解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法(馬田隆明)の書評

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解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法
馬田隆明
英治出版

本書の要約

解像度を高めたければ、情報をひたすら収集する「内化」と、言語化したり、作ったりする「外化」をひたすら繰り返しましょう。仮説ができたらプロトタイプをつくり、顧客との対話を始めます。顧客からフィードバックを得ながら、改善を続けることで、よいビジネスが生まれるようになります。

優れた経営者には解像度が高いという共通点がある!

優れた起業家は、市場、技術、ビジネスモデル、そして将来の事業計画といった、ビジネスで要求される多くの面で高い解像度を持っています。さらに情報が点としてばらばらに存在するのではなく、それぞれの情報が有機的につながっています。(馬田隆明)

東京大学 FoundXディレクターの馬田隆明氏は優秀な起業家との面談を繰り返すうちに、解像度の高い人が持つ4つの視点に気づいたと言います。
・深さの視点・・・原因や要因、方法を細かく具体的に掘り下げる
・広さの視点・・・考慮する原因や要因、アプローチの多様性を確保する
・構造の視点・・・「深さ」や「広さ」の視点で見えてきた要素を、意味のある形で分け、要素間の関係性やそれぞれの相対的な重要性を把握する
・時間の視点・・・経時変化や因果関係、物事のプロセスや流れを捉える

実際、私の周りの優秀な経営者も解像度が高いという共通点があります。ビジョンだけでなく、ビジネスのプロセスをロジカルに説明したり、プロトタイプを見せることでビジネスの実現性を具体的に話すことで、周りの人を上手に巻き込んでいます。会う度にアウトプットの質が高まっていて、彼らはスピーディに成長しています。

経営者は不確実の環境の中で未来の解像度を上げる必要があります。経営戦略や仮説を作り意思決定するだけでなく、高い解像度で取締役や社員、パートナー、投資家などのステークホルダーに説明しなければなりません。そのために4つの視点を使いながら、解像度を高めるようにすべきです。

解像度を上げることで現状への理解を深め、時には新しいビジネスや改善の機会を認識し、時には新たな脅威を見つけて、効果的に業務を遂行できるようになります。逆に、解像度が低い状態で業務や意思決定をするのは、霧のかかった中で射るべき的が見えないまま、当てずっぽうに打ち手という矢を射るようなものです。

人・物・金といった限られた資源を適切に配分し、ビジョンを実現することが経営者の仕事なのですから、矢を射る前にしっかりと霧を晴らすことが欠かせません。経営者は実行や意思決定の前に、物事を高い解像度で見なければならないのです。自社やクライアントの解像度を高くすることで、的確な解決策が提示できるようになります。

解像度を上げるための3つの基本姿勢

相手の持つ課題を、時間軸を考慮に入れながら、深く、広く、構造的に捉えて、その課題に最も効果的な解決策を提供できていることが、解像度が高い状態です。

優秀な経営者は一つの事象を深く、広く要素分解した上で構造化し、その中で特に重要なポイントを特定しています。さらに時間の影響も考慮しています。私の周りの優秀な経営者も物事を深掘りし、因数分解を絶えずしているため、課題の発見能力が高く、そのための解決策を短期間で生み出せるのです。

著者の解像度を高めるための48の方法はとても参考になります。深掘りするためのメソッドをいくつか紹介しますが、このステップを踏むことで解像度は確実に高まります。
・言語化して現状を把握する
・サーベイする
・インタビューする
・現場に没入する
・個に迫る
・Why so?を繰り返して、事実から洞察を導く
・習慣的に言語化する・言葉や概念、知識を増やす
・コミュニティで深掘りを加速する

自分のアイデアを言語化し、他者に説明することで、何が不足しているかが明確になります。私も自分のクライアントにファクトブックやプレスリリースを書くことを勧めていますが、このプロセスを実践することで、解像度が一気に高まります。言語化することで、よいフィードバックも受けられるようになり、アイデアの幅が広がります。ベンチャー企業はファクトブックの精度を上げることで、資金の調達も楽になるというメリットも得られます。

解像度を上げるための基本姿勢 は「まず行動する」「粘り強く取り組む」「型を意識する」 の3つを組み合わせることです。「情報」「思考」「行動」の「量と質」を高めることで、解像度も自ずとアップします。

情報を得たらすぐに思考し、思考したらすぐに行動し、行動をして情報を得たらまた深く思考する、これを短時間のうちに繰り返すことで解像度を上げられるようになります。

あるべき姿を定義し、現状とのギャップを明らかにすることで、課題が見つかります。その課題を徹底的に深掘りすることで、ビジネスのヒントが明らかになっていきます。発想を広げたり、視点や視座、時間軸を変えることで、本当にやるべき課題が定義でき、正しい解決策が見つかるのです。

著者は、良い課題の条件と良い解決策の条件を明らかにしています。ここに意識を向けることで、良いビジネスを作れるようになります。
■良い課題の条件
・大きな課題である
・合理的なコストで、現在解決しうる課題である
・実績を作れる小さな課題に分けられる

■良い解決策の条件
・課題を十分に解決できる
・合理的なコストで、現在実現しうる解決策である
・他の解決策に比べて優れている

解像度を高めたければ、情報をひたすら収集する「内化」と、言語化したり、作ったりする「外化」をひたすら繰り返しましょう。仮説ができたらプロトタイプをつくり、顧客との対話を始めます。顧客からフィードバックを得ながら、改善を続けることで、よいビジネスが生まれるようになります。


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