マックス・レヴチンに学ぶ、エンジニアの採用法。創始者たち──イーロン・マスク、ピーター・ティールと世界一のリスクテイカーたちの薄氷の伝説の書評

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創始者たち──イーロン・マスク、ピーター・ティールと世界一のリスクテイカーたちの薄氷の伝説
ジミー・ソニ
ダイヤモンド社

本書の要約

現代ではエンジニアの採用競争が激化しており、優れたエンジニアを引きつけるために独自の戦略とアプローチを取る必要があります。この点で、マックス・レヴチンやPayPalの創業メンバーが採用のために行った取り組みは参考になります。自社がビジョナリーでイノベーティブな企業であることを伝えるように心掛けましょう。

優秀なエンジニアを採用するための口説き文句とは?

疲れ切っていた。でも仕事は嫌じゃなかった。自分たちはすごいものをつくっているとわかっていた。毎日退社するとき、新しい何かを開発した、構築した、新しいアイデアを生み出した、という充実感があった。(マーク・サリヴァン)

マーク・サリヴァンは、PayPal(当時はコンフィニティ)の創業者の1人であり、同社の初期の役員の一人でした。彼は主にビジネス開発と経営戦略に従事し、PayPalの取引パートナーシップやビジネス展開に関与しました。創業当時はチームメンバーが疲れきっている中でも、ビジョンを実現するために彼自身も寝る間を惜しんで働き、全員で協力しました。

ベンチャー起業家にとって、優れたメンバー、特にエンジニアとしての採用は常に課題です。特に競争の激しいテクノロジー業界では、技術力と創造性に優れたエンジニアを見つけることは困難です。

マックス・レブチンは、その優れたエンジニアリングの目を持ち、コンフィニティの創業者として広く知られています。当時、PayPalは資金も限られており、まだブランドも確立していませんでした。しかし、彼は独自の採用戦略を展開し、優秀なエンジニアを次々と採用することに成功しました。

その結果、コンフィニティは技術的な優位性を獲得し、急速な成長を実現しました。レフチンの採用戦略とチームの努力によって、PayPalはテクノロジー業界での成功を収めることができました。

レヴチンはその後も、ペイパルマフィアとして知られる起業家の代表格で、様々なベンチャー企業に貢献しました。 2012年には、レヴチンはアファームというベンチャー企業を創業しました。アファームは、消費者向けの分割支払いプラットフォームを提供しており、大成功を収めました。そして、一昨年にはアファームはナスダックでのIPOを果たしました。

そのレヴチンがコンフィニティ時代にエンジニアに対して「大企業の歯車になることは意味がない」という言葉を語っています。

グーグルでクールなことをして高給をもらっているエンジニアを誘っても、なぜ世界をインデックス付けするのをやめて、おまえの会社のくだらない仕事をする必要があるんだ、と言われてしまう。 だから、巨大企業と競争するには、お金以外の工夫が必要だ。金額ではグーグルに負けてしまう。グーグルには年間300億ドルの収益を叩き出す、検索という油田がある。 グーグルのような会社に勝つには、歯車の話をするといい。グーグルでは、君は歯車でしかない。でもうちに来れば、僕らと一緒に自分一人ではできない大きなことができる。(マックス・レヴチン)

エンジニアはすべての新しいアイデアをくだらないと思っているわけではありません。実際に、エンジニアたちはイノベーションと創造性を重視しており、新しいアイデアや技術に対して興味を持っています。ただし、新しいアイデアを受け入れるかどうかは、そのアイデアが実現可能であるか、ビジネス上の価値があるか、技術的な課題を解決できるかなど、様々な要素によって判断されます。

グーグルのエンジニアが他の会社の仕事を却下するのは、単に「くだらない」と思っているからではなく、自身のスキルや専門知識を活かし、大きなインパクトを持つプロジェクトに参加したいと考えているからです。グーグルは世界的な企業であり、多くのリソースとチャレンジングなプロジェクトを抱えています。

スタートアップが採用でグーグルに勝つためには、単に高給を提供するだけではなく、エンジニアたちにとって魅力的なプロジェクトや環境を提供する必要があります。大企業の歯車であるよりもイノベーティブなことができると伝えることで、優秀なエンジニアを採用できるのです。

その際、ビジョンを語ることは重要です。ジョブスはアップルの新しいCEOを探していた時にジョン・スカリーを口説きます。スカリーは以前、ペプシコーラの社長として成功を収め、人々を鼓舞する力を持っていることが高く評価されました。

ジョブズはスカリーに対し、次のように語りかけました。「あなたは残りの人生を砂糖水を売って過ごしたいですか?それとも、世界を変えるチャンスを手に入れたいですか?」この言葉は、ジョブズの情熱と視野の広さを示しており、スカリーの心を動かしました。 スカリーはジョブズの情熱に触発され、アップルのCEOのポジションを引き受けることに同意しました。

ジョブズのこの言葉は、単なる商業的な成功だけでなく、人々の生活を変える革新的なアイデアと情熱を追求することの重要性を強調しています。アップルはその精神を今も受け継ぎ、世界にインパクトを与える製品とサービスの提供に努めています。

優秀なエンジニアを採用するために必要な7つのこと

エンジニアたちも自分たちのスキルや才能を活かし、意義のある仕事に携わりたいと考えています。給料が十分であり、生活に困らない程度の報酬であっても、チャレンジングでインパクトのある仕事に携われる環境や、自己成長や技術的な成果を得られる機会があれば、エンジニアたちは魅力を感じるでしょう。

巨大なテック企業と採用で競争するためには、異なるアプローチや独自の価値提案が必要です。単に金額で競うのではなく、エンジニアたちにとって魅力的な環境や 自己成長の機会、技術的な挑戦、創造性の発揮など、他の企業では提供されていない付加価値を提供することが重要です。

エンジニアたちは、自分たちのスキルを活かして何か新しいものを創り出し、社会に貢献することに喜びを感じます。 一つのアプローチは、チームや組織の文化を重視することです。エンジニアたちは、単なる「歯車」としてではなく、自身のアイデアや意見が尊重され、ともに成長できる環境を求めています。 また、挑戦的で革新的なプロジェクトに参加する機会を提供することも重要です。

A級の人材はA級を雇う。B級はC級を雇う。だからB級を一人でも雇えば、会社全体が傾いてしまう。

マックス・レヴチンのこの言葉には共感を覚えます。私の仲間の優秀なベンチャー経営者は、自分よりも優秀な人材を雇うことを徹底しています。優秀な人材が集まり、お互いの力を引き出すことで、ベンチャーの成功は加速します。

スタートアップやベンチャーが優れたエンジニアや社員を採用するためには、以下の7つの要点に意識を向ける必要があります。これらは、本書を参考にしながら私自身が採用方法を整理したものです。

①技術的な魅力を強調する: 優秀なエンジニアは、自分のスキルを活かして興味深いプロジェクトに参加したいと考えています。起業家は、自社のビジョンや技術的な挑戦を明確にし、エンジニアが共感しやすい環境を提供することが重要です。報酬ではGAFAMとは戦えないのですから、プロジェクトの素晴らしさを伝えるようにすべきです。

②素晴らしいメンバーと競争させ、彼らの能力を引き出す: 優れたエンジニアは、自分の能力を最大限に発揮できるような環境を求めます。優秀なエンジニア同士を競わせ、彼らの力を徹底的に引き出すようにします。

③チームの文化を重視する: 優秀なエンジニアは、単に高給与だけではなく、チームの文化や価値観に共感できる環境を求めます。起業家は、協力と創造性を重んじ、チームメンバーが意見を交換し合い、成長できるような文化を築くことが重要です。開発のスピードとクオリティが業績を左右しますから、やるべきことを理解し、自分で考え、動けるメンバーを採用すべきです。

④経営者や社員のネットワーキングを活用する: 起業家は、経営者や社員とのネットワークを積極的に活用することも重要です。大学の同窓や以前の職場での同僚など、既存のつながりを活かし、人材を探す際にも転職の機会を提供する際にも努力を怠らないことが求められます。これによって、信頼と協力関係の基盤を築きながら、優れた人材を引きつけることができます。

⑤可能性とインパクトを強調する: 優秀なエンジニアは、自分の仕事が社会的な変革や大きなインパクトを持つ可能性があることに魅力を感じます。起業家は、自社のビジョンとミッションを明確にし、エンジニアが参加したことで実現できる可能性を示すことが重要です。

⑥イノベーティブなプロジェクトに参加する機会を提供する: エンジニアは新しい技術やアイデアに興味を持ちます。起業家は、イノベーティブなプロジェクトにエンジニアが参加できる機会を提供し、自由な発想と実験の環境を提供することで、エンジニアの関心を引くことができます。

⑦フレキシブルな働き方を許容する: 近年のエンジニアは、フレキシブルな働き方を求める傾向があります。起業家は、リモートワークやフレックスタイムのオプションを提供することで、エンジニアの働きやすさを向上させることができます。

エンジニアの採用競争が激化する現代において、起業家は優れたエンジニアを引き付けるための独自の戦略とアプローチを取る必要があります。その際、マックス・レヴチンやPaypalの創業メンバーが採用のために行ったことが参考になるはずです。

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