隠れたキーマンを探せ! (マシュー・ディクソン,ブレント・アダムソン,ニック・トーマン)の書評

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隠れたキーマンを探せ!
マシュー・ディクソン,ブレント・アダムソン,ニック・トーマン
実業之日本社

本書の要約

自社のプロダクトやサービスを購入してもらうためには、「チャレンジャー顧客」(モビライザー)を動かすことが肝になります。モビライザーに自社の経営をよくするストーリーので「コマーシャルインサイト」を使って、提案することで、顧客にスピーディに自社製品を購入してもらえるようになります。

モビライザーの発見が新たなマーケティングの第一歩

顧客のなかのこれはというステークホルダーを注意深く特定し、彼らに周囲の同僚をもっと効果的に動かす術を伝授すれば、どんな企業でも目標達成への歩みを進めることができる。(マシュー・ディクソン,ブレント・アダムソン,ニック・トーマン)

優秀なマーケターや営業パーソンは企業の中の「チャレンジャー顧客」(モビライザー)を発見するのが得意です。競合企業との価格競争に巻き込まれずに、自社のプロダクトやサービスを購入してもらうためには、このモビライザーを動かすことが肝になります。モビライザーに対して「コマーシャルインサイト」を使って、提案することで、顧客に自社製品をスピーディに購入してもらえるようになります。

■モビライザー(動員者)・・・購買決定に関与する5.4人のうち、最もフォーカスすべき人物。彼らは組織を動かす(モビライズする)役割を果たしています。モビライザーは特定の資質をもった複数人物の組み合わせです。顧客が導入決定する際に関与する幅広い関係者の合意を左右するモビライザーを味方につけるのです。

■コマーシャルインサイト・・・「自分たちは、間違っていた」と、いままで信じてきた世界が、揺るがされるようなレベルの提案を顧客に行います。彼らの間違いを正す唯一の手段として、自社の商品・サービスを、顧客に想起させられるようにマーケティングフローをデザインすべきです。

顧客を教え導くというチャレンジャースタイルが、B2Bマーケティングの成功の秘訣です。大企業に自社プロダクトを導入させるためには、機能不全を起こしている組織の課題を解消するアプローチが欠かせません。

著者たちの調査によると、数百社の上級意思決定者がサプライヤーの選択に際して一番気にするのは、そのサプライヤーが顧客組織全体で幅広く支持されているかどうかでした。上級意思決定者が複雑な取引で最重要視するのは、サプライヤーのソリューションではなく、自社のメンバーの賛同であったのです。クライアントは新しいソリューションを導入した際の従業員の反対をもっとも恐れていたのです。

成功するマーケターや営業パーソンは、導入企業の以下のメンバーにアプローチしていることが明らかになりました。
①ゴー・ゲッター・・・目に見える事業成果につながるアイデアを支援しようと人
②ティーチャー・・・新しいアイデアに勢いをつけるビジョンを描ける。
③スケプティック・・・用心深い性格ではあるものの、よく調べて問題がなければ着実に変革を推進する。  

売る相手がヒトというだけでなく、優れた売り手は正しいヒトに売る。

顧客組織のなかでものごとを前へ進めているのはこの種類の人たちです。これら3種類の関係者(ゴー・ゲッター、ティーチャー、スケプティック)を「モビライザー(動員者)」に置くことで、ビジネスは成功します。彼らは組織の各種リソースを動員して行動を喚起し、コンセンサスを築き、変革を後押ししてくれます。

新しいマーケティングとはモビライザーに買い方をコーチすること

われわれがひとつ学んだのは、モビライザーもよくわかっていないかもしれないということだ。モビライズ(動員)の意向があるからモビライズできるとはかぎらない。そこで、こちらが一役買おうというわけだ。合意形成プロセスを実質的に「支配」し、集団を合意に導くのである。

モビライザーと、顧客の購買プロセスを調査した結果、著者たちは次の3つの実行ポイントを見つけました。 
①モビライザーに、どこで学べばよいかを「指導」する。
②モビライザーへの関与のしかたを、それぞれのタイプに「適応」させる。
③モビライザーが合意形成プロセスを「支配」できるように導く。

サプライヤーが、多様な(機能不全を起こしている)購買集団を共通のビジョンにつなぎ止めるフレームワーク――新しい集団的なメンタルモデル――を提供することで、取引先の合意形成の促進を手助けできるようになります。新しいマーケティングとはモビライザーに買い方をコーチすることなのです。

花形販売員がモビライザーをあてにするのも納得がいく。彼らはそもそも、顧客組織のなかで最も変化を受け入れやすい人たちである。斬新なアイデアに飢え、新たな行動を検討するのにやぶさかでなく、おまけに、その新たな視点に対する他者の賛同を勝ち取ることができる。もちろん、モビライザーがサプライヤーを(なかでも特定のサプラィヤーを)あてにしているかというと、必ずしもそんなことはない。しかし彼らは少なくとも(時にはしぶしぶであれ)、サプライヤーが何か価値ある情報を持っていそうだと感じたら、そのサプライヤーとの会話を受け入れてれる。

サプライヤーはまず顧客組織内の誰かに、変化が必要であることを納得させなければなりません。目標はソリューションを買わせることではなく、行動を変えさせることなのです。その際、彼らが行動を起こすためのサプライヤーのメッセージ開発(変化の必要性の訴え方)が重要になります。

営業パーソンはモビライザーに、自分と話さなくてはならないと感じさせこと、彼らを指導することで、自社への優位性を築けるようになります。そのために以下の4つのステップを実践しましょう。 
①モビライザーの注意を惹きつける。
②行動変革を支持したいと彼らに思わせる。
③共通のビジョンのもと、他の4.4人の支持を集めさせる。  
④そのビジョンをきっかけに、顧客にサプライヤー独自のソリューションを想起させる。

その際、必要になるのが、コマーシャルインサイトというコンテンツになります。
①顧客のビジネスについて新しい魅力的な情報を教える。
②なぜ行動を起こすべきかについて、説得力ある理由を顧客に提供する。

言い換えれば顧客は、世界全般ではなく、彼ら自身のビジネスに関する意外な情報に接したとき、現在の針路を考え直したり、従来の購買基準をリセットしたりする可能性が最も高いのです。もっと具体的には、行動を起こすことのメリットだけでなく、行動を起こさないことのコストについて説明した情報が効果的なのです。

優れたインサイトに内在するのは、「ねえ、それ間違ってますよ!」という簡潔なメッセージである。うまくいけば、「じゃあ変えなきゃ!」と顧客に言わせることができる。だから「型破り」なのだ。

インサイトは顧客の需要をつくり、つくり直すための強力な手段です。現状の行動と、別の新しい行動とのあいだに認知的・感情的不協和を引き起こすことができれば、顧客はサプライヤーの提案を受けようと考えます。マーケターは変わらないことの痛みを顧客に提示するコンテンツ=コマーシャルインサイトを開発しましょう。

そのコンテンツには次の3つの要素が欠かせません。
①自社の得意分野は何か?自社のソリューションの特徴、ベネフィット、圧倒的な導入効果
②自社だけの得意なことは何か?独自の強みの明確化
③自社の強みのうち、持続可能なものは何か?真の差別的要因、ユニークなものは何か?有益、防御可能、持続可能なことを明らかにする。

焦点を当てるべきは顧客のストーリーであり、顧客が彼らのビジネスにとって重要な何かを見逃していないかどうかです。サプライヤーは自分たちが顧客からどう見られているかを知るのではなく、顧客が自分自身をどう見ているかを意識すべきです。

顧客に「あなたは間違っている」と(上手に)言うためには、彼らのそもそもの考え方=メンタルモデルを理解する必要があります。顧客を変化させ、自社のプロダクトを導入させるためには、 まず顧客のメンタルモデルを変えなければなりません。顧客の行動を変える唯一の方法は、顧客の考え方をまず変えることが重要です。

それでも、われわれの調査からは次のことがわかっている。つまり、優れた販売員(「チャレンジャー」販売員)と優れた企業(「チャレンジャー」組織)は、顧客の現在のメンタルモデルを、その行動を変えさせるためのレバレッジポイントと捉えている。だから優れたサプライヤーは、自社のソリューションの利点について顧客と話し合うのではなく、顧客の現在の考え方について話し合う。そしてその話し合いのなかで、顧客の現在のメンタルモデルを、如才なく、共感を呼ぶように、文化的に正しく、だが手順どおり粛々と破壊し、その誤りや不完全さを示し、お金や痛みを伴いすぎると思われている変化が、実は現状維持に比べてお金や痛みを伴わないことを明確に説く。

顧客に変わらぬことの代償は変わることの代償より大きいということを、注意深く、相手の信頼を得られるように証明します。

顧客のメンタルモデルを転換するコンテンツと商談を通じて、顧客を自社のファンに変えていくのです。変化しない顧客の姿勢を破壊した上で、自社のソリューションの提案を行うべきです。

その上で次の4つの要素を明らかにしましょう。
①自社の持続可能な強みは何か?
②その強みの中で、顧客によく認識されていないものは何か?
③顧客が彼ら自信のビジネスについて理解していない点(そのせいでわれわれ独自の持続可能な強みに気づいていない点)は何か?顧客が見逃している点を明らかにする。
④顧客のビジネスについて何を教えてあげれば、彼らの現在の認識を変えられるか?

この視点を持って、モビライザーに自社を見つけてもらい、信頼関係を醸成をするためのコマーシャルインサイトを提案するのです。次回はケーススタディを取り上げながら、B2Bマーケティングの成功の秘訣を明らかにしていきます。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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