ストーリーで伝えるブランド――シグネチャーストーリーが人々を惹きつける(デビッド・アーカー)の書評

a brown leather couch sitting in front of a white wall

ストーリーで伝えるブランド――シグネチャーストーリーが人々を惹きつける
デビッド・アーカー
ダイヤモンド社

本書の要約

ブランド・ビジョン、顧客との関係、組織の価値観や事業戦略などを明確化または強化するメッセージのシグネチャーストーリーを伝えることで、顧客や従業員、パートナーとの関係が変わります。シグネチャーストーリーは、人々の興味を引きつけ、彼らを引き込む力を持っていますから、企業ブランディングに活用しましょう。

シグネチャーストーリーが重要な理由

「シグネチャーストーリー」とは何か。それは戦略的メッセージ——ブランド・ビジョン、顧客との関係、組織の価値観や事業戦略などを明確化または強化するメッセージ——を伝える、あるいは支える物語である。シグネチャーストーリーは興味をかき立て、人を引き込み、真実味がある。そして、長期にわたってブランドに知名度と活力をもたらし、従業員や顧客を説得し、刺激を与えるものである。 (デビッド・アーカー)

デビッド・アーカーは、ブランディングの大家として知られています。彼は企業がメッセージを社内外に発信する際、ストーリーテリングの手法を取ることの重要性を説いています。 企業のブランドは、その企業のビジョン、価値観、戦略などを表す重要な要素です。

シグネチャーストーリーとは、ブランドや組織の戦略的メッセージを明確化または強化するために使われる物語です。この物語は、ブランドのビジョンや顧客との関係、組織の価値観、事業戦略などの要素を伝える役割を果たします。 シグネチャーストーリーは、人々の興味を引きつけ、彼らを引き込む力を持っています。

この物語は、単なる情報の集合ではなく、真実味を持つものでなければなりません。人々は、物語を通じて感情的に結びつき、共感しやすくなります。 また、シグネチャーストーリーは長期的な効果ももたらします。この物語は、ブランドに知名度と活力をもたらし、従業員や顧客を説得し、刺激する力を持っています。

また、ブランドのアイデンティティや価値観を反映し、覚えやすく、共有可能で、独自性があるものです。 シグニチュアストーリーは、人々がそのブランドについて話す際や、ブランドを評価する際の基準となることがあります。つまり、ブランドのイメージや魅力を伝える重要な要素となるのです。

さらに、シグニチュアストーリーによるブランディングは、ブランドエクイティを高め、顧客の忠誠度を確立するための有力な手段とされています。これらのストーリーは、広告キャンペーンやソーシャルメディア、ウェブサイト、その他のマーケティングチャネルで展開されることが多く、強力なブランドイメージを築く上で重要な役割を果たします。

シグニチュアストーリーは、単なる物語以上のものであり、ブランドの特徴や魅力を伝える重要な要素です。そのストーリーを通じて、顧客の心をつかみ、ブランドとの絆を深めることができるのです。

受け手を引き込む力とは、受け手をストーリーに引き込む魅力のことだ。それがあれば、受け手は登場人物に感情移入し、プロットを重視するようになる。結果として受け手は、必ずではないにしても、認知、感情、行動のレベルで何らかの反応を起こす。

・認知面・・・シグネチャーストーリーは複雑なテーマや価値を具体的で易しく理解できる形で伝えます。

・感情面・・・ストーリーは聞き手が主人公やその他の登場人物に共感し、感情的に投資するよう誘導します。この感情的なつながりは、単なる事実やデータよりも強力な動機付けとなることが多いです。

・行動面・・・シグネチャーストーリーは受け手に具体的な行動を起こさせる可能性が高いです。それは、受け手が組織やブランドに対する肯定的な感情や認識を持つことで、実際に何かを「したくなる」からです。

そして、これらすべては戦略的メッセージに結びついています。このメッセージは、内部のステークホルダー(従業員、経営者等)から外部のステークホルダー(顧客、投資家等)まで、組織のビジョン、価値観、目標に対する明確な理解を促進します。

これらの要素がうまく組み合わさったシグネチャーストーリーは、単なる情報伝達以上の価値を持ち、受け手に対して強い影響力を持つことになります。その結果、組織やブランドは、より効果的なコミュニケーションと深いつながりの形成が可能になります。

シグネチャーストーリーの4つの要件とその作り方

新しい事業戦略や組織の変革を伝える際、シンプルなデータや論理的な推論だけでは人々を動かすには限界があります。ここでシグネチャーストーリーが非常に有用になります。以下はそのために考慮すべき4つの要件と、それをどのように活用するかについてのアイデアです。

4つの要件
①興味をかき立てる
ストーリーは、単なる事実よりも受け手を引きつける力があります。興味深いプロットや緊張感を持つストーリーを構築することで、人々は自然と聞き手になります。

②真実味がある
ストーリーがどれだけ面白くても、それが事実に基づいていなければ、人々はそのメッセージに疑念を持つでしょう。事実に基づいたストーリーは説得力があり、戦略の成功に不可欠です。

③引き込む力がある
ただ事実を並べるのではなく、感情や人間関係、困難や解決策など、人々が感情的に関与できる要素をストーリーに取り入れます。

④戦略的メッセージを伴う
ストーリーが単に楽しいだけでなく、組織の戦略やビジョン、価値観を反映している必要があります。

ストーリーと事実の組み合わせ方
・事実をストーリーの中に織り込む
この方法は、ストーリーが主で、その中に事実やデータをスムーズに組み込む方法です。これにより、受け手はエンゲージしながらも必要な事実を獲得できます。

・ストーリーを語ってから事実を提示する
まず人々の興味を引きつけ、感情に訴えるストーリーを語った後で、そのストーリーが示す事実やデータを明らかにする方法です。

・事実を提示してからストーリーを語る
逆に、まず重要な事実やデータを提示して、その後でそれを具体的なストーリーで補完します。これは、特に複雑な事実やデータが先に理解される必要がある場合に有用です。

シグネチャーストーリーは、ブランドや組織に独自の魅力と信頼性をもたらします。アーカーによると、このようなストーリーを育むための環境作りは容易ではありませんが、一定の指針に従うことで実現可能です。

まず、ブランドのビジョン、顧客への価値提案、組織の価値観、事業戦略を明確にします。これらが明確であれば、その基盤に基づいた一連の戦略的メッセージが形成され、シグネチャーストーリーが自然と生まれやすくなります。

次に、経営幹部、特に最高マーケティング責任者などが、この戦略的ストーリーの発展と資源配分に注力する必要があります。彼らが率先して行動することで、組織全体がストーリー作りに参加する環境が生まれます。

顧客の声に耳を傾け、実際に製品やサービスがどのように使用されているかのストーリーを集めることも重要です。このリアルな情報が、信頼性と共感を生むシグネチャーストーリーの素材となります。

また、従業員自らが潜在的なシグネチャーストーリーを見つけ出すよう、インセンティブを提供することも有効です。従業員はフロントラインで働いているため、顧客との接触が多く、価値あるストーリーを発見する可能性が高いです。

組織の伝統や歴史も重要な要素であり、それを現代のテーマやニーズに適用することで、新しいシグネチャーストーリーが生まれる場合もあります。

最後に、優れたストーリーテリングとプレゼンテーションスキルを持つスタッフの協力を得て、組織の体制とプロセスを整えましょう。これにより、シグネチャーストーリーが効果的に伝えられ、ブランドや組織の価値が高まるでしょう。

以上のステップで行動することで、シグネチャーストーリーが豊かに育つ土壌を整えることができます。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
徳本昌大 Amazonページ >
 

徳本昌大をフォローする
フレームワークチームワーク組織コミュニケーション文化イノベーションリーダーパーパスCX習慣化書評生産性向上ブログマーケティングライフハック
スポンサーリンク
徳本昌大をフォローする
起業家・経営者のためのビジネス書評ブログ!
Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました