これからの「社会の変え方」を、探しにいこう。の書評


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これからの「社会の変え方」を、探しにいこう。――スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー ベストセレクション10
著者:ピーター・センゲ,ハル・ハミルトン, ジョン・カニアほか
出版社:SSIR Japan

 

本書の要約

あまり効果を生めないリーダーは、自ら変化を起こそうとします。これに対しシステムリーダーは、変化が生まれ、その変化が自律的に持続するような状況づくりに焦点を当てます。優秀なシステムリーダーは変化の場を生み出し、メンバーとの対話を重ね、集合的な知性と知恵を出現させます。

システムリーダーに必要な3つの能力

個々の性格やスタイルが大きく違っていても、本物のシステムリーダーが与えるインパクトは驚くほど似通っている。システム全体を健全なものにしようとする深いコミットメントが、周囲に刺激を与え、長い時間をかけて、他者の同じようなコミットメントを育む。システムリーダーは、自分とはまったく違う人々の視点から現実を見る力を持つが、それによって他の人たちにもよりオープンになることを促す。また、彼らはじっくり傾聴することから人間関係を構築し、そこから信頼と協働のネットワークが花開く。(ピーター・センゲ,ハル・ハミルトン, ジョン・カニア)

スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー』は、2003年にスタンフォード大学のビジネススクール内で創刊された、「ソーシャルイノベーション」専門のメディアです。社会の課題が複雑になる中で、それを解決するための信頼と協働のネットワークが世界中で生まれ、様々なイノベーションが生み出せれています。本書はそんなソーシャルイノベーションに関する論文を10本紹介し、課題を解決する方法を私たちに提示しています。

ソーシャルイノベーションを生み出すリーダーには、人間関係の構築が上手いという共通点があるとピーター・センゲは指摘します。優れたリーダーは、人の話をじっくり傾聴し、イノベーションを創出する場づくりをしています。

彼らは壮大なビジョンを持ち、何かが成し遂げられるという自信を持っているので、積極的に行動します。計画より結果を重視するため、人々は自由に行動できます。リーダーは個々のメンバーの視点に立ち、どうすれば達成できるかを考えます。継続的な学びと成長を求め、継続して行動することで、チームは変化を引き起こせるようになるのです。

システムリーダーは、以下の3つのコア能力を磨くことで、集合的なリーダーシップを育むことができるようになります。
①より大きなシステムを見る能力
複雑な状況では、人はたいてい自分に都合のよい視点から、物事を見てしまいます。複雑な問題についての他者との共通理解を構築するためには、人々がより大きなシステムに目を向けられるように支援することが欠かせません。

②内省とより生成的な対話を促すことに関する能力
深く内省し、お互いの話を傾聴することで、信頼関係が築かれ、チームの創造性を高められます。

③集合的な着目点を反応的な問題解決から未来の共創へと移行すること
人々を勇気づけるビジョンをつくり、それを共有するだけでなく、目の前の厳しい現実に向き合うことも重要です。ビジョンと現実の緊張を利用してまったく新しいアブローチを生み出す方法をリーダーは学ぶべきです。

システムリーダーは変化が自律的に持続する仕組みをつくる!

オットー・シャーマーカトリン・カウファー出現する未来から導く――U理論で自己と組織、社会のシステムを変革するで、システムの変容に必要な3つの開放を示しました。
①思考を開く
②心を開く
③意志を開く

この3つの開くをシステムリーダーが実践することで、ソーシャルイノベーションが生まれるようになります。

あまり効果を生めないリーダーは、自ら変化を起こそうとする。これに対しシステムリーダーは、変化が生まれ、その変化が自律的に持続するような状況づくりに焦点を当てる。

システムリーダーは、変化の場を生み出し、集合的な知性と知恵を出現させます。ダーシー・ウィンズローは、ナイキの先端研究部門の責任者としてがスクロマトグラフを用いた毒性分析を1998年にレビューしました。彼女は自社商品やその製造過程に、既知の毒性物質や、未知のリスクをはらむ多数の化学物質が含まれているという結果によって、自らの行動を変えていきます。

ナイキの『イノベーションは私たちの本質である』という原則に則り、ウィンズローはデザイナーとの対話を重ねます。300人のデザイナーから、変化の皮切りとなるクリティカルマスに必要な人を選び、反応する人を探しました。

ウィンズローは、意欲あるデザイナーや、商品開発にかかわるその他の人々を集め、新たなネットワークを形成しました。有害物質を使わないスニーカーをつくるというビジョンを示し、それを達成するデザイナーを集めたのです。

その後、約400人のデザイナーと商品マネジャーを集めた2日間のサミットが開催されました。そこには、主だったサステナビリティの専門家や経営幹部が集まり、サステナビリティに配慮したデザインコンセプトを検討しました。ナイキの内部で1つのムーブメントが生まれたのです。

現在ではナイキの取り組みが刺激となり、スポーツアパレル業界全体で、廃棄物、毒性、水や電力の問題に関する集合的なリーダーシップが発揮されています。グリーンピース、ナイキ、プーマ、アディダス、ニューバランスでは、「有害化学物質排出ゼロを目指す共同ロードマップ」を共同で作成し、システム全体で主要毒物を特定し、中国をはじめとして世界のスポーツアパレル製造業界全体で有害化学物質の排出ゼロを達成することを目指しています。

変化の場を生み出すための関門を理解するという点で、私たちは皆、学習曲線の急上昇フェーズにいる。しかし変化の場の創出は、協働的な取組みが始まるときだけでなく、そこから最終的に何が生まれ出るか、という点においても非常に重要だと思われる。

システムリーダーシップになるためのヒントを、中国の思想家の老子に見出せます。 悪いリーダーは、人々に蔑まれますが、良いリーダーは、人々に尊敬されるます。最高のリーダーは、人々に「自分たちの力でやった」と言わせます。 

優秀なシステムリーダーは、変化の場を生み出し、メンバーとの対話を重ね、集合的な知性と知恵を出現させます。メンバーが協力し、行動することで、ソーシャルイノベーションが生まれ、世の中をよりよくできるようになります。

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