QUITTING やめる力 最良の人生戦略 (ジュリア・ケラー)の書評

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QUITTING やめる力 最良の人生戦略
ジュリア・ケラー
日本経済新聞出版

本書の要約

目標に向かって頑張り続けることは素晴らしいことですが、それが苦痛や無意味になる場合は、勇気を持ってやめることも許されるべきです。人間の脳は柔軟で、新たな情報や状況に基づいて判断し、必要な時には戦略を変えることができる能力を持っています。それゆえ、やめることも選択肢の一つとして真摯に考えるべきなのです。 

やめることが人生の可能性を広げる?

「やめること」は自分自身と未来に対する寛容な態度であり、自分自身に「これじゃない。今じゃない。後で、何か別のことをしよう」と語りかけることだ。(ジュリア・ケラー)

ジュリア・ケラーは、ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト兼小説家であり、自分の人生をより良くするためにやめることを選択してきたと述べています。彼女はウエスト・ヴァージニア大学院を辞める決断をする際に苦悩しましたが、その後、オハイオ州立大学院で博士号を取得し、ジャーナリストとしての道を歩むことで、人生を変えることに成功しました。

現代の社会では、「やめること」は屈服や降伏を意味すると見なされています。 なぜなら、今も昔も、「やめること」は私たちホモ・サピエンスにとっても有効な戦略であることが証明されているからです。

世間の常識がやめることを否定し、頑張り続けることを求めることは、時には問題を引き起こすこともあります。 頑張り続けることは、確かに目標達成や成功につながる可能性がありますが、それだけが人生の価値や幸福の源ではありません。時には、適切な時期にやめることや変化を受け入れることが、より良い選択肢となることもあるのです。

例えば、人々は時に、無理な努力や追い求める目標に囚われて、自分自身や大切な人々との関係、健康を犠牲にしてしまうことがあります。また、一度失敗や挫折を経験したからといって、それを乗り越えることができないというわけではありません。時には、新たな道を模索し、新たな可能性を追求するために、やめる勇気を持つことが重要なのです。

人間の脳は柔軟で、新たな情報や状況に基づいて判断し、必要な時には戦略を変えることができる能力を持っています。それゆえ、やめることも選択肢の一つとして真摯に考えるべきなのです。 常に頑張り続けることが良い結果を生むとは限りません。時には、目的や状況を見つめ直し、新たな方向性を模索することが重要です。やめることは諦めや屈服ではなく、成長や変革のための一歩となるのかもしれません。

私たちは自身の目標や夢に向かって努力することは大切であり、決して諦めることを推奨するわけではありません。しかし、社会の常識や他人の期待に囚われず、自分自身の心と直感に耳を傾けることも大切だということを忘れてはなりません。やめることを選択することが、時にはより良い未来を切り拓く一環となるのです。

認めたくない人もいるかもしれない。でも、やめることは効果的なのだ。  

私たちは立ち止まり、周りをもっと見渡すべきです。同じ場所でつまずき続けるのは避けることで、新たなチャンスが見つかります。

しかし、なぜ私たちは目的地に繋がっていない道を進み続けるのでしょう? ようやく限界に達してやめるべきだと気づくこともありますが、なぜもっと早い段階で、さっさとやめてしまわないのでしょうか?

「やめる(quit)」という言葉には、弱々しいイメージを持つ人もいます。しかし、その語源はそうネガティブなものではありません。諸説ある中で、この言葉はラテン語の「quietare」という動詞から派生しており、「休ませる」という意味を持っています。また、他の言語や文化の影響を受けながら進化してきたと考えられています。

「やめる(quit)」という言葉には以下の3つの意味があります。
1 止める、やめる、中止する
2 出発する、離れる
3 あきらめる、辞める、手放す、断念する

「やめること」はただ単に諦めや屈服ではなく、新たな始まりを迎えるための一歩なのかもしれません。私たちは適切な時にやめる勇気を持つことで、より良い未来を切り拓くことができます。 重要なのは、自分自身の心と直感に耳を傾け、ただ社会の常識や他人の期待に囚われるのではなく、自分自身の幸福を追求することです。

目標に向かって頑張り続けることは素晴らしいことですが、それが苦痛や無意味になる場合は、勇気を持ってやめることも許されるべきです。

やめることで脳が活性化する?

科学者や学者、歴史家、そして多数の一般の人への「やめること」についてのインタビューを通じて、はっきりと浮かび上がったことがある。人が後悔するのは、何かをやめたことではなく、「やめるべきときにやめなかったこと」なのだ。

何かを変えるべきだと判断したら、まず「やめること」を検討すべきです。人は立ち止まって人生を見つめ直すまで、望ましくない場所から抜け出せないものなのです。 人生の戦略として「やめること」を選んでも、それがうまくいくとは限りません。やめるということは、選択を間違うかもしれない恐れに直面しながら、自分で人生の主導権を握ることです。

そして突き詰めれば、間違った選択などは存在しません。唯一の絶対的な間違いは、何も選択しないことなのです。何も選択しなければ、誰かに人生を決められるだけです。

やめたいときにやめられれば、人生の可能性が広がります。やめることは、人生の豊かさを信じることです。なぜなら、やめることは希望だからです。それは明日について考えることなのです。やめるということは、そうせざるを得ないときに、何度でも変わることができるということなのです。

私は16年前にお酒をやめる選択をしましたが、快楽的な自分を捨てることで、自分の目標に正面から向き合えるようになりました。そこから自分の人生の可能性が拓けました。未来に不要であると思えることをやめることで、時間という資産が手に入り、やりたいことにチャレンジできるようになります。

ここから私は著者となり、広告会社をやめ、社外取締役やアドバイザー、大学の特任教授という職を手に入れることに成功します。

楽しく生産的な人生の秘密は、よく言われるような根性や決意といった資質ではなく、柔軟さにあるはずです。重たい荷物を下ろして身軽になり、未来に大胆に羽ばたくための「あきらめる」という行為にあるはずです。胸を躍らせながら、新しい生き方を受け入れることにあるはずです。

脳は挑戦することで成長します。研究者たちは様々な実験によって、ある活動をやめ、別の活動を始めることが脳を夢中にさせ、問題解決能力を高め、パフォーマンスを研ぎ澄ませて新たなタスクに取り組むことを証明しています。

人間の脳は、適切に機能していれば、定期的かつ戦略的に何かをやめることができるのです。 脳は柔軟で変化に富んでおり、新しい情報や経験に基づいて成長します。一つの活動に固執することは、脳の成長を制限する可能性があります。しかし、新たな挑戦や興味深い課題に取り組むことで、脳は活性化され、新たなつながりを形成し、能力を向上させるのです。

「やめること」は、新たな挑戦に向けての重要なステップです。既得の状態にとらわれず、より成長や発展を促すために、適切な時に何かをやめる勇気を持つことが大切なのです。これにより、脳は新たな刺激を受け取り、新たなスキルや視点を獲得するための余地が生まれます。

「やめること」は成功や成果の喪失ではありません。むしろ、それは自己の進化や発展のための一歩なのです。新たなチャレンジや興味深い道に進むためには、時には過去の枠組みや習慣を手放す必要があります。それによって脳は活性化され、より多様なスキルや可能性を引き出すことができるのです。 私たちは自己の成長を促進するために、定期的な振り返りと柔軟な変化が必要です。

頑固に一つのことに固執し続けると、新たな学びや成長の機会を逃してしまいます。しかし、適切な時に何かをやめる勇気を持つことで、自己の潜在能力を最大限に引き出すことができるのです。 「やめること」は、進歩と革新の源泉でもあります。人類の歴史においても、革新的な発見や進化は、古い枠組みや概念をやめる勇気から生まれました。

人生は一度きりです。限られた時間の中で、自己成長や幸福を追求するためには、適切な時にやめる勇気を持つことが不可欠です。挑戦を続けることも大切ですが、それが無意味な苦痛や停滞につながる場合は、新たな道を模索し、やめることも選択肢の一つとして考えるべきです。 

リンクトインがユーザーに「20歳の頃の自分に贈るアドバイス」を尋ねた調査によると、「いろんなことを試し続けること」「失敗して、そこから学ぶこと」「恐れずに探究すること」といった回答が極めて多かったという報告がありました。その結果からもわかるように、試行錯誤は生の仕事を見つけるために最善の方法であるとされています。

人生は実験の連続です。成功や成果を得るためには、さまざまなことにチャレンジし続ける必要があります。失敗や挫折を経験することは避けられないものですが、その中から学ぶことで成長し、新たな道を見つけることができるのです。 恐れずに探究する姿勢も重要です。自分の興味や情熱に従って進んでいくことで、本当に心から充実した仕事や人生を見つけることができるでしょう。探究心を持ち、新しいことに挑戦することで、自己の可能性を広げることができるのです。

「インク」誌の記事でも強調されているように、自分のやりたい仕事を見つけるためには試行錯誤が欠かせません。一度失敗したからといって諦めることはせず、挑戦と学びのサイクルを繰り返すことが重要です。その過程で得られる経験や洞察が、最終的に成功へとつながるのです。

人生は一度きりの旅です。未知の領域に踏み出し、自己の成長を追求することで、より充実した人生を築くことができるのです。試行錯誤と探究心を持ちながら、自己の可能性を広げていきましょう。そのために時にはやめることを選択しましょう。

やめることは、新たな始まりを意味し、成長と可能性を引き寄せるチャンスでもあります。自己の限界を超えるためには、適切な時にやめることを選択し、新たな道に進む勇気を持つことが求められます。そうすることで、人生をより充実させ、脳をより活性化させることができるのです。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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