激安ニッポン(谷本真由美)の書評

group of people crossing at the pedestrian lane surrounded by buildings

激安ニッポン
谷本真由美
マガジンハウス

本書の要約

物価も給料も激安な状態が続くことで、日本人は貧しくなっています。日本は主要国の趨勢からかけ離れ、経済の停滞が続いています。物価の上昇に対して、賃金が上がらないため、日本人の生活はますます厳しくなっています。デフレを脱却し、日本人の給与を上げない限り、日本人はますます貧しくなっていきます。

なぜ、日本人は貧しくなったのか?

日本は今や「世界最安値」の国です。 (谷本真由美)

現代の日本では、100円ショップやリサイクルショップの勢力が拡大しています。これは、日本の経済状況や消費者の嗜好の変化によるものと言えます。一方、海外の富裕層は、こうした店舗を使わない傾向にあります。彼らは高級ブランドの商品を求め、高級なショッピング体験を重視する傾向があります。

日本人が貧しくなったこと、経済格差の拡大したことで、100円ショップやリサイクルショップの利用が増えています。富裕層と貧困層の差が広がり、中間層が下流化する中で、多くの人々が節約を余儀なくされています。 経済格差の拡大により、一部の人々は高級ブランドの商品を購入することができる一方、多くの人々は手頃な価格で必要な商品を手に入れるために100円ショップやリサイクルショップを利用しています。

デフレの長期化で、価格競争が激化するため、企業は利益を確保することが難しくなります。その結果、賃金上昇の余地がなくなり、日本人の給与は上がらずに停滞してしまいます。 このような状況が続くと、日本人の生活水準は低下し、貧困化のリスクが高まります。また、企業の利益が減少するため、投資や雇用の創出も抑制されてしまいます。デフレは、経済全体に悪影響を及ぼす要因となっています。

日本人は海外の人から見ると、信じられないほど低賃金で働いていると言われています。2021年の日本の平均年収は3万971ドルで、約548万円になります。しかし、この数字はOECD諸国の中でも下位に位置しており、平均年収は5万1607ドル(約712万円)と比べても70%程度の水準です。

さらに驚くべきことに、日本の平均年収は韓国よりも低くなってしまいました。韓国の平均年収は4万2747ドル(約590万円)であり、日本の平均年収はそれよりも10%近くも低いのです。 さらに、日本の平均年収はバルト三国のリトアニアや、経済が停滞しまくりのイタリアにも負けているのが現状です。

また、スペインやギリシャなどの経済が停滞している国、そしてかつての共産圏の国であるポーランドやチェコ、ハンガリーなどでも、日本よりも平均年収が低いのです。 このように、主要先進国が非常に堅調な成長を遂げる中で、日本の成長率の低さが際立っています。

日本の低い平均年収は、経済の成長において大きな課題となっています。経済成長を促進するためには、日本の労働市場の改革や賃金の引き上げなどが必要とされています。 日本の低賃金問題は、労働者の生活水準の向上だけでなく、経済全体の発展にも直結しています。日本は他の先進国と比べても、まだまだ改善の余地があると言えるでしょう。将来の日本の繁栄のためにも、この問題に真剣に取り組む必要があります。

ビックマック指数を見ると、日本の物価が安いことがわかります。ビックマックはマクドナルドの代表的な商品であり、各国の物価水準を比較するための指標として使用されています。2020年の日本のビックマックの価格は396円で、世界ランキングで41位とかなり安くなっています。

実際、アメリカのビックマックの価格(721円)の55%ほどであり、中国(498円)、韓国(490円)、タイ(490円)よりも100円近くも安いことがわかっています。 日本は欧米より物価が安いと言われることはあまり驚きではありませんが、実はアジアの国々の中でも物価が安い国になってしまっているのです。

さらに、OECDの統計でも同様の結果が出ています。1995年には日本の物価水準はアメリカの0.85倍でしたが、2022年にはなんとアメリカの0.72倍にまで下がってしまいました。つまり、日本はアメリカや欧州よりも30%から40%ほど物価が安いということです。

日本では2022年頃後半から食品や日用品の値上げラッシュが続いていますが、それでも世界と比べるとまだまだ「安い国」なのです。これは、日本の経済や物価政策、消費者の節約意識などが影響していると言えます。日本では物価が安いことが一般的であり、それが日本の魅力の一つとされています。

しかし、物価が安いということは一方で経済の成長や企業の利益にも影響を与える可能性があります。物価が低すぎると企業の収益が減少し、経済の成長が鈍化する恐れもあります。したがって、物価が安いことは一概に良いことばかりではないという意見も存在します。

日本企業はバブル以後に儲からなくなってしまったため、稼いだお金を内部留保として溜め込み、新たな儲けを増やすための投資をほとんど行っていませんでした。これにより、設備投資や人材投資といった「稼ぐ力」を高めるための活動が十分に行われていない状況が続いています。

一方、海外の企業は積極的に投資を行っており、日本企業の生産性は相対的に低下しています。 生産性とは、同じ量の仕事をしたときにより多くの利益を得る能力のことです。日本ではまだ紙で処理されている役所の業務やさまざまなサービスがあり、効率的なシステムが導入されていません。

これにより、個々の業務に時間と手間がかかり、非効率な状態が続いています。 たとえば、日本企業が設備投資を行うことで、生産性を向上させることができます。工場の新設やITクラウドの導入により、業務の効率化が図られます。

また、人材投資も重要です。優秀な人材の雇用や社員向けの研修により、生産性を高めることができます。 一方で、日本企業は内部留保を増やし、投資を控えることでリスクを回避しています。しかし、この保守的な姿勢が生産性の低下に繋がってしまっています。

海外の企業は積極的に投資を行い、最新のテクノロジーや効率的なシステムを導入しているため、日本企業との競争力が低下しています。 このような状況を改善するためには、日本企業が積極的な投資を行う必要があります。

日本人の給料を上げるために必要なこと

スイスのビジネススクール「IMD」が毎年発表する「世界競争力ランキング」では、ビジネス効率性などのさまざまな指標を元に算出した各国の競争力をランク付けしています。このランキングは、各国のビジネス環境や経済力を客観的に評価するための重要な指標とされています。

日本は1989年から1992年まで1位だったのですが、なんと2022年には過去最低の34位になってしまっています。この結果、日本の競争力の低下が明らかになりました。ランキングの元となった指標を見てみると、経済状況は20位、政府の効率性は39位、ビジネス効率性は51位、インフラは22位と特にビジネス効率性が足を引っ張っていることがわかります。

さらに、非正規雇用も日本経済を成長させない要因の一つとなっています。就職難の氷河期世代の人たちは子どもがおらず、自分の将来も不安なため、安定した収入やキャリアの形成が難しい状況にあります。これによって消費の低迷や経済の停滞が引き起こされています。

経済の活性化のために日本銀行は低金利政策を続けているのですが、これにより、円安が進行している面もあります。 現在、日本銀行は経済の活性化を促すために低金利政策を採用しています。しかし、この政策の影響で円安が進行しています。

低金利ということは、日本円を持っていても、もらえる利息が少なくなることを意味します。そのため、投資家は日本円を売り、より高金利の国の通貨を買おうとします。 たとえば、アメリカではここ数年、金利を上げる政策を続けているので、日本円を売り、ドルを買う動きが加速し、円安、ドル高が急速に進行しています。このような流れで日本円が弱くなっているのです。

また、日本経済の成長率の低さも円安につながっています。日本では給料が上がっていないことや、日本の会社が設備投資や人材投資を行わずに儲けていないこと、そしてお年寄りが多すぎることなどが挙げられます。

さらに、日本は成長の見込みがないと考える投資家が多く、日本円ベースの資産や投資商品を持っていても儲からないと考えるため、アメリカのドルやイギリスのポンドの資産に換えてしまう傾向もあります。これも円安につながっている要因です。

結果として、日本銀行の低金利政策は経済の活性化を図る一方で、円安を引き起こしています。この状況は、日本経済の停滞や投資家の意識の変化によるものです。今後も円安が進行する可能性が高いため、日本経済の成長や円の価値を考える上で重要な要素となっています。

他の先進国の人々はまず国境を越えて稼ぐことを前提に話をしているので、資格や学歴も他の国でも通用することを前提にしています。日本国内で評価される資格や教育を受けているだけでは、たとえば外資の会社に就職したり、多国籍なメンバーを集めるプロジェクトなどに参加することが難しくなります。

それ以前に、海外で働こうとしても、世界で評価される資格や学歴がなければ採用されません。他の先進国の場合は子どもに合う学校があれば、国外の学校に通わせることがめずらしくありません。

大学も自分が学びたい分野で輝かしい業績を上げている研究室や研究者を探し、それが国外の大学でも躊躇なく進学するのが当たり前です。

つまり、国内の偏差値だけで話をしているような日本というのが非常に特殊なわけです。 当時の戦国武将たちは欧州の人々のことを熱心に研究し、地政学も理解していました。インターネットやメディアが発達しており移動も自由な現在において日本人はもつと多くのことを個人でも学ぶことができるはずです。

自分で調べて学ぶ中でやがてビジネスチャンスが見つかるはずです。そしてトライアンドエラーを繰り返すうちに、ビジネスが軌道に乗ります。「 現代の先進国では、国境を越えて仕事をすることが一般的だ」と著者は指摘します。そのため、日本国内での資格や学歴に時間を使うのではなく、グローバルで通用するスキルが求められています。

例えば、外資系企業で働いたり、多国籍なチームでプロジェクトに参加したりするためには、世界的に認められた資格や学歴が必要です。他の先進国では、子供が留学することも珍しくありません。また、大学も自分の専攻分野で優れた研究室や研究者を探し、国外の大学に進学することが当たり前です。

これに対して、日本では国内の学力や偏差値だけで判断されることが多いため、特殊な状況と言えます。 かつての戦国時代の武将たちは、欧州の人々を熱心に研究し、地政学にも精通していました。

現在はインターネットやメディアが発達し、自由に情報を得ることができるため、個人でも多くのことを学ぶことができます。自分で調べ学ぶ中で、新たなビジネスチャンスを見つけることができるでしょう。そして、試行錯誤を通じて実際に商品を販売し、結果を確かめることも必要です。

世界中の人たちとの競争が激しく中で、私たち日本人も稼ぐ力をつけない限り、自分の給料が上がらない時代には、自己投資が欠かせなくなっています。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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