日本一の変人経営者
宗次徳二
ダイヤモンド社
日本一の変人経営者 (宗次徳二)の要約
CoCo壱番屋の成功は、宗次徳二氏の顧客第一主義と真心経営によるものです。彼の経験から得られる教訓は、どんな逆境にも屈せず、一貫して顧客満足を最優先にすることの重要性です。この不屈の精神と顧客中心のアプローチが、「カレーと言えばCoCo壱番屋」という圧倒的なブランドの基盤になっているのです。
CoCo壱番屋を成長させた理由は顧客体験にあり!
”繁盛”すべて原点は接客にあり。(宗次徳二)
宗次徳二氏は自分のことを変人経営者と呼びます。その独特なアプローチは彼のビジネス手法にも現れています。せっかちな性格の彼は、不動産会社を経営しながらも、より直接的な収益を求めて、いきなり喫茶店の経営を開始しました。
この時、彼はコンサルタントの意見を聞くことも、複数の物件を比較することもせず、直感に従って店舗を契約。喫茶店のオープン日に大きな成功を感じ取るや否や、不動産会社の廃業を決断し、喫茶店経営に全力を注ぎます。 その後、喫茶店のメニューに加えられた奥さんの手作りカレーが評判となり、これを新たなビジネスの核とする決断をします。
この決断が、後のCoCo壱番屋の創業へとつながりました。名古屋の田んぼの中の小さなカレー店からスタートしたCoCo壱番屋は、宗次氏のユニークなビジネスモデルと徹底した顧客志向により、国内外で急速に展開し、大成功を収めることになります。このような斬新なアプローチと顧客への深い配慮が、彼のビジネススタイルを際立たせています。
ギャンブルに依存する育ての親のもとで育った彼は、多くの逆境の中で起業家精神を培いました。失敗を恐れず、常に前向きに挑戦し続ける行動力、楽天的な性格、そして何より他者を喜ばせることを重視する思考は、CoCo壱番屋の経営に大きな利点となったのです。
子どもの頃、一生分の苦労を経験したからこそ、後の会社経営に生かされた。
彼は自力で未踏の道を開拓し、他人との相談を避けることで、独自のスタイルでビジネスを展開してきました。業界の常識や既成の概念に捉われず、自己流の経営を堅持することが「宗次流」とも言えるでしょう。このようなアプローチは、従来の枠組みを超えた新しい価値を創出するための原動力となっています。
彼のビジネスに対する献身的な姿勢は、CoCo壱番屋の成功に大きく貢献しました。彼はお客様を第一に考え、朝5時前から出勤して店舗の運営にあたるなど、顧客満足を最優先に経営を行います。この徹底した顧客志向が、ブランドを強化し、多くのリピーターを生み出す原動力となりました。
宗次氏の経営哲学「お客様第一主義」は、彼のモットー「ニコニコ、キビキビ、ハキハキ」に象徴され、これを毎朝の朝礼で従業員全員が唱和することで社内に浸透しています。このシンプルだが効果的な接客の原則は、日々の業務において徹底されています。
宗次氏は、「下手なプロよりも素人を雇うほうがよい」と語ります。素人は固定観念や業界の常識に縛られないため、新鮮な気持ちで物事に取り組み、学習も早いというのです。宗次氏は、失敗を受け入れる文化を育てることで、素人が驚くほどの結果を出す環境を作っています。彼自身が素人出身の経営者であったため、その経営は失敗と改善の繰り返しだったのです。
また、ライスの量や辛さのカスタマイズ、選べるトッピングなどの施策が顧客から好評を得て、CoCo壱番屋の成長を加速させました。さらに、宗次氏は顧客アンケートを自らチェックし、直接的な顧客の声に耳を傾け、経営の改善点を見つけ出しています。顧客からのクレームを励ましと捉え、自ら店舗を訪れ改善に努める姿勢も彼の特徴です。
宗次氏は自らを「三流経営者」と称しながらも、趣味や人脈作りを捨て、全ての努力を顧客と従業員のために捧げています。創業経営者として現場第一主義を掲げ、率先垂範の姿勢で行動することを重視しています。彼は困難な問題に直面しても、社長自らが熱心に働くことで、その情熱が周囲に伝播すると信じています。
営業が不振の店舗に対しては、その再生のために清掃に重点を置き、自ら清掃活動に参加し、店舗だけでなく地域の環境整備も行います。これにより、地域のお客様やパートナーに対して感謝の気持ちを表し、コミュニティに貢献しています。
このような取り組みは、宗次氏の経営理念に深く根ざしており、お客様や従業員、さらにはパートナーへの深い配慮が表れています。彼の行動は、単にビジネスの成功を追求するだけでなく、関わるすべての人々との良好な関係を築くことにも貢献しています。
真心が顧客をリピートさせる!
形の真似はできても心の真似はできない。
宗次氏は名古屋で喫茶店を開業する際、地域の慣習である「モーニングサービス」の導入を銀行の融資担当者や焙煎業者から強く推奨されましたが、これを断固として拒否しました。
宗次夫妻は、単なる「物や安売りサービス」に価値を見出さず、代わりに、お客様一人ひとりを明るい挨拶と笑顔で迎え、心からのサービスを提供することに重きを置いたのです。
宗次氏は、このような真心を込めた対応が、長期にわたってお客様に喜ばれると確信しています。実際に多くのお客様が「気持ちのいい挨拶が好き」「店の雰囲気がいいから」という理由でリピーターになっています。
また、当時の喫茶店の風潮として、従業員が暇なときにお客様の席で食事をしたり、マスターがタバコを吸いながら競馬新聞を読むなど、プロフェッショナルさに欠ける行動が見られました。また、常連客だけが快適に過ごせるような店が多かった中、宗次氏夫妻はそうした行動を一切行わず、初めて訪れる方も常連客も同じように公平に扱う、お客様本位のサービスと店づくりを心掛けました。
この姿勢は、商業的な戦略を超え、宗次氏の経営の核心を形成しています。彼の経営哲学は、すべてのお客様に対して真摯で誠実な対応を徹底し、本当の満足を提供することにあります。この顧客中心のアプローチが、CoCo壱番屋のブランド信頼性と評価を築き上げる重要な要因となっています。
いちばん大切なのは、口八丁手八丁で相手と駆け引きするのではなく、また、同業他店に負けないため無理をして安く売り、本来必要である”真心”の部分を妥協し本末転倒になるのではなく、お客様の気持ちに添いながら、きめの細かい最高のサービスを提供するよう努力すること。
「形の真似はできても心の真似はできない」という宗次氏の言葉が、彼の事業を他と差別化し、競争優位性を持たせています。
彼は市場のニーズを常に先読みし、新しいアイデアを積極的に導入することで、業界に革新をもたらしたことで知られています。彼の手掛けるCoCo壱番屋の成功は、宗次氏の顧客第一主義と真心経営に凝縮されています。
特に、彼の人生から学べる重要な教訓は、逆境に屈することなく、常に顧客の満足を追求することの重要性です。この不屈の精神と顧客中心の姿勢が、CoCo壱番屋を飲食業界で際立たせ、カレーと言えば「CoCo壱番屋」という強いブランドイメージを築くことができたのです。
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