新規事業を成功させる PMF(プロダクトマーケットフィット)の教科書 良い市場を見つけ、ニーズを満たす製品・サービスで勝ち続ける
栗原康太
翔泳社
本書の要約
ビジネスの解像度を高め、顧客を見つけるためにPMF(プロダクトマーケットフィット)を行うべきです。顧客からフィードバックを受けることで、顧客に受け入れられる商品やサービスをつくれるだけでなく、正しい営業やマーケティングの方法が明らかになり、商談の成功確率もアップできます。
PMF(プロダクトマーケットフィット)がベンチャー成功の鍵
「PMFするまでコードを書くこととユーザーの声を聞くこと以外、なにもするな」とスタートアップの世界ではいわれるように、顧客の声を聞くことと、実際に商品を開発することがPMFに至るための最重要行動です。(栗原康太)
ベンチャー・スタートアップの成功確率はとても低く、収益化する前にその多くが失敗しています。私はベンチャー企業のアドバイザーを長年していますが、PMFの巧拙が事業成功を左右することを日々実感しています。
株式会社才流代表取締役の栗原康太氏はPMFの失敗と成功を経験し、多くのPMF事例を分析した結果、PMFを成功させる方法を明らかにしました。
資金力のないベンチャー、スタートアップは正しいPMFを行わないと資金ショートのリスクを高めます。PMFしないまま営業やマーケティング投資を行うことで、時間とお金を無駄にしてしまいます。ビジネスの解像度を高め、顧客を見つけるために、最適なランディングページや営業資料をつくり、顧客からのフィードバックをもらうようにします。
リードを集める→商談する→受注・失注する、ということを繰り返すうちに、顧客に受け入れられる商品やサービスがつくれるだけでなく、正しい営業やマーケティングの方法が明らかになり、商談の成功確率もアップできます。
実際、私の顧問先は商談のたびに、顧客からフィードバックを受け取り、商品や売り方の精度を高めています。Win-Winを意識した商談を続け、3ヶ月ほどで勝利の方程式を見つけることに成功し、コンバージョン率をアップできました。B2Bの営業では誰に会うかも重要です。導入決定者で経営陣にアポを取ることで、リードタイムを短くできるだけでなく、紹介を受けられる可能性もアップします。
PMF達成の指標になるのは受注数であり、カスタマーサクセスしている顧客の有無や数です。
vanity metrics(虚栄の指標)に左右されずに商談数やカスタマーサクセスをPMFの指標にしましょう。
vanity metrics
・SNSでの言及数
・プレスリリースの掲載数
・PV数
・アクティブ化や有料化につながっていないユーザー数
・イベント登壇数
・ピッチイベントでの入賞
・資金調達の成功
・資金調達の調達額
・従業員数
うまく言っているベンチャーは、ピッチで優勝したり、資金調達で成功するよりも、受注数を重視しています。数年後に結果を残せる企業をつくるためには、正しいPMFを行い、顧客を発見することが重要なのです。
PMFの6つのフェイズ
PMFは以下の6つのフェイズで進めていきます。
①CPF(カスタマープロブレムフィット)
想定している課題を顧客が抱えているか、それがどれほど深い課題なのか、競合が存在する場合は競合がこれまで解決できていない課題はなにかを検証するプロセスとそれが検証された状態。30程度の顧客をインタビューし、顧客の共通課題を発見します。
②PSF(プロブレムソリューションフィット)
自分たちが提供する解決策が顧客が求めるものかどうかを検証します。
・営業資料やランディングページ
・紙芝居や動画
・モックやプロトタイプ
・MVP(Minimum Viable Product:必要最小限の価値を提供できる商品のこと)
③SPF(ソリューションプロダクトフィット)
解決策がプロダクトとして実現可能か、商品が解決策を十分に実現できているかを検証します。
④PMF(プロダクトマーケットフィット)
SPFが確かめられた商品を開発・リリース。実際に販売活動を行い、商談を獲得できるのか、受注できるのか、そして、商品を利用してもらった顧客が満足してくれるのか、を検証していきます。このフェーズの目的は事業の成長ではなく、PMFの達成になります。その際、顧客が買ってくれるのか、顧客が喜んでくれるのか、顧客が熱狂してくれるのか、にこだわるようにします。
⑤GTM(ゴートゥーマーケット)
自社の商品をどのような流れで顧客へ届けるかをまとめた戦略。
⑥Growth(グロース)
営業やマーケティング投資だけでなく、組織の拡大を目指す。
顧客とのWin-Winの関係をつくるためには、バリュー・プロポジションが欠かせません。以下の3つの視点で、自社のバリューを整理し、顧客に行動を起こしてもらいましょう。
①顧客が望んでいる価値
②自社が提供できる価値
③競合が提供できない価値
顧客や市場、競合、組織運営についての解像度が高い人が、解像度が高い領域でビジネスを立ち上げることで、成功確率がアップします。
解像度が低い状態で顧客や業界を捉えている起業家と、解像度が高い状態で顧客や業界を捉えている起業家では、出せる企画やアイデア、意思決定の質は当然のように変わってきます。当然、解像度が高いほど、意思決定や施策実行の精度が高く、スピードも速くなります。
顧客獲得のためのマーケティング活動を設計する上でも顧客への解像度が高ければ、マーケティングや営業で正しい施策を行えるようになります。
顧客への提供価値の解像度を上げ、顧客体験を高めることを示せれば、売上は自ずとアップします。キャズムのステージやセグメントによって、顧客の特性も変わりますから、PMFをそのたびに行いましょう。
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