最後は言い方―これだけでチームが活きる究極のスキル
L.デビッド・マルケ
東洋経済新報社
最後は言い方(L.デビッド・マルケ)の要約
よいチームは、思考と行動のよいバランスから生まれます。適切な言葉遣いによって、チームの思考と行動を適切に調整することで、成果を上げることができるようになります。リーダーの発言はチームの成功に影響を及ぼすため、言葉の選び方・使い方には注意を払いましょう。
良い結果を出すために、赤ワークと青ワークのバランスを取ろう!
結局のところ、リーダーシップは言葉から始まる。(L.デビッド・マルケ)
著者のL.デビッド・マルケ(米海軍攻撃型原子力潜水艦「サンタフェ」元艦長)は、チームの活力と成功はコミュニケーションに大きく依存すると述べています。リーダーの言葉の選び方や話し方が、チームのやる気や成果に直接影響を与えます。本書にはリーダーとして、言葉を上手く使ってチームのパフォーマンスを高めるためのヒントがいくつも紹介されています。
よいチームは、思考と行動のよいバランスから生まれます。適切な言葉遣いによって、チームの思考と行動をうまく調整し、成果を出す方法を著者はわかりやすく解説しています。
リーダーの言葉はチームの方向性に影響を及ぼすので、言葉選びに注意を払いましょう。効果的なコミュニケーションでチームを導き、成功に貢献するのです。
実際、上司が部下と話す言葉を変えたところ、部下が上司や他の部下に対して使う言葉も変わったと言います。使う言葉が変わると、組織の文化も変化し、その結果、成果にも違いが出ます。言葉を変えるだけで、組織のあり方が変わると著者は述べています。
立場が上の人が言った初めの言葉は周りに影響を及ぼします。これが「声の大きい人々の英知」です。具体的には、リーダーの言葉が議論を支配し、その指示が実際の正解から離れていても、他のメンバーは違う意見を言いにくくなり、最終的にはリーダーの発した言葉に似た答えが採用されます。これにより、有意義な情報交換や分析が行えず、グループの決定が偏ってしまうのです。
よい決断をするためには、多様な意見を集めることが大切です。グループ内で一人一人が自由に意見を言えるようにするために、議論の前にそれぞれに意見を書いてもらい、匿名で共有します。こうすることで、「集団の英知」を引き出すことができ、グループの見識が個々人のそれを超える可能性があります。
また、行動と思考のバランスを正しくとることが、学習と成長には重要です。多様な意見を受け入れることは、イノベーションや創造性を高めます。意思決定の段階を「青ワーク」、実行の段階を「赤ワーク」と呼び、これらのバランスを取ることでチームとしてより効果的に働けるようになります。
赤ワークと青ワークのバランスを取るための6つの方法
仕事を進めるには、赤ワーク、青ワークのどちらかだけでは不十分だ。どちらも適切な量を行う必要がある。そのバランスを見つけて、両方を効果的に行うために、チームとして意図的に仕事のやり方を変える必要がある。
仕事を進める上で、実行に関する「赤ワーク」と思考や計画に関する「青ワーク」の両方が重要です。両方のバランスを上手にとるためには、以下の方法を意識することが大切です。
①時計を支配する
タイミングを見計らって、仕事を中断したり休憩を取ります。これにより、行動の赤ワークから脱せます。実行の圧力から離れて、計画や思考の「青ワーク」に移りやすくすることで、リスクを減らせます。
▪️「時計を支配する」ための4つの方法
・中断を阻止するのではなく、中断できる環境を整える。
・言いたいことがあれば口にするはずだと期待するのではなく、 中断のための言葉や合図を決めておく。
・赤ワークの続行を推し進めるのではなく、中断の兆しをとらえ、自ら呼びかける。
・誰かが中断の合図を出すまで待つのではなく、中断するタイミングを事前に決めておく。
②連携をとる
上司でも部下でも、他者と連携して学ぶことが重要です。立場を超えた連携=互いから学ぶことで、より良い成果やアイデアを生み出せるようになります。これを繰り返すことで、「青ワーク」の質を高めることができます。
自分を肯定するのではなく、質問を通じて自分を高めることを目指すようにすれば、受け入れがたいと感じる情報を話題に持ち出しやすくなる。
「みんなはどう思う」という質問を徹底し、他の人たちに自由に発言してもらいます。はい、いいえの二択の質面をやめ、異論も含めさまざまな意見が出るようにします。より良い結論を出すためには、リーダーは自分の考えを最後に伝えるようにすべきです。
③責任感を自覚して取り組む
自分の責任を自覚して取り組むようにします。実際に行う作業よりも、その背後にある目的に焦点を当てることで、当事者意識が高まります。リーダーに服従させるのではなく、主体的に考え、動くようにする部下を育てることで、組織の文化が変わります。
また、部下が責任感を持つことで、3つの変化が起こります。
・部下は実行するだけではなく、何かを学ぼうとするようになります。学習モードになると失敗を恐れず、行動できるようになります。
・信念よりも、やるべきことを優先するようになります。
・作業を小さく分けてすべてやり遂げることができるようになります。不確実な状況では考える青時間を長くします。外的な条件が明らかになったら、赤時間を長くし、行動に集中します。
部下が責任感を持つことで、自己成長や業務遂行能力が向上し、組織全体の効率も向上するでしょう。部下の成長を促進するためには、上司は自分の言葉を変えるべきです。適切なフィードバックやサポートを提供し、部下が自ら考え、行動する機会を与えることが重要です。部下が自らの責任を感じ、成長に向かって努力する姿勢を持つことで、組織全体がより良い方向に進むことができるでしょう。
小さな作業の積み重ねを意識して取り組むことは、短い時間でも効果的な集中力を養うことができます。作業に没頭することで、現在のタスクに集中しやすくなります。事前に中断が予想される場合、作業内容を確認する必要がなくなり、効率的に作業に取り組むことができます。
短時間での集中作業を行う際は、その時間を有効活用し、新しいことを学ぶ意欲を持って取り組むことが重要です。小さな作業でも、その一つ一つを責任持って完了することで、自己成長につながると言えます。作業を通じて責任感を養い、積み重ねていくことで、大きな成果を生むことができるのです。
④事前に定めた目標を達成したら区切りをつける
前半は青ワーク、後半は赤ワークに比重を置き、バランスを取ります。目標を達成したら、区切りをつけて「赤ワーク」を終了させ、成し遂げたことを振り返ります。これにより、「赤ワーク」と「青ワーク」の間で効果的なリズムが生まれます。
▪️区切りをつける4つの方法。
・区切る回数は、前半多め、後半少なめに
仕事やプロジェクトを進める際、最初は多くの区切りを設定し、段階的に減らしていくことで効率的に進めることができます。
・外からではなく、一体となって労おう
仕事をする際には、外部からの要因や影響だけでなく、チーム全体が一体となって協力し合うことが重要です。共に労い合いながら、目標に向かって進んでいくことが大切です。労わりは青ワーク、赤ワークの両方で行うようにします。その際、褒めるのではなく、具体的な行動に感謝の言葉を伝えるようにしましょう。
・区切りとなる言動を定めよう
仕事を進める上で、区切りとなる目標や行動を明確に定めることで、進捗を確認しやすくなります。具体的な目標やステップを設定することで、効果的に作業を進めることができます。
・目的地ではなく行程に注目しよう
やり遂げたことを旅の途中(通過点)だと思ってもらうことで、相手は最終目的地に到達したと思わなくなくなります。結果、思考や行動を続け、よりよい結果を得られるようになります。
⑤成果を改善する
赤ワークを終えた後、青ワークで振り返り、計画や工程、設計を見直して改善を図ります。青ワークは赤ワークを改善するために行うものです。改善をやめず、成長し続けるためには、偏見のない探究心と好奇心が欠かせません。自分はもっとよくなると考えることで、自分の行動を改善型に変えられます。
⑥垣根を越えてつながる
垣根を越えるとは他者を気遣うことです。この気持ちが、組織の階層構造を和らげ、心理的安全性につながります。これにより、相互理解と協力が促進され、上記の1から5の方法がさらに効果を発揮します。
▪️他者とつながるための4つの方法
・権力の勾配を小さくする
・リーダー知らないことは知らないと認る。
・部下に弱さを見せる。
・自分が先に相手を信頼する。
リーダーが言葉が行動に与える影響に対して適切な対策を講じることで、部下の思考と行動が変わります。言葉は人々の心に深く影響を与えるため、組織内でのコミュニケーションにリーダーはもっと気を使うべきです。リーダーは、部下の声に耳を傾け、適切なフィードバックを行うことが求められます。
リーダーが言葉を変えることで、組織全体が協力し合い、互いを尊重し合う風土が醸成されます。結果、生産性や従業員満足度が向上し、組織全体の成果にもつながります。
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