グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない (ロバート・ウォールディンガー, マーク・シュルツ)の書評

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グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない
ロバート・ウォールディンガー, マーク・シュルツ
辰巳出版

本書の要約

ハーバードの長年の研究から、幸福を得るためには、良好な人間関係を築くことが必要不可欠であることが示されました。幸せで健康的な人生を送るためには、富や名声に基づくものではなく、良好な人間関係を築くことが何よりも大切であることがわかったのです。

幸せな人生とはなにか?

困難や苦労こそが、豊かな人生──幸せな人生──をもたらすからだ。(ロバート・ウォールディンガー, マーク・シュルツ)

本書は、2000人以上の人生を84年にわたって調査した「ハーバード成人発達研究」を基に、人間の幸福の秘訣を探求します。史上最も長期にわたるこの追跡調査から、幸福感・健康・長寿の最大の要因は「良好な人間関係」であることが明確に示されました。

著者のロバート・ウォールディンガーマーク・シュルツは、自身の専門家としての豊かな実践経験と他の最新研究の知識を組み合わせて、なぜ人間関係が幸せな人生を生きる上で重要なのかを詳細に説明しています。2人の科学的な根拠に基づいた具体的なアドバイスは役立つものが多く、他の人生指南の書籍とは一線を画しています。

幸せな人生とは、夢のような社会的成功をつかんだ先にあるわけではありません。それはあなたのすぐそばに存在し、一伸びすれば手に入れることができます。そして、素晴らしい人生とは、この瞬間、まさに今、ここから始まるものなのです。さらに言えば、幸せな人生とは自分自身の内側から湧き出てくるもので、心の平和や喜び、そして他者への優しさを感じられるときに現れます。

ハーバード成人発達研究は、人々の健康と幸福を維持する要因を解き明かすため、膨大な質問とさまざまな測定方法を活用し、同じ被験者群を84年間にわたって追跡調査してきた。すると身体の健康、心の健康、長寿との関連性において、際立って決定的な因子が浮かび上がってきた。それは、人々の想像に反し、社会的成功や運動習慣、健康的な食生活ではなかった。誤解しないでいただきたいが、これらも(とても)重要だ。だが、明らかに、絶えることなく重要性を発揮している因子が一つだけあった。よい人間関係だ。

ハーバードの長年の研究から、幸福を得るためには、良好な人間関係を築くことが必要不可欠であることが示されました。また、健康的な人生を送るためにも、心理的安定や感染症などの生活習慣病のリスクを減らすためにも、良好な人間関係が重要な役割を果たしています。 そして、良好な人間関係を築くためには、お互いを理解し合い、尊重し合うことが必要です。コミュニケーション能力を高め、コミュニケーションのスキルを磨くことも大切です。

長年にわたって関係を維持するためには、お互いの価値観や人間性について深く理解することが必要です。 つまり、幸せで健康的な人生を送るためには、富や名声に基づくものではなく、良好な人間関係を築くことが何よりも大切であることがわかったのです。私たちはお互いを尊重し、理解し合い、長期的な関係を築くことで、本当の幸せを手に入れることができるのです。

人間関係が幸せな人生に必要な理由とは?

健康で幸せな生活を送るには、よい人間関係が必要だ。以上。つまり、健康で幸福な人生を送るための唯一無二のベストな選択は、友好的な人間関係を育むことだ、と科学は答えている。あらゆる人間関係において、である。後に述べるように、一度きりではだめで、繰り返し、毎秒、毎週、毎年ずっと、人間関係を大切にし続けること。これが、喜びに満ちた幸福な人生を送り続けるための条件だ。だが、必ずしも簡単ではない。

幸福はお金や地位などの外的な要因ではなく、人間関係や目的意識などの内的な要因によって大きく影響されることがわかりました。また、幸福は年齢や職業に関係なく、誰もが追求できるものであると著者たちは指摘します。 

数百人の生涯を研究した結果、個人の幸福には多種多様な要因が影響していることがわかりました。経済的要因、社会的要因、心理的要因、健康上の要因が織りなすデリケートなバランスは、複雑で常に変化しています。ある一つの結果について、原因はこの一つだけだと絶対的確信をもって断定することはほとんどできませんし、人間は常に驚くべき行動をとります。

しかし、「幸せな人生の条件とは何か?」という質問の答えは確かに存在しています。 横断的に膨大な被験者や研究を分析することで、幸福の予測因子が浮き彫りになってきます。

幸福に関する予測因子は、健康的な食生活、運動習慣、所得水準など様々ですが、関係性の良さが際立って効果的であることが明らかになっています。 家族や友人、地域社会などとの密なつながりを持つ人は、健康で幸福な傾向があります。

孤立している人は、他者とのつながりを持つ人に比べて、健康状態が悪化する可能性が高いことがわかっています。 こうした知見は、人々が団結して社会的関係を築くことの重要性を示すものです。社会的孤立や孤独に陥っている人を支援することは、個人だけでなく、社会全体の福祉に貢献することになります。

また、互いに支え合い、助け合うことで、個人の心身の健康をはじめとする多くのメリットが得られることが研究によって示されています。このように、人と人との良好な関係性は、幸福にとって欠かせない要素であると言えます。

逆に社会的孤立が健康に悪影響を及ぼし、早期に健康状態が悪化することが報告されています。 このように、研究によって人とのつながりが大切であることが示されているだけでなく、幸福感や生活の質にも重要な影響を及ぼすことが示されています。今後も、人との良好な関係を築くための方法や、社会的孤立を防ぐための施策の重要性について、研究が進められることが期待されます。

遺伝子や過去の経験は、ものの見方や人との関わり方、否定的な感情への対処のしかたに影響を与える。経済的な豊かさや人としての基本的な尊厳を得る機会は万人に平等に与えられてはいないし、非常に不利な境遇に生まれる人がいるのもたしかだ。しかし、この世でどう生きるかは、石のように固まっていて決して変えられない、というわけではない。石というより砂で固められている感じだ。

調査研究から80代でも幸せで健康な生活を送ることができることが分かりました。 孤独とは、他者と物理的に離れている状態だけを指すものではありません。知人の人数や配偶者の有無も必ずしも孤独感に直結するものではありません。孤独感は、群衆の中でも感じることがあり、逆にパートナーがいても感じることがあります。さらに、愛情が少なく、諦めが多い結婚は健康に悪影響を与える可能性があることが分かっています。 人

間関係の質は、孤独感を取り除き、身体的・精神的な健康を維持する上で重要です。心の通う人間関係があることで、人生の苦難や老化から身を守ることができます。

80代までの幸福な健康的な生活を送ることができるかどうかは、50歳の時の人間関係の満足度にかかっているとされています。50歳の時の人間関係の満足度が高い人ほど、身体的・精神的な健康状態が良く、幸せな生活を送れることが分かっています。

これらのことから、孤独感から身を守り、健康な生活を送るためには、人間関係の質が重要であることがわかります。そのため、心の通う人間関係を育てることが、長期的な健康維持につながると考えられます。

現代の研究によれば、子ども時代の経験だけが人生の運命を決めるわけではないことが示されています。先天的な気質や育った環境も同じく、人生の運命を完全に予測するものではありません。数多くの調査研究から得られた事実です。

したがって、過去の経験で他人とのつながりや生きがい、幸福の限界を決めるという見方は正確ではないかもしれません。 また、成人してから人生の方向性が決まると考える人もいますが、広範囲にわたる成人期の発達に関する研究から、そのような信念は誤りであることが明らかになっています。

恵まれた人間関係は社会経済的格差を超えて影響力を発揮する。

人間関係の豊かさと深さは、貧困という物質的な制約にもかかわらず、人々が幸せに感じることを可能にします。人間の心は、深い絆や共感、愛情といった人間関係から大きな満足感を得ることができます。物質的な豊かさがなくても、人と人とのつながりから喜びを感じ、生きがいを見つけることが可能です。

さらに、互いに助け合い、協力することで生活の困難を乗り越える力を育むことができます。人間関係は、貧困による厳しい状況にあっても、希望と前向きな気持ちを保つための重要な資源となります。だからこそ、貧しさが幸せを阻む必要はなく、人間関係から得られる喜びと支えにより、幸せを感じることができるのです。

貧しかった子供時代を送った人でも、幸福な人生を送れます。人生は成人してからでも、意義深い方向性に変えることができます。これは積極的な可能性と持続的な成長を示すものであり、人間の能力の一部を示しています。

ソーシャル・フィットネスが重要な理由

人間関係は人生の基礎であり、人間の行動と存在の中心をなすものだ。収入や仕事の成功など、一見人間関係とは無縁に思えるものでも、実のところ人間関係から切り離すのは難しい。評価してくれる人が周りに誰もいなかったら、仕事で成功しても意味がない。ともに分け合う相手がいなければ、意味のある使い方をできる相手がいなければ、収入にも意味はない。

困難や厄介事に満ちた人生の中で、突如として感じられる人とのつながりから、幸せが芽生えることがあります。それは予期せぬ瞬間に訪れ、我々の心に温かな光をもたらします。このようなつながりが生み出す幸せは、たとえ生活が厳しい状況にあっても、私たちに前向きな力を与え、希望を湧かせます。

例えば、一人で悩んでいるときに、親身になって話を聞いてくれる友人や家族がいれば、とても心強いものです。また、困難な状況に陥ったときに、助けてくれる人がいることは、大きな支えとなります。このような人とのつながりは、私たちの人生をより豊かで幸せなものにしてくれます。

私たちは、日々の生活の中で、誰かとつながりを持つことの大切さに気づかなければなりません。人とのつながりこそが、私たちの幸せの源なのです。

「ソーシャル・フィットネス」、つまり社交的健康は、極めて重要な概念であり、身体の健康と同様に重要性が認識されています。人間関係を怠ると、筋肉が衰えるのと同じように、このソーシャル・フィットネスも衰退してしまうのです。

私たちの人間関係に対する”運動”は、大きな価値を生み出す要素と言えます。 さまざまな研究が、人間関係と幸福感の間には明確な相関関係があることを示しています。より社交的な人々は一般的に、長寿であり、ストレスやうつ病のリスクが低く、記憶力や言語能力の低下も抑制される傾向があります。これは社会的なつながりが私たちの心身の健康にもたらす重要な影響を明確に示しています。

幸せな人生は決して手の届かないものではないという教訓が、すっきりと腑に落ちるからだ。幸せな人生とは、夢のような社会的成功をつかんだ先にあるわけではない。大金を手に入れれば向こうからやってくるものでもない。幸せな人生はあなたの目の前にあるし、手を伸ばせば届く。そして、幸せな人生は、今ここで、すぐに始められる。

本書は、社会的成功や物質的な富だけでは真の幸せを得ることは不可能であると強調します。この一見当たり前の事実を改めて確認することができるのが、この本の特徴です。そして、重要なのは、どんなに時間が経過したとしても「遅すぎることはない」ということです。

ロバート・ウォールディンガーとマーク・シュルツが示唆するように、人間関係が幸福と健康に与える影響は普遍的であり、このアドバイスを信じることで、私たちはより良い生活を送ることができます。科学的根拠に基づいたガイドを信じることで、「グッドライフ」を追求することができ、より幸せな人生を送ることができます。


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