マシュー・サイドの失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織の書評


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失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織
著者:マシュー・サイド
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン

本書の要約

私たちは失敗との付き合い方を見直さなければなりません。 自分の失敗体験をオープンにし、その理由を明らかにしていくことがとても重要です。失敗を組織内に留めるというクローズドループの罠から抜け出すことをで、ミスを犯す確率を下げられます。

失敗との向き合い方が成功を左右する!

我々が進化を遂げて成功するカギは、「失敗とどう向き合うか」にある。(マシュー・サイド)

失敗から積極的に学ぶ人と組織だけが「究極のパフォーマンス」を発揮できると『タイムズ』紙の第一級コラムニストのマシュー・サイドは指摘します。著者は「失敗」が起きるプロセスを分解し、人間心理や組織の問題点を炙り出していきます。「失敗」から学習することで、成功する確率を高められることが明らかになってきました。

著者は航空業界は失敗を活かし、医療業界は失敗を隠すと言います。 航空機にはすべて、ほぼ破砕不可能な「ブラックボックス」がふたつ装備されています。ひとつは飛行データ(機体の動作に関するデータ)を記録し、もうひとつはコックピット内の音声を録音します。

ひとたび事故が起これば、ブラックボックスは回収され、データ分析によって事故の原因が究明されます。そして、二度と同じ失敗が起こらないよう速やかに対策がとられます。 この仕組みによって、航空業界はいまや圧倒的な安全記録を達成しています。

航空産業の黎明期には、事故が多発していましたが、今日、状況は大きく改善されています。国際航空運送協会(IATA)によれば、2013年には、3640万機の民間機が30億人の乗客を乗せて世界中の空を飛びましたが、そのうち亡くなったのは210人のみでした。

欧米で製造されたジェット機については、事故率はフライト100万回につき0.41回。単純換算すると約240万フライトに1回の割合となります。2014年のジェット旅客機の事故率は、100万フライトに0.23回という歴史的に低い率にとどまっていいます。失敗から学ぶプロセスを最も重視していると言われるIATA加盟の航空会社に絞れば、830万フライトに1回と言います。

航空業界においては、新たな課題が毎週のように生じるため、不測の事態はいつでも起こり得るという認識のもと、過去の失敗から学ぶ努力を続けています。航空業界では事故を防ぐために情報をオープンにし、そこから学ぶ仕組みをつくっています。

なぜ、人は失敗から学べないのか?

人は自分の過ちを認めるのが嫌いだ。

医療業界では失敗はマイナスのイメージがあるようです。1999年の米国医学研究所は「人は誰でも間違える」という調査よれば、アメリカでは毎年4万4000~9万8000人が、回避可能な医療過誤によって死亡していると言います。ハーバード大学のルシアン・リープ教授が行った包括的調査では、さらにその数が増えます。アメリカ国内だけで、毎年100万人が医療過誤による健康被害を受け、12万人が死亡しています。

誤診、投薬ミス、手術中の外傷、手術部位の取り違え、輸血ミス、転倒、火傷、床ずれ、術後合併症などの医師や医療関係者のミスが、多くの被害者を生み出しています。

ジョンズ・ホプキンス大学医学部のピーター・プロノボスト教授は、2014年夏の米上院公聴会で、「ボーイング747が毎日2機、事故を起こしているようなものだ」と述べています。

「回避可能な医療過誤」は、「心疾患」「がん」に次ぐ、アメリカの三大死因の第3位に浮上します。老人ホームでの死亡率のほか、薬局、個人病院(歯科や眼科も含む)などを含めれば、より被害者は増えます。医療過誤による深刻な合併症まで含めれば、被害者は、死亡者数の10倍にのぼるという試算もあるほどです。

医療事故の原因は以下の3つになります。
①医療の複雑さ、診断から治療までのあらゆる時点でミスが起こる。
②資金や人手の不足。
③医者が常にとっさの判断をしなければならない緊急性。

しかし、根本的な問題は、医者が失敗を隠すことにあると著者は指摘します。

人は誰でも、自分の失敗を認めるのは難しい。ほんの些細な失敗でさえそうだ。友達同士の気楽なゴルフでさえ、自分のスコアが思わしくないと不機嫌になる。だから、仕事、親の役割など、自分の人生にとって重要なことで失敗を認めるのは、もう別次元の難しさになる。何かミスを犯して自尊心や職業意識が脅かされると、我々はつい頑なになる。とくに、長年経験を積んで高い地位に昇りつめた医師にとって、失敗を公にするのは耐えがたい苦痛だろう。

医療業界には失敗を隠す文化があります。これを変えない限り、医療事故は減らせません。医療業界の大きな問題は、失敗から学ぶシステムが整っていないことに加え、たとえミスが発覚しても、学びが業界全体で、失敗が共有されないことなのです。

逆に、航空業界では、全航空会社、全パイロット、全監督機関が、ほぼリアルタイムで新たな情報にアクセスできるようになっています。ほぼ瞬時に、世界中でデータが共有され、業界内に浸透していきます。

医療業界では、クローズド・ループ現象が起こり、失敗が繰り返されます。医師や医療関係者は失敗を認めなかったり、言い逃れをしたりすることが習慣になっています。 航空業界のように失敗に対してオープンで正直な文化をつくれば、組織全体が失敗から学べるようになり、そこから改善活動が起こります。

私たちは失敗との付き合い方を見直さなければなりません。 自分の失敗体験をオープンにし、その理由を明らかにしていくことがとても重要です。失敗を組織内に留めるというクローズドループの罠から抜け出すことをで、ミスを犯す確率を下げられます。

世界中のパイロットは自由に事故の報告書にアクセスでき、失敗から学べるようになっています。エレノア・ルーズベルトの名言を彼らは組織に取り入れているのです。

人の失敗から学びましょう。自分で全部経験するには、人生は短すぎます。(エレノア・ルーズベルト)

「失敗が欠かせない」と考える「成長型マインドセット」の思考を取り入れること、失敗を隠さないことが次の成功につながります。自分が完璧だと思うのではなく、失敗することがあたり前だと考えることで、改善のステップを踏み出せます。

失敗のとらえ方を変えることで、仕事や日常生活でパフォーマンスを高めることができるようになります。成功には失敗が欠かせないというマインドセットを身につけることで、私たちは成功に近づけるのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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