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もう価格で闘わない―――「より安く!」は誰も幸せにしない
著者:坂本光司
出版社:あさ出版
本書の要約
多くの日本企業は競合企業との無意味な価格競争を行い、自分の首を自分で締めています。これでは社員やパートナーは幸せにはなれません。顧客や社員、パートナーから感謝されるような企業になるためには、価格ではない付加価値をつくる非価格経営を取り入れるべきです。
企業が価格戦略を見直すべき理由
その価格が、誰かの犠牲・我慢の上にかろうじて成立しているのであれば、その値決めは健全・適正とはいえません。その商品が長く関係者に支持されるとも思えません。価格は、たかが価格ではなく、企業経営の命であり良心なのです。価格は、ブランドメーカーやその協力企業などの生産者、販売者・物流業者、さらには顧客や地域社会を含めた関係するすべての人々が、程度の差こそあれ、幸せ・喜びを実感できるものでなければなりません。まさに「三方」どころか「五方よし」の価格こそが、正しい価格なのです。(坂本光司)
価格は生産者、販売者・物流業者、顧客や地域社会を含めた関係者全ての人が幸せ、喜びを実感できるものにすべきだと法政大学大学院政策創造研究科教授の坂本光司氏は指摘します。
しかし、多くの日本企業は競合企業との無意味な価格競争を行い、自分の首を自分で締めています。価格は本来、需要と供給のバランスで決まります。しかし、このルールを無視した企業は、利益が出ないレベルにまで価格を下げてしまっています。これでは、経営者も従業員も幸せになれません。顧客もその会社が存在できなければ、不幸になってしまうのです。
では、どうすれば、価格競争から抜け出せるようになるのでしょうか?著者は、価格ではない付加価値をつくることで、価格競争が生み出す最悪のスパイラルから抜け出せると述べています。以下の8つのポイントを取り入れることで、生産者、販売者・物流業者、顧客や地域社会を含めた関係者が全て喜ぶ 「五方よし」の経営を行えるようになります。
1、企業経営の真の目的・使命を果たす
2、価格は需給のバランスで決定する
3、価格競争型経営と段階的に決別する
4、非価格経営を創造する
5、創造型人財を確保・育成する
6、外部有用経営資源を内部化して経営する
7、適正な価格で経営する
8、先進企業に学ぶ
価格競争から抜け出せた企業は、ブランドを強化したり、あえてニッチ市場で勝負します。価格とは異なる競争優位性を見つけることで、中小企業も成長できるようになります。
1、ブランディングで非価格経営を実現する
2、ニッチ市場で非価格経営を実現する
3、商品力・技術力・サービス力の「差別化」で非価格経営を実現する
4、「いい会社」として価格以外の価値観経営を実践する
価格競争から抜け出すための8つのポイント
1 、企業経営の真の目的・使命を果たす
企業経営の目的・使命は、企業の業績やシェア・ランキングを追い求めたり、ライバル企業と勝ち負けを競い合うことではありません。 企業に関わるすべての人々の幸せの追求・実現です。手段や結果を目的と勘違いをしてしまうと、使命・目的である「人の幸せ」を、逆に手段と考える経営に陥ってしまいます。なんのために会社を経営しているのかを見直し、自分のパーパスを定めると社員やパートナーを意識した価格を設定できるようになります。
2 、価格は需給のバランスで決定する
中小企業が、価格競争や価格の決定に苦しまない経営をするためには、「常に供給不足・需要超過の分野で生きる」ことが鉄則です。
3、価格競争型経営と段階的に決別する
価格をセールスポイントに経営を続けていると、努力すれば努力するほど苦しさが増してきます。そうした企業にならないためには、早期に価格競争型経営から決別する必要があります。
価格競争型経営から非価格競争型経営にシフトするためには、長い努力と、そのための覚悟・準備が必要です。まずは経営者が時代の変化を直視し、強い危機意識と変革の覚悟をもつことです。その変革の必要性は、今や待ったなしです。経営者が「もう価格競争では闘わない」という覚悟と決意を決め、次に全社員参加のもとで、非価格経営ビジョンを策定するのです。そのためには、優秀な人財の確保・育成・定着と、ソフト面・ハード面での体制整備が必要になります。
非価格競争型企業になるための「10年計画」あるいは「20年計画」を全社員で立案し、PDCAサイクルを回しながら、1年間で数パーセントずつ、非価格競争分野を創造し、自社らしい経営を行うようにすべきです。
4、非価格経営を創造する
非価格経営には大きく、ハードとソフトの2つのパターンがあります。
■ハードな非価格経営→自社しかできない・やれない価値ある商品を創造し販売する経営(オンリーワン経営)。
■ソフトな非価格経営→モノではなく、企業のソフト面の競争力、つまり魅力による経営です。
①値段は他社より少々高いが、接客サービスやアフターサービスが抜群
②値段は少々高いが、素敵な社員がいる
③値段は少々高いが、たとえ1個でも対応してくれる
④値段は少々高いが、短納期でも対応してくれる
⑤値段は少々高いが、困った時にすぐに飛んできてくれる
⑥値段は少々高いが、ワンストップサービスをしてくれる
⑦値段は少々高いが、社会貢献・地域貢献に献身的である
⑧値段は少々高いが、決して嘘をつかず安全・安心である
⑨値段は少々高いが、いつも親切・ていねいに対応してくれる
⑩値段は少々高いが、品質・制度が抜群である等々の競争力です。
これらーつひとつの非価格競争力が増加していくにつれ、顧客がファンとなり、応援してくれるようになります。ソフトな非価格経営は、ハードとは異なり、それほどの投資を必要としません。それどころか比較的に短時日に実行することで、新たな顧客を創造できます。
5、創造型人財を確保・育成する
指示待ち人財・対応型人財・自利型人財ではなく、創造型人財・提案型人財・利他型人財を採用し、育成します。企業は好不況を問わず、人財の確保・育成に注力しなければなりません。 不況だからこそ、あえてそれを克服する新たな人財を採用するのです。
6 、外部有用経営資源を内部化して経営する
ネットワーク経営の実行です。外部の価値ある有用な経営資源との連携を密にし、その経営資源を自社の経営資源として高度に利活用するのです。
外部経営資源とは、同業種はもちろんのこと、取引先や異業種の企業、さらには弁護士や公認会計士、税理士、社会保険労務士、各種の経営コンサルタントで、行政や大学な どの教育・研究機関もそれにあたります。これらの「第4の経営資源」を人・モノ・カネに次ぐ資源と位置付け、積極経営を行うべきです。
私は社外取締役やアドバイザリーとして、ベンチャー・スタートアップの経営支援を行っていますが、成長している企業は、第4の経営資源を内部化しています。士業やコンサルタントなどの多様なメンバーが集まることで、新たなアイデアが生まれ、価格に左右されない商品やサービスをつくれるようになります。ネットワークを強化することで、マーケティングや営業の手法も変わり、顧客との関係も構築できるようになります。
人的ネットワークの構築は、単に企業の知見や情報力を強化してくれるだけではなく、市場や技術の業際化・業間化・システム化・トータル化・複合化が進行している近年において、非価格商品の創造面においても、ますます重要になっていくはずです。
7、適正な価格で経営する
非価格経営は必要不可欠ですが、価格は、高ければ高いほどよいというわけではありません。そんなことしていたら儲けすぎと評価され、やがて顧客から見放されてしまいます。すべての商品には、適正価格・値ごろ価格というものがあります。売り手も買い手も、また世間も納得する価格です。
8、先進企業に学ぶ
非価格経営を実現している企業から学ぶことで、新たな経営のヒントが見つかります。
本書には、食品工場に特化して価格競争からの脱出に成功した三和建設や突出した技術レベルと適正規模志向で非価格経営を貫く清川メッキ工業などのB2Bの成功事例も紹介されています。他社の価格戦略から学び、自社の経営を見直すことで、不毛な価格競争から抜け出せます。非価格経営を取り入れ、顧客や社員、パートナーに感謝される存在を目指しましょう。
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