Hit Refresh(サティア・ナデラ)の書評

man sitting on chair wearing gray crew-neck long-sleeved shirt using Apple Magic Keyboard
Hit Refresh(ヒット リフレッシュ)
サティア・ナデラ, グレッグ・ショー, ジル・トレイシー・ニコルズ
日経BP
 

本書の要約

マイクロソフトのサティア・ナデラCEOのCは「culture(文化)」のCで、自分を文化の管理人だと捉えています。彼の仕事は社員がマイクロソフトと取り決めたそれぞれのミッションを達成するのを手助けすることなのです。文化とは社員の間に広まるものであり、何千、何万もの社員が毎日下す数え切れないほどの判断の総体なのです。

マイクロソフトが復活できた理由

人間や組織や社会は、新たなエネルギー、新たなアイデア、つながり、再生を絶えず求めていく中で、どう変化していく可能性があるか。あるいは、どう変化していくべきか。どう「リフレッシュ」ボタンを押せばいいのか。それは本質的に、私たち人間、あるいは共感という人間独自の性質に関係している。(サティア・ナデラ)

サティア・ナデラがマイクロソフトのCEOになることで同社は再び成長し、時価総額も世界1,2位を争うところまで復活しました。彼は共感を高めること、リーダーと社員のマインドセットを変えることで、変革を起こしたのです。

マイクロソフトを変えるためにナデラは企業文化の変革を最優先課題に取り上げ、社員やパートナーとともに新たな文化づくりに着手しました。マイクロソフトの社員は人間の未来に貢献できるような企業文化を生み出すことが求められたのです。

テクノロジーの激流が世の中を大きく変える中で、共感の価値はいっそう高まっていくとナデラは指摘します。パソコンからモバイルにマーケットがシフトし、マイクロソフトは存在感を失いましたが、同社が復活するためには顧客への感情移入が鍵を握ると考え、リフレッシュボタンを押すことを選択します。

マイクロソフトのCEOに選出されたときにナデラは自分のパーパスは何かを自問したと言います。

マイクロソフトの存在理由は何か? この新たな役職での私の存在理由は何か?

そして、人心と文化をリフレッシュすれば、マイクロソフトの復活は可能だという答えを手に入れたのです。

ナデラはクリケット好きで、そこから3つの原則を学びます。この原則がその後の彼の人生とビジネスに影響を与えました。
①おじけづき、ためらってしまうような場面でも気迫と熱意で立ち向かう。
②自分個人の成績や評判よりも、チームを第一に考える。
③リーダーシップがきわめて重要。(自分が率いているメンバーの自信をたかめること)

ナデラはこのクリケットの原則を発展させ、マイクロソフトの原則をつくります。目標とイノベーションと共感、この3つの化学反応に基盤を置くという原則によって、マイクロソフトの変革を実践させていったのです。多様な人たちに共感を持つことがリーダーには欠かせないとナデラは指摘します。

CEOとは文化の管理人である!

リーダーは、外部のビジネスチャンスと内部の能力や文化、およびそれら相互の関係に目を向け、そのチャンスがありきたりなものになる前に対応しなければならない。この産業は伝統を尊重しない。イノベーションを尊重する。モバイルファースト、クラウドファーストの世界でマイクロソフトを発展させることが、私たち全体の課題だ。

ナデラがCEOになった際に、マイクロソフトは「モバイルファースト、クラウドファースト」になることを目指しました。デバイスに縛られないモバイルな人間経験が重視され、クラウドがそれを可能にし、新世代の知的経験を生み出す世界をサポートすることがマイクロソフトのミッションになったのです。

マイクロソフトがあらゆる事業を通じて展開していく変革は、マイクロソフトやその顧客が、この新たな世界で成長・発展するのを支援するものでなければならないというメッセージをナデラは社内外に発信しました。

マイクロソフトのサティア・ナデラは、成長マインドセットの考え方を社内に浸透させるために、まず彼の補佐役たちにはキャロル・ドゥエックの『マインドセット』を必ず読むよう指示しました。(マインドセットの書評

固定マインドセットは自分を制限し、成長マインドセットは自分を前進させてくれます。生まれ持った能力は、出発点にすぎません。私達は情熱、努力、訓練次第で、その能力を高められます。

私は、CEOのCは「culture(文化)」のCだと考えたい。CEOは、企業文化の管理人だ。

リーダーや社員が耳を傾け、学び、個々の情熱や才能を会社のミッションに生かす文化があれば、その企業は何でもできるのです。そのような文化を生み出すことが、CEOとしての最も重要な仕事だとナデラは述べています。

彼はあらゆる機会を利用して、精力的に学習していく文化の実践を社員に奨励しています。以下の3つの点において成長マインドセットを毎日行動で示すことで、成長マインドという文化を社内に定着させたのです。  

①できる限り顧客のことを考える。
まだ漠然としている顧客のニーズ、満たされていないニーズを優れたテクノロジーで満たそうとする好奇心や熱意がなければなりません。そのためには、これまで以上に深い洞察力と共感力で、顧客のニーズを吸い上げる必要があります。

顧客の声を傾聴することによって顧客のニーズを予知できるようになります。それが成長マインドセットだとナデラは指摘します。顧客やその事業について学び、ニーズを満たすための手段を提供します。イノベーションを起こすことでユーザーをファンに変えられます。熱意を持って外部から学び続けることで自分を成長させられるだけでなく、チームにも貢献できるのです。

②積極的にダイバーシティー(多様性)とインクルージョンを追求すれば、会社はベストの状態になる。
世界全体の役に立とうとするなら、社員の多様性を絶えず向上させ、マイクロソフトの思考や意思決定に、幅広い意見や視点を取り入れることが必要になります。多様性を受け入れれば、それぞれが自分の偏見を修正し、進んで態度を変え、社員全員の総合的な力を利用できるようにうなります。

違いを重視するだけでなく、それを積極的に探し出して、取り込むことで、アイデアを改善し、製品を向上させ、顧客のニーズにいっそう応えられるようになります。  

③マイクロソフトは一つの会社(One Microsoft)であって、派閥の集合体ではない。
縦割りの組織は、イノベーションや競争の妨げでしかなく、その壁を乗り越えていかなければなりません。顧客を第一に考え、多様性を受け入れ、団結した一つの会社として活動するのです。

成長マインドセットを行動で示すことが、ミッションを実践し、世界を真に変えていくことにつながる。要するにこれが、私がマイクロソフトに植えつけ、普及させようとした具体的な文化だ。

 成長マインドセットは、個人に権限を与えるよう促します。強い抵抗があったとしても、ひとりの人間、一つのチームのが正しく判断し、積極的に行動することで、組織は強化できるのです。

成長マインドセットがあれば、不確定要素を見込んで、新たなテクノロジーも活用できます。何があっても恐怖や思考停止に負けず、イノベーションを起こし続けるのです。自ら進んで不確定要素に立ち向かい、リスクを取る必要があるのです。失敗に気づいた時にはすぐに行動を起こすことで、未来を明るくできるのです。

ナデラはマイクロソフトのリーダーシップの3つの原則を明らかにしています。
①一緒に働く人に明確な指針を与える。
②自分のチームだけでなく、会社全体に活力を生み出す。
③自ら行動し、成功を実現させる方法を見いだす。

会社のあらゆるチームのリーダーが、互いに強いパートナーシップを結ぶべきだ。だがこうした成長マインドセットは、社内に限らず対外的にも必要だ。過去10年で市場勢力図は激変した。現在では、これまで友好的な関係にあった企業とも、かつて敵 対関係にあった企業とも、まったく新しい形でのパートナーシップが求められている。

イノベーションを引き起こす製品、顧客を喜ばせる製品を常に開発していくためには、賢明なパートナーシップが求められます。

パートナーだけでなく、ライバル企業とも話し合える文化があれば、より優れた構想が生まれ、より幅広い能力を獲得できます。実際、マイクロソフトはリンクトインをM&Aしたり、アップルやグーグルとのライバルとの関係を改善し、顧客体験を高めることで復活を果たしたのです。

信頼は、さまざまな要素で構成されるとナデラは言います。
・敬意を表する
・耳を傾ける
・誠実に接する
・目標を常に見据える
・必要な時に進んでリセットボタンを押す

文化とは社員の間に広まるものであり、何千、何万もの社員が毎日下す数え切れないほどの判断の総体なのです。サティア・ナデラCEOが文化の管理人であるとは、社員がマイクロソフトと取り決めたそれぞれのミッションを達成するのを手助けするということなのです。


この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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