ブループリント:「よい未来」を築くための進化論と人類史(ニコラス・クリスタキス)の書評

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ブループリント:「よい未来」を築くための進化論と人類史
ニコラス・クリスタキス
ニューズピックス

ブループリント(ニコラス・クリスタキス)の要約

人類に共通する普遍的な「社会性一式(ソーシャル・スイート)」というリストは、私たちが理想とする良い社会を形成する上で重要な役割を果たしています。このリストには、社会的ネットワークや協力などの重要な特性が含まれており、人間がどのようにして望ましい社会を築くかに深く関わっています。

進化的青写真=ブループリントとは何か?

私は人間どうしで異なる点よりも、同一の点に興味がある。人びとが多様な人生経験を持ち、別々の場所で生活し、もしかすると表面的には違って見えたとしても、他人の経験のかなりの部分は誰もが人間として理解できるものだ。これを否定すれば、共感への希望を捨て去り、最悪の形の疎外感に身をゆだねることになってしまうだろう。(ニコラス・クリスタキス)

イエール大学ヒューマンネイチャー・ラボ所長のニコラス・クリスタキスは、「進化の設計図(ブループリント)」を知ることで、私たちは「分断」を乗り越えることができると述べています。現代社会では、経済格差や人種、国家間の対立といった「分断」がますます強調されています。

では、どうすれば、この「分断」を乗り越えられるのでしょうか?そのヒントは違いではなく、人類に共通する社会的ネットワークや協力する気持ちに注目することだと著者は指摘します。

私たちは生まれながらにして社会を形成するための遺伝子情報(善き社会をつくりあげるための進化的青写真=ブループリント)を持っています。遺伝子は私たちの体内で驚くべき働きをしますが、それが体外にも影響を及ぼします。

それは私たちの精神の構造や行動にも関与しているのです。そして、それは社会の構造や機能にも影響を与えるのです。世界中の人々を見渡してみれば、それが明らかです。私たちの共通する人間性の源泉は、私たちの内部にあるのです。

実験によって明らかになったよちよち歩きの幼児が自発的に戸棚を開けられないふりをする大人を手伝う様子は、人間が若い年齢から他人と積極的に交流し、協力する傾向にあることを示しています。この行動は、人間が生まれながらにして協力的で公正な性向を持っていることを表しています。

人々は他人の意図を理解し、公正に行動しようとする傾向があります。このため、多くの社会では親切や協力が重要な価値とされており、これは地域によって多少の違いはあるものの、私たち人類の共通した特徴になっています。

人間社会が共有しているものを簡単に見失ってしまうのは、私たちが地球上を見渡す際、テクノロジー、芸術、信念、生活様式などのあの驚くべき、否定しがたい多様性を目のあたりにするからだ。しかし、社会の違いに焦点を合わせると、より深い現実が見えにくくなってしまう。つまり、社会の類似性はその相違点よりも大きく、深遠だということだ。

人類に共通する普遍的な「社会性一式(ソーシャル・スイート)」というリストは、私たちが理想とする良い社会を形成する上で重要な役割を果たしています。このリストには、社会的な側面に焦点を当てた一連の重要な特性が含まれており、人間がどのようにして望ましい社会を築くかに深く関わっています。

研究によれば、これらの特性は人類の進化の過程で形成されたものであり、私たちの遺伝子に一部暗号化されていると考えられます。この「社会性一式」は、私たちの行動や社会的な相互作用に深い影響を及ぼしており、人類共通の社会的特性として理解されるべきものです。

クリスタキスの研究は、さまざまな文化や地域にまたがり、私たち人類には違いよりも共通点が多いことを示しています。彼は人類が長年にわたって蓄積してきた経験の普遍性(社会性一式)を称賛しています。

 

人に共通する8つのソーシャル・スイート

社会の核心には、個人と集団の相互作用から生じる特定の社会性の特徴が存在します。これらの特徴は、機能的で持続可能な、さらには道徳的に善い社会を形成するために重要です。具体的には以下の要素が含まれます。

1、個人のアイデンティティと認識の能力
個人が自己のアイデンティティを持ち、他人を認識する能力は、愛情、交友、協力の基盤を提供し、人々が誰であるかを時と場所を超えて追跡するのに役立ちます。

2、パートナーや子供への愛情
家族や親密な関係における愛情は、個人の幸福感を高め、社会的な絆を強化します。

3、交友
友人関係は、社会的ネットワークの構築と情報の交換、相互支援の基盤です。

4、社会的ネットワーク
個人間のつながりは、社会的な協力と支援のシステムを形成します。

5、協力
個人間の協力は、集団の目標達成と社会全体の利益に寄与します。

6、自分が属する集団への好意(内集団バイアス)
自己の属する集団に対する肯定的な感情は、社会的な絆とグループの結束を促進します。

7、ゆるやかな階級制(相対的な平等主義)
社会内の階層や地位の違いを認識しつつも、相対的な平等を重視することは、社会的な調和と公正感を促進します。

8、社会的な学習と指導
知識や技能の伝達、文化や価値観の共有は、社会の持続的な発展と個人の成長に不可欠です。

これらの特徴は、個人の内部から生じると同時に集団の特性としても機能し、健全な社会の基盤を形成します。さまざまな社会的要求に応じて、私たち人間は協力的な姿勢や思いやり、相互恵主義などの認知能力と行動パターンを進化させてきました。私たちは生まれつき協力をするよう配線されており、協力的な集団内で生活することにより、これらの遺伝的特性がさらに強化されます。

人間社会の基本的な特徴は、人類が長い歳月をかけてそのスケッチを助けてきた「青写真(ブループリント)」に導かれている。

人間の環境には常に変わらない要素、つまり他人の存在があります。社会的に生きることが生存に有利であったため、そのように進化した人々が生き残り、その遺伝子が次世代に受け継がれました。

この社会的な生き方は、私たちの行動が環境に与える影響を私たち自身にフィードバックするフィードバック・ループを生み出しました。例えば、環境に与える影響が私たちの健康や生活にフィードバックされます。

私たちはこのフィードバック・ループを通じて、環境に責任を持ち、影響を考慮して行動する必要があります。環境問題を引き起こす行動は、私たち自身に悪影響を与える可能性があります。

もちろん人間は昔から、社会の組織に関連する破壊的なイノベーションに対処してこなければならなかった。たとえば都市の発明は、必然的に人間を移動生活から定住生活に移行させ、人口密度を高めることで、社会的交流に影響を及ぼした。

私たちの社会的青写真を理解し、尊重することは、人類にまったく新しい力を与えて社会的世界に介入させる、抜本的に新しいテクノロジーに対処するのに大いに役に立つ。  

私たちの社会的な青写真を理解し尊重することは、新しいテクノロジーとそれに伴う社会的変化に対応する上で大きな力を与えてくれます。人類は歴史を通じて、社会の組織に大きな影響を与える革新に対応してきました。

例えば、都市の発展は、人々を遊牧生活から定住生活へと移行させ、高い人口密度をもたらし、社会的交流に大きな影響を与えました。

このような過去の経験は、現代においても新しいテクノロジーがもたらす社会的な影響に対処するための教訓となります。社会的な青写真を理解することで、これらの変化をより効果的に取り入れ、調整することが可能になります。私たちの社会的な構造や行動に根ざした理解は、新しい時代の挑戦に対応するための重要な道具となるのです。 

AIや遺伝子治療のような先進的なイノベーションが人間性を脅かし、ディストピア的な未来を生み出さないためには、これらの技術がソーシャル・スイートの基本的な要素を尊重することが重要かもしれません。

技術の発展が人間の社会的な特性や価値観と調和するようにすることで、人間らしさを維持しつつ、技術の恩恵を享受することができるでしょう。このバランスを保つことが、未来において人類が技術と共存する鍵となります。

私たちが社会的な存在であることは、他人との関係を築くことも意味しています。私たちは他人と協力し合い、共同体を形成することでより良い社会を築くことができるのです。


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