藤井保文氏のグロースモデル アフターデジタルを生き抜く実践方法論の書評


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UXグロースモデル アフターデジタルを生き抜く実践方法論
著者:藤井保文,小城崇,佐藤駿
出版社:日経BP

本書の要約

すべてがオンラインになる「アフターデジタル」の世界が到来する中、UXの重要性が高まっています。企業がバリュージャーニーによって顧客のUXを高めることで、顧客の幸福度がアップします。ユーザーの成功を強力に支援するUXを提供できる企業が増えれば増えるほど、自由で豊かな社会が実現していくのです。

経営者がUXの重要性を意識すべき理由

テクノロジーとUXという2つの言葉を比較すると、私にはテクノロジーが過大評価され、UXが過小評価されているように見えています。それは、時代の変化によってUXの重要性が高まっているにもかかわらず、いまだ にPCインターネットの時代と同じ考え方でUXを倭小化するような、多大な誤解があるからだと思っています。(藤井保文)

すべてがオンラインになる「アフターデジタル」の世界に時代がシフトする中、私たちは古い常識に囚われています。顧客が体験を重視しているにも関わらず、いまだにUXをパソコンやスマホの画面上のものと捉えているのです。

しかし、スマートフォンが登場し、常時接続が当たり前になる中、アプリに活用シーンも多様化し、決済アプリやヘルスアプリなどを移動時に使用する頻度が高まっています。UXをデザインする際に、私たちは日常生活をもっと意識すべきです。経営者は「UX型DXを実現するために必要な活動」をモデル化した「UXグロースモデル」を採用し、組織をそれに応じたものに変えるべきです。

UX型のDXを実現するには、以下2つの活動が必要であると著者は指摘します。
・トップダウン型のグロース活動:バリュージャーニー型への転換と更新
・ボトムアップ型のグロース活動:顧客体験(UX)を継続的に成長させていく体制(グロースチーム)の構築と発展

この2つの活動が相互に影響し合うことで、社会やユーザーの状況に合致したUXが生まれ続けていくのです。UXを「人とモノの関係性」として捉える時代が終わり、UXを「相互に作用する環境」、つまりシステムやアーキテクチャーとして捉えるべき時代になったのです。

顧客が大きな成功に至るまでの行動フローに対してジャーニー横断的に価値提供する型・方法のことを「バリュージャーニー型の価値提供モデル」と呼んでいます。また、企業による価値提供の方法が抜本的に変化したことによって、企業が提供できる価値そのものも大きく変化しています。

顧客が体験を重視するようになる中で、企業の提供価値も「バリュージャーニーの提供を通じて、特定シーンにおける顧客の大きな成功を支 援すること」へと変化しています。顧客の個々の行動ステップの小さな成功を支援するだけなく、行動フロー全体を支援することによって顧客の大きな成功にコミットするように提供価値が変化しているのです。

バリュージャーニー型に転換した企業の競争力は「ジャーニー全体で、どれだけ強力に顧客の大きな成功を支援できるか」に左右されることになります。顧客の視点に立つと、「健康寿命を延ばしたい」という成功を最も強力に支援してくれる企業のジャーニーが、今後プラットフォーマーになり、顧客から支持されるようになります。

バリュージャーニー型の価値提供モデルで顧客体験をアップせよ!

これからの企業は「自社はどのような顧客の成功を支援するのか」を明確に定め、その成功に至るまでの行動フローをジャーニー横断的に支援する顧客体験の連なり(バリュージャーニー)を設計・構築し、それを継続的に磨いていく活動に重点的に取り組むことが必要になっています。

アフターデジタル時代が到来したことによって、企業はデジタルチャネルを活用して行動フローを横断的に支援することが可能になり、顧客の大きな成功を支援できるようになっています。このことは、企業がこれまでよりも人々の生活に大きな影響を与えられるようになっており、企業としての社会的な役割・責任を果たしやすくなっていることを意味します。

アフターデジタル時代には、企業は自社のパーパス、ビジョン、ミッションを明確にし、それの基づいたバリュージャーニーを設計し、顧客にサービスやプロダクトを提供すればよいのです。自社が考える理想の未来、顧客体験を提示し、アウトプットを行うことで、顧客や社員にパッションを与えられるようになります。トヨタのトヨタイムズは、未来のビジョンとCXとEXの両方を実感できる理想のアウトプットになっています。

もしも、自社のメッセージが古いと考えているのなら、アフターデジタル時代にフィットするよう、自社のパーパス、ビジョン、ミッションを時代に即したものへとアップデートすることを考えてもよいでしょう。ここからバリュージャーニーモデルを再構築していくのです。

マーケティングの重点領域は、集客・販売体験から使用体験へ移行する新たな収益・マーケティングモデルに転換することによって、マーケティング活動に求められる役割やフォーカスポイントも変わっていきます。新たなモデルを前提とすると、顧客との継続的なつながりの中で得られる収益を最大化することが企業にとってのビジネスゴールとなるため、マーケティングのゴールは「短期売り上げの最大化」から「LTV(顧客生涯価値)の向上・最大化」へと移行します。

企業はマーケティング予算や人的リソースを、広告宣伝や営業といった集客・販売体験の領域から、「バリュージャーニーを成長・進化させ、顧客の成功をより強力に支援できるものにしていく活動」や「バリュージャーニーの適切な使い方を教育・啓発する活動」といった使用体験の領域に移行させていく必要があります。組織には、優秀なUXデザイナーやカスタマーサクセス担当者が欠かせなくなっているのです。

テスラはソフトウェアをアップデートすることで、車の顧客体験を変えています。商品のリリース後でもテクノロジーを活用すれば、比較的容易に機能や体験を更新できます。今後は、リリース後でもUXを継続的に成長・進化させられるかが競争優位を左右します。

デジタルサービスはユーザーの行動データを取得できるようになるため、ユーザー行動に関する事実に基づいて、商品やサービスを開発できるようになります。バリュージャーニー型の価値提供により、顧客のUXを高める企業が増えることで、顧客の幸福度もアップします。ユーザーの成功を強力に支援するUXを提供できる企業が増えれば増えるほど、自由で豊かな社会が実現していくのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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