内をうろついているような状況です。社員が5人とか10人とか20人の頃はハッピーな大家族のような雰囲気で全員がお互いを知っていた時代が過去にはあったわけです……まあハッピーじゃなかったとしても、少なくとも顔は知っていた。CEOは全社員と1対1の関係が築けていたわけです。しかし50人を超えると、属人性をなくしたプロフェッショナル同士の関係が会社に要求されるようになります。人事面で課題が出始めるのは、職場でプロフェッショナルな姿勢でいるべき時に、不適切な判断が行われる時です。(マーク・アンドリーセン)

組織が大きくなるにつれ、創業者の目が届かなくなります。ネットスケープ創業者、シリアルアントレプレナーのマーク・アンドリーセンは人事部の設置とプロフェッショナルな経営陣をそろえることが重要だと言います。プロフェッショナルが働きやすい環境をつくるべきだと言います。

企業のステージが上がったら、PMFの考え方も変えた方がよさそうです。スタートアップにとってのプロダクト・マーケットフィットは、アーリーアダプターとのフィットでしかありません。アーリーアダプターは、とてつもない情熱とやる気に満ちあふれた人たちで、彼らはわざわざプロダクトを見つけ出し、それを評価し、応援してくれます。しかし、アーリーアダプター層は市場全体では永遠の少数派でしかありません。残りの市場すべての顧客がアーリーアダプター層のように振る舞ってくれるわけではありません。

マーク・アンドリーセンはマジョリティへのアプローチを経営陣は徹底的に考えるべきだと言います。

現代の消費社会において、マジョリティ層は既存のもので十分に忙しいからです。明確な理由で説得されない限り、彼らは新しいものに手を出す理由がありません。マーケティング、グロースハック、ユーザー獲得など、説得方法の呼び方はなんでも構いませんが、この層にプロダクトを行き渡らせる機能をつくることが極めて重要です。

B2Bにおいても同じで、多くのビジネスパーソンに見つけてもらう施策を考える必要があります。レイターステージの経営者は、忙しい彼らに情報を届けるための努力が必要になります。

新規事業が事業として成立した瞬間、大量の競合が登場します。最初に事業を発明したスタートアップが95%側の市場を獲りに動かなければ、他の新規事業者に市場を奪われてしまいます。この残りの95%の市場を獲った会社が市場価値と連動した企業価値をすべて手にします。

著者のイラッド・ギルは企業が成長するにつれ、CEOの役割も変わると述べています。

スタートアップの成長とともにCEOが直面する想定外な変化のひとつは、CEO固有のタスク内容が激変することだ。CEOが一線級のプログラマーだったとしても、エンジニアが50人や500人の会社になると、CEO自身がコードを書くことが会社の価値を向上させる最適な時間の配分とは言えなくなる。これまでうまくやれていた個人的やビジネス的なタイムマネジメント法も、CEOの時間を必要とする人がどんどん増えることで崩壊する。辛いことだが、組織を成長させ続け、CEOとして次の段階に進むには、これまで重要だと感じたり、やりがいを感じていたりした領域を手放さなければならない。

事業が成長するにつれ、CEOの役割は激変します。 CEOはやるべきこととやらないことを明確にし、無駄だと思えることに対してはノーを突きつけるべきです。

CEOはタイムマネジメントの方法を変え、権限委譲を積極的に行うべきです。自分が苦手なことを優秀な他者に任せることで、燃え尽きを防げます。

創業者の燃え尽きは、自身が嫌いなことを業務として取り組み続けていることがきっかけで起こる。プロダクト型の創業者がセールスの成果報酬の条件設定、セールスの進捗、マーケティング計画、人事課題などの会議に出席し、本人には絶望的につまらない仕事に時間を奪われ続けている状態をよく見かける。

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグが、プロダクトと戦略に集中するために、自分の権限をシェリル・サンドバーグに委譲しました。自分の代わりに業務を実行してくれる経営幹部(CXO)の採用を先延ばしせずに、本当に重要なことに時間を割くようにしましょう。

本書にはスタートアップや新規事業への担当者が知っておくべき知識やノウハウが、体系的にまとめられています。事業を成功させた起業家と著者との対談も本書の魅力になっています。

ボックスのCEOのアーロン・レビィ、リンクトインの共同創業者のリード・ホフマン、そして、今、私が最も注目している企業ストライプのCOOのクレア・ヒューズ・ジョンソンのインタビューが掲載されています。次回はこのインタビューを中心に記事を書きたいと思います。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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