異なる意見を認め、自分をアップデートする方法。ジュリア・ガレフのマッピング思考の書評

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マッピング思考―人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」
ジュリア・ガレフ
東洋経済新報社

本書の要約

「人間は現実を自分に都合のいい形で歪めてしまう」という事実に向き合うことは辛いことですが、マッピング思考によって、これを修正できるようになります。マッピング思考を取り入れることで、私たちはさらに成長することができるのです。

他人に良い印象を与える方法

他人によい印象を与えるには、知っていることを自信たっぷりに示すよりも、ありのままの自分に自信を持つことのほうが重要であるようだ。 (ジュリア・ガレフ)

ジュリア・ガレフマッピング思考―人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」書評を続けます。

私たちは自分が客観的に思考をしていると考えがちですが、多くの場合は先入観にとらわれ、間違った選択をしてしまいます。正しい結果を得たければ、マッピング思考を取り入れるべきです。

マッピング思考の特長
●地図をつくるように思考する
●「これは本当か?」と自問して自分の考えを決める
●間違いを見つけたら、地図を修正する
●地図をさらに正確にするための証拠を探す

他人に良い印象を与えたければ、知ったかぶりをするのではなく、自分に自信を持つ方が効果があると著者は指摘します。ある研究では、大学生が小集団に分かれて課題を行ない、その様子を動画で撮影しました。その後、研究者は動画のなかの学生の行動を観察して、さまざまな観点から「知 識に対する自信」(「自分の考えに自信がある」と何回主張したか、など)と「対人関係に対する自信」(議論にどれだけ参加したか、落ち着いているように見えたか、など)を分析し、数値化しましたた。

次にこの動画を第三者に見せて「それぞれの学生は、どれくらい有能だと思いますか?」と尋ねました。その結果、第三者から有能だと評価された学生ほど「対人関係に対する自信」が高いことがわかりましたた。会話に参加する回数が多く、しっかりした口調で話す、声が大きい、態度が落ち着いている、といったしぐさが見られる学生ほど、有能だと評価されたのです。

これに対し、学生の「知識に対する自信」、すなわち自分の答えに対する確信度や、自分にとって課題がどれだけ簡単か、自分がどれだけ有能か、といった発言は、第三者による有能さの評価には、ほとんど影響を及ぼしませんでした。

演劇の訓練を受けた女性に「対人関係に対する自信」と「知識に対する自信」の高低を組み合わせた態度を演じてもらい、それぞれが第三者による有能さの評価においてどのような違いをもたらすのかを調べましたが、こちらも前者の方が効果があったのです。

被験者がその俳優を「自信がある」と評価するかどうかは、「アイコンタクトをとる」「落ち着いて話す」「はっきりとした手振りをする」などの俳優のしぐさに大きく左右されました。一方、話の内容そのものへの確信度が高いこと(「私はこのことについて自信があります」)や確信度が低いこと(「たぶん、こうだと思います」)はほとんど影響していませんでした。

「対人関係に対する自信」は、人前で堂々とスピーチをする練習をしたり、服装や身だしなみを整えたり、姿勢をよくしたりすることで高められます。このように自分のことを「誰よりも仕事ができる人」や「ポジティブな人」だと見なしていると、目に見えない形で思考や行動に影響を受けるのです。

異なる意見を認め、自分をアップデートする方法

「マッピング思考」を自分のアイデンティティの一部にして、 たとえば「次の1週間、早起きをする」と決意します。月曜の朝、5時半に目覚まし時計が鳴った時に、次のどちらの方が早起きにつかながるでしょうか?
①「自分との約束を破るべきではない」
②「私は自分との約束を守るタイプの人間だ」

「自分のアイデンティティ」から出た言葉の②の方が効果があります。ベッドから出るのは自分の価値観の確認であり、「理想の自分」として生きようとしていることの証になるのです。

同じようにマッピング思考を自分のアイデンティにすることで、異なる意見を持つ人との関係を改善できます。

自分の思考を誇りに思っていれば、意見の違う相手をバカにしたくなる気持ちを抑えられる。「私は相手をバカにすることで自分の知性を確認するような卑劣な人間ではない」と自分に言い聞かせることがプライドになるし、みずからの間違いも認めやすくなる。 考えを変えるのは簡単ではない。間違っているのは自分で、相手のほうが正しかったのだと気づくと、多かれ少なかれ心が痛む。だがその痛みは、自分が「真実を追求する」という大切な基準に沿って生きていることや、間違いを正すたびに自分が強くなっていることを思い出させてくれる。

意見が異なる他者を認められるようになることで、自分の考えや行動を変え、よりよい自分を実現できます。マッピング思考を取り入れることで、自分をアップデートできるようになり、認知バイアスにとらわれなくなります。結果、間違いを犯すことを減らせ、様々な課題に対処できるようになります。

人類は自分や部族を守るという目的で最適化された「兵士の脳」を持つサルから進化した生き物でしかないのです。私たちは科学的事実を公平に評価するための脳をもともと備えているわけではありません。

「人間は現実を自分に都合のいい形で歪めてしまう」という事実に向き合うことは辛いことですが、マッピング思考によって、これを修正できるようになります。マッピング思考を取り入れることで、私たちはさらに成長することができるのです。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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