The Art of Marketing マーケティングの技法(音部大輔)の書評

orchestra playing their piece
The Art of Marketing マーケティングの技法
音部大輔

本書の要約

パーセプションフロー・モデルは、消費者の認識(パーセプション)変化を中心としたマーケティング活動の全体設計図です。パーセプションフロー・モデルの運用能力を高めるで、マーケティングの成功確率を高められます。パーセプションフロー・モデルを全社で活用することで、企業は持続的な成長を図れます。

パーセプションフロー・モデルとは何か?

パーセプションフロー・モデルは、消費者の認識(パーセプション)変化を中心としたマーケティング活動の全体設計図です。マーケティングの4P、すなわち製品、価格、流通・店頭、施策などの全活動を図示するので、各活動が的確に配置され、連携し、全体最適を実現するのに有効です。(音部大輔)

オーケストラのようにマーケティングのそれぞれのステップに関わるメンバーが素晴らしい音を奏でることで、消費者が自社の商品を購入してくれるようになります。消費者の認識を変えるために、マーケティング活動の全体設計をパーセプションを基軸に考えるようにするとよいと著者は指摘します。

パーセプションフロー・モデルは、消費財のブランドマネジメントに携わっていた著者音部大輔氏が考案、命名したフレームワークです。1990年代末にP&Gの日用雑貨ブランドが、日本市場でブランドマネジメント用のツールとして使いはじめました。

パーセプションフロー・モデルは、製品や流通経路、販売の視点から「どのように売るか」という旧来型のアプローチではなく、消費者の視点から「どのように欲しくなり、満足するか」を考え、可視化していくことにその特徴があります。

ブランドが目指す未来像を「全体設計図」に表すことで、複数の部門やパートナー(広告会社、PR会社など)、多様な新技術など多くの要素をうまくオーケストレイト(統合)しやすくなるでしょう。

消費者の認識をマーケティングフローのステップの中で、さまざまな知覚刺激を与えることにより、どう変化するのか?を考え、マーケティングを行います。最新のITのテクノロジーや得られたデータを活用し、マーケティングの精度を高めることで、消費者が商品を購入し、やがてはリピートしてくれます。

パーセプションフロー・モデルによって、全ての関係する各部署を巻き込み、芸術的な音を奏で、消費者からの共感を目指しましょう。

パーセプションフロー・モデルの7つの効用

パーセプションフロー・モデル正しく導入することで、以下の7つの効用を得られます。

効用①全活動を把握でき、全体最適を実現しやすい
全活動を把握できれば、部分最適に陥らない

効用②各活動の目的が明確になるので成果を上げやすい。
活動ごとの目的を明示し、目的を中心に置くことで、マーケティングメンバーの意志を統一できます。

効用③消費者中心の経営を仕組み化できる

意見の相違が生まれるのは、①目指すべき目的を共有できていないか、②見えているモノや資源が異なるからです。同じ「消費者満足」を目指し、同じ「消費者の視点」を共有するなら、おのずと同意できることは増えるでしょう。上司やマネジメントと議論する際にも、消費者の言葉を代弁することで説明しやすくなります。他部門の意向や、取引先の主張についても、「消費者への影響」という観点から建設的な議論ができます。

消費者にとっていいことと、自社にとっていいことが一致するようなウィンウィンの関係を築くことで、企業は持続的な成長を維持できます。

効用④先端技術を運用しやすくなる
新しい技術や次世代のマーケティング・ツールを試験的に導入する際には、消費者への影響と全体の中での位置づけをパーセプションフロー・モデルで明示することで、実験を行えるようになります。最新のITを活用したマーケティングのPDCAを回すことで、競合との差別化を図れます。

効用⑤知識の収集・蓄積・流通のプラットフォームになる。
パーセプションフロー・モデルは、ブランド間の知識の伝播を促す共通言語になります。フローモデルにマーケティングの全容を共有することで、知識を蓄積できるようになります。マーケティング組織全体の経験値や知識の管理が改善し、効果的に成長につなげられます。

効用⑥自律的なオペレーションを構築できる
パーセプションモデルを導入するだけでなく、自社のメンバーだけでなく、外部の協力メンバーとの意志の統一ができ、効果的な施策が打てるようになります。

効用⑦競合対策の演習に活用できる

コミュニケーションのメッセージは消費者のタッチポイントによって、変えるべきです。「全接点で同じメッセージ」というアプローチは、いわば全楽器が一斉に同じ旋律を奏でるのに似ています。とても大きな音が出ますが、世代やメディアを考慮しないメッセージは、非効率になりがちです。

パーセプションフロー・モデルでは、すべての楽器(タッチポイント)がそれぞれにふさわしい旋律(メッセージ)を奏でて全体最適がなされた交響楽を目指します。

パーセプションモデルを実行する時には、自分ごと化がポイントになります。自分はどういった〈知覚刺激〉をどの〈メディア〉で受け取り、どう感じ、どう思ってどのような行動をとったか、段階ごとに振り返ってみましょう。〈行動〉→〈パーセプション〉→〈知覚刺激〉→〈メディア〉→次の段階の〈行動〉→〈パーセプション〉→〈知覚刺激〉→〈メディア〉、といった順番で振り返ると、消費者の行動を追いかけやすくなります。

パーセプションフロー・モデルの運用能力を高めるで、マーケティングの成功確率を高められます。パーセプションフロー・モデルを全社で活用することで、企業は持続的な成長を図れます。

マーケティングの入門書としてだけでなく、リーダーや経営者にも読んでもらいたい一冊です。リーダーが著者のアドバイスを実践することで、組織の力を最大化できるようになります。


この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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