2000年前からローマの哲人は知っていた 幸せに年を重ねる方法
キケロ,フィリップ・フリーマン(編集)
文響社
本書の要約
キケロは老いを恐がるのではなく、楽しむべきだと述べています。物事に打ち込んでいれば「老い」は静かにやってくると考え、学ぶことを続けましょう。自分の内面の力を正しく磨き、よい習慣を身につけることで、老後の日々を楽しみの多いものにできます。
老後を幸せにする方法
老年期とは恐ろしいものではなく、十分に楽しめる年代だ。(キケロ)
古代の哲人キケロは、ローマの執政官として活躍した後、62歳の頃から執筆をスタートし、多くの著作を残しています。マルクス・アントニウスに殺されるまでの僅かの時間を使って、彼の思考を言語化したことが後世の人々を救います。特に、老後を楽しむというメッセージは、モンテーニュやジョン・アダムズ、ベンジャミン・フランクリンなどに大きな影響を及ぼしました。
2000年にわたり、悩める人たちを「老い」への恐怖から救ってきたキケロのメッセージを編集者のフィリップ・フリーマンがわかりやすくまとめてくれました。本書2000年前からローマの哲人は知っていた 幸せに年を重ねる方法を読むことで、老いを楽しむというマインドセットを育めます。
キケロは老人こそ、若者と過ごす時間を増やすべきだと言います。
賢明な老人は、心根のよい若者と一緒に楽しく過ごし、敬意と親愛の情を受け取ることで、自らの老境までもが軽やかになったように感じるものだ。若者のほうもまた、徳に近づくにはどうしたらよいか老人から知恵を授けられ、それが喜びとなる。
若者の熱気に囲まれて過ごすことで、老人は彼らからエネルギーを得られます。若者に教えるだけでなく、彼らから新たな知識を得られます。特に現代のようにテクノロジーの変化が激しい時代には、若者から多くのことを学べます。
昨年から私は情報経営イノベーション専門職大学【iU】で客員教授をしていますが、大学という空間で過ごす時間が増えたことで、気持ちが若返りました。若者と会話することで、様々な刺激を受けられ、頭を柔らかくすることができたのです。
老いを楽しむための10の教訓
物事に打ち込んでいれば「老い」は静かにやってくる。
フリーマンは本書で、キケロの多くのメッセージから10の教訓をピックアップしています。
1、よい老年期を迎えるには、若いときから準備する
人生の晩年を実り多い幸せなものにする資質は、ごく早い段階から養っておくべきです。 節制、生きる知恵、明晰な思考、そして人生で必然的に起こるすべてのことを楽しむ姿勢を若い時から身につけるべきです。
2、老年は人生のすばらしい一幕となり得る
自分の内面の力を正しく磨いてゆけば、老後の日々を楽しみの多いものにできます。
3、人生には、ふさわしい季節がある
人間の一生というものは、若いうちと老いてからとでは、それぞれ別の物事を享受できます。
4、年長者には・若者に伝えるべきことが数多くある
人生には、経験からしか得られない真の知恵というものがあります。傾聴する意欲のある若者にこれを伝えることは、年齢を重ねた者の喜びであり、また義務でもあるのです。
5、年を取っても活動的な毎日を送ることは可能。
無理のない範囲で体を積極的に動かしたり、コミュニティで知恵や経験を共有しましょう。実際キケロは老年期に執筆を開始し、わずかの期間に多くの著作を残しています。
6、精神は鍛えられるべき一種の筋肉である。
頭を使う知的な活動を可能な限りおこなうことは、年を取るほど非常に大事になってきます。脳の可塑性を信じて、学ぶことを継続すべきです。
7、老人は毅然とした態度を取らなければならない。
老人は自らの権利をしっかりと守り、誰にも屈服せず、いまわの際まで自分の領分をおさめてこそ尊敬される。
晩年というものは、受動的に生きてよいものではないのです。
8、セックスはあまりに過大評価されている。
肉体的な欲求の減退によって、人生の別の側面を楽しむ余地が生まれます。
9、自分の庭を耕そう。
老後にやりがいのある活動を見つけて心から楽しむことが、幸せな人生には欠かせません。
10、死は恐れるべきものではない。
長く生き、終わりに近づいているのに必死に生に執着するのは無益であり、愚かなことだとキケロは述べています。
人生100年時代、幸せになるためには、学びと他者への貢献が欠かせないように思えます。インプットとアウトプットを重ねることで、脳の廊下も防げます。今後も様々な書籍を読み、年齢を重ねてもこのブログを継続していきたいと思います。
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